マンボウのブログ -35ページ目

マンボウのブログ

フラヌールの視界から、さまざまな事象に遊ぶ

今度は、この三人の訳を・・・チョキ

 

 

 

  縁濃き谷間の、

   善き天使らの住いせる傍らに、

  その昔 美わしくも壮麗なる宮殿

   光眩き宮殿の聳え立てり。

  <思考>なる王の領土に

   そが宮殿は立ちにけり!

  熾天使とて かくも美わしき殿堂の上に

   翼をば拡げたることなし。

                        (冨士川義之訳:p.54)

 

 

 

  谷のなかでも、ひときわ緑濃き谷

   良き天使の住まえるところ

  かつて美しく荘厳な宮殿があった----

   輝ける宮殿----直と頭を立て

  思索という名の王の統べる地に

   宮殿は休息らう

  天崖を行く熾天使が見た一等美しい宮殿も

   この宮殿の半分ほども美しくはない。

                        (西崎憲訳:p.169-70)

 

 

 

  やさしい天使たちの住む

  青々としたわたしたちの谷間には、

  かつて美しくも荘厳なる宮殿が----

  燃えるように輝き----高くそびえていた。

  思想という名の君主が治めるこの国に

  堂々と建っていたのだ!

  だが熾天使でさえこれまでその翼を拡げた宮殿は、

  この半ばほども美しくはない。

                        (巽孝之訳:p.172)

 

 

 

ここでは、<思考>、思索、思想 というさまざまな訳語が採用されている(訳者たちの苦労と苦心、工夫が窺えるなあ)。グラサン

 

 

 

 

 

   <エドガー・アラン・ポーを読む・・・!>・・・25 

では、次の3つの訳も・・・右差し

 

 

  みどり濃いわれらの谷

   天使たちのすまうところ

  その昔、壮麗の宮殿----

   光まばゆい宮のそびえ

  王である「思い」の領土に

   宮殿はあった!

  熾天使もまだ翼を かほど

   美しい宮の上にひろげたことはない

                     (丸谷才一訳:p.298)

 

 

 

  縁したたる山あいに

   よき天使らの住みなせる

  いにしえの、愛しけし、いかめし、宮----

   輝きの宮----頭をあぐる。

  王なる「思考」の治むる宮ぞ----

   そこに聳えし。

  熾天使とてかく美わしき宮の上を

   翔けしことなし。

                     (八木敏雄訳:p.182)

 

 

 

  縁濃い谿のあわい

  よき天使らの住まえるところに

  そのむかし麗わしい宮殿が----

  まばゆい宮殿が、そびえていた。

  「こころ」なる王の領土に

  宮殿は立っていた!

  最高天使もいまだこれほど美しい宮居に

  翼をひろげたことはなかった。

                     (河野一郎訳:p.346-7)

 

 

 

 

ここでは、「Thought's」が、なんと「思い」「思考」「こころ」と三者三様の訳語が充てられている!びっくり

 

敢て言えば、どれがお好みだろうか?グラサン

 

 

 

 

   <エドガー・アラン・ポーを読む・・・!>・・・24

では、この作品のフィナーレを見てみよう!チョキ

 

 

 

 一行が丘の上についた時、彼等は、言はれた通りに振返って、先程の林間の草地を眺めた。忽ち、一匹の虎が草の茂みから道の上に躍り出たのを彼等は見た。虎は、既に白く光を失った月を仰いで、二声三声咆哮したかと思ふと、又、元の叢に躍り入つて、再び其の姿を見なかつた。

                               (p.35)

 

 

 

Paul McCarthy による英訳は・・・右差し

 

 

 When the group of travelers reached the top of the hill, they turned to look back at grassy place in the grove.  They saw a tiger spring out from the thick grass and on to the road.  The tiger gazed up at the moon, already pale, having lost its brilliance, and roared mightily two times, three times, then leapt back into the brush.  They never saw the tiger again.

                               (p.8)

 

 

もう一つ初級者向けの、NHK CD BOOK 「Enjoy simple english readers」(NHK出版)Daniel Stewart 監修では・・・右差し

 

 

 Ensan cried as his group left.  At the hill, they looked back at the tall grass.  They saw a tiger jump out onto the road.  The tiger looked up at the pale moon and roared a few times.  Then, it jumped back into the grass and was never seen again.

                                (p.58)

 

 

 

なお、白い(月)は、「pale」という表現が一般的で、蒼白いという気配を表わしている(タイトルとなった「山月記」を象徴している)。新月

 

 

 

最後に、ドイツ語訳を・・・生ビール

 

 

 Als er und sein Gefolge auf dem Hugel waren, schauten sie, wie ihnen gesagt war, auf die Waldwiese hinab.  Da sprang ein Tiger aus dem Gebusch zur Strasse.  Er schaute zu dem schon verblassenden Mond, brullte zwei- dreimal, verschwand im Gebusch und ward nie wieder gesehen.

                                 (p.9)

 

 

 

こうして、二つの英訳とドイツ語訳を並べてみて、感じるのは、原文の静けさ(らしき雰囲気)が巧く表出できていないような。

 

虎(になった李徴の哀しみなど)の存在がイマイチ微妙に捉えきれていないような印象をもったなあ。グラサン

 

 

 

上から順に、二人の登場人物の表記を書いてみると、

 

  「李徴」と「袁傪」

 

  「Li Zheng」と「Yuan Can」

 

  「Licho」と「Ensan」

 

  「Ri Cho」と「En San」

 

となる。