こちら↑の記事に引き続き、2024年に見られる(かもしれない)YA文学映画化作品をご紹介します。

 

 

 

メイソン・ディーヴァー原作「I Wish You All the Best」(原作未訳)
 


原作はアメリカのYA作家メイソン・ディーヴァー(Mason Deaver)の2019年のデビュー作。
両親に自分がノンバイナリー(性自認が男性でも女性でもない)だとカミングアウトして家から追い出され、姉のハンナと夫トーマスの家で暮らすことになった18歳のベン。精神的に不安定になって、これ以上のカミングアウトはせず新しい学校で高校最後の1年を目立たないでやり過ごそうと思っていたのに、優しい少年ネイサンに出会って恋をしてしまう…
という青春ラブストーリー。


監督&脚本は「13の理由」などに出演している女優のトミー・ドーフマン。これが監督デビュー作です。

主演は「モキシー 私たちのムーブメント」のコーリー・フォーゲルマニス。
ほか出演は「On the Come Up」のマイルズ・グティエレス=ライリー(Miles Gutierrez-Riley)、「パーシー・ジャクソン」シリーズ(劇場版)のアレクサンドラ・ダダリオ、「ファイブ・フィート・アパート」のコール・スプラウスなど。


すでに撮影終了しています。

 

 

トーベ・ヤンソン原作「The Summer Book(原作原題「Sommarboken/原作邦題「少女ソフィアの夏」)」

 

 

原作は、「ムーミン」シリーズで知られるフィンランドの国民的作家トーベ・ヤンソンが自分の家族をモデルに執筆した1972年発表の作品。フィンランド湾の島で暮らす6歳の女の子ソフィアとその祖母、父親のひと夏を描いた連作短編集です。
講談社から邦訳が出ています。


映画化企画はこれが初ではなく、2019年には「マンマ・ミーア!」シリーズのジュリー・ウォルターズを主演に起用し、「シークレット・ガーデン」のマーク・ミュンデン監督で映画化される予定でしたが、これはなぜか実現しませんでした。

当時のプロデューサーと製作会社はまだこの企画に関わっていますが、ウォルターズとミュンデン監督は降りており、現在はグレン・クローズが主演に決まっています。


現在の監督は「運命のイタズラ」のチャーリー・マクダウェル。
脚本は「Secret State」のロバート・ジョーンズ(Robert Jones)。


主演グレン・クローズ。
ほか出演は「わたしは最悪。」のアンデルシュ・ダニエルセン・リーなど。


2023年夏フィンランドで撮影されました。

 

 

マット・ヘイグ原作「The Radleys」(原作未訳)

 

 

原作は、「クリスマスと呼ばれた男の子」などで知られるイングランドの作家マット・ヘイグの2010年の作品。児童書もYAも一般書も書く作家ですが、こちらは一般書(とはいえ、カーネギー賞の候補作品にもなっているので、YAとして読めるのではないかと思います)。

北ヨークシャーの田舎町ビショップソープに住むごく平凡な(に見える)ラドリー一家。
しかしティーンの娘クララがパーティの帰りに襲われたことで、彼女と弟のローワンは気がついてしまう。なぜ自分たち一家は眠れないのか、なぜニンニク入りのタイサラダを食べると窒息するのか、なぜファクター50(強力日焼け止め)なしで外を歩けないのか。
実は両親だけが前から知っていたけど、彼ら一家はヴァンパイアだったのだ…
…という、田舎に住むヴァンパイアの一家を描いたファンタジー小説のようです。

2011年全米図書館協会アレックス賞受賞作品&2011年カーネギー賞ロングリスト作品。


2019年の時点では「フィッシャーマンズ・ソング コーンウォールから愛をこめて」のクリス・フォギンが監督に起用されていましたが、現在は彼は降板して、「HEARTSTOPPER ハートストッパー」のユーロス・リンが新たに起用されているようです。

脚本はドラマ「ゲッティング・オン」のジョー・ブランド(Jo Brand)&これが長編映画デビューの新人タリサ・スティーヴンソン(Talitha Stevenson)。


主演は「ウルフ・ホール」のダミアン・ルイス。

ほか出演は「ゴスフォード・パーク」のケリー・マクドナルド、「ロキ」のソフィア・ディ・マルティーノ、「ワンス・アポン・ア・タイム・イン・ハリウッド」のダミアン・ルイスなど。

すでに撮影終了。

 

 

 

コルソン・ホワイトヘッド原作「The Nickel Boys(原作邦題「ニッケル・ボーイズ」)」

 

 

原作は「地下鉄道」のコルソン・ホワイトヘッドの2019年の作品。
1960年代、非行少年を「名誉ある誠実な男」に矯正すると言われる、でも実態は職員による暴行や殺人が行われては隠蔽される恐怖の施設だったフロリダの少年院「ニッケル・アカデミー」に入所した少年たちを描いた物語。
敷地内から行方不明の入所者のものと思われる大量の人骨が出てきたという、フロリダに実在した施設(ドージャー校/Dozier School)をモデルにした歴史小説です。

2020年全米図書館協会アレックス賞(YAにお薦めの一般書に贈られる賞)受賞作品。早川書房から邦訳が出ています。


監督&脚本はこれまでドキュメンタリー作品の監督として活動していたラメル・ロス(RaMell Ross)。

出演は「ボクらを見る目」のイーサン・エリス、「ザ・ウェイバック」のブランドン・ウィルソン(Brandon Wilson)、「真夜中のミサ」のヘイミッシュ・リンクレイター、「ドリームプラン」のアンジャニュー・エリスなど。


すでに撮影終了。

 

 

 

アニー・ハートネット原作「Rabbit Cake」(原作未訳)

 

 

原作はアメリカの新人作家アニー・ハートネット(Annie Hartnett)が2017年に発表した彼女のデビュー作。
夢遊病の症状の中で溺死してしまった母、やはり夢遊病の姉、妻の死以降遺品のシルクのバスローブを着て家の周りをうろつくようになった父を持つ12歳の賢いヒロイン・エルヴィスが、母親の奇妙な死の状況の真相を探ろうとする、という物語のようです。


監督は「マイ・プレシャス・リスト」のスーザン・ジョンソン。
脚本はドラマ「Notorious」のアリー・ヘイガンによるブラックリスト選出作品。

主演は「ゴーストバスターズ アフターライフ」のマッケンナ・グレイス。
ほか出演はラッパーのケンドリック・ラマーなど。


2023年から撮影中。

 

 

 

クレイグ・シルヴェイ原作「Runt」(原作未訳)

 

 

原作はオーストラリアのYA作家クレイグ・シルヴェイ(Craig Silvey)の2022年刊行の児童書作品。
オーストラリアの田舎町アップサイドダウンに親友の元捨て犬ラントと一緒に暮らしている女の子アニーが、強欲な地主のせいで危機に陥った家族の農場を救うため、ラントと一緒にロンドンのドッグショーをめざす、というストーリー。
2023年のオーストラリア児童図書賞低学年部門受賞作品です。


監督はドラマ「ホーム&アウェー」のジョン・シーディ(John Sheedy)。

脚本は原作者シルヴェイが執筆。


主演は「ラン・ラビット・ラン」のリリー・ラトーレ。

ほか出演は「スーサイド・スクワッド」のジェイ・コートニー、「ウェルマニア」のセレステ・バーバー、「ペーパープレーンズ」のデボラ・メイルマン、保護犬のスクイド(Squid)くんなど。


2023年11月から撮影中。

 

 

 

アン=ヘレン・レスターディウス原作「Stöld」(原作未訳)

 

 

原作はスウェーデンで活動するサーミ人の児童書&YA作家アン=ヘレン・レスターディウス(Ann-Helén Laestadius)が2021年に発表した彼女初の一般書作品。

舞台は北極圏のサプミ(ラップランド)。
9歳のときに、可愛がっていた大事なトナカイが近くに住むスウェーデン人の男に殺されるのを目撃したサーミ人の少女エルサ。でもスウェーデンの警察はサーミ人へのヘイトクライムは捜査してくれない。
それから10年後、サーミへの攻撃はさらに激しくなり、多くのトナカイが虐殺されていく。エルサは何もしない警察にかわって反撃を決める…

という、少女の成長物語であり家族の大河ドラマであり消えゆく自然の世界への愛を歌った物語でもある、ルイーズ・アードリック+ジョー・ネズボのような作品とのことです。


監督はサーミの短編ドキュメンタリー映画をいくつか作っているノルウェーのサーミ人監督エル・マーヤ・エイラ(Elle Márjá Eira)。

脚本は新人?ペーター・バイロ(Peter Biro)。


主演は新人エリン・オスカル(Elin Oskal)。
ほか出演は「シンプル・シモン」のマルティン・ヴァルストロム、新人?マグヌス・クームネン(Magnus Kuhmunen)、新人?イーダ・ラバ・ペルッソン(Ida Labba Persson)など。

2023年12月から撮影中。

 

 

まだ続きます…