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フラヌールの視界から、さまざまな事象に遊ぶ

では、最後に加島祥造(1923-2015)の訳を見ておこう!チョキ

 

 

  鐘のさまざま

 

  1

  橇についたたくさんの鈴

  銀の鈴だよ!

 

 

  鈴の音に、鈴の音に、鈴の音に、

  りん、りん、りんの鈴の音に

  合わせるように!

 

 

  2

  今度鳴るのは豊かな結婚式の鐘

  金の鐘よ!

 

 

  鐘の音に、鐘の音に、鐘の音に

  鐘の響きと歌に!

 

 

  3

  次はやかましい火事の鐘

  銅の鐘だ!

 

 

  おお、鐘よ、鐘よ、鐘よ

  鳴りわたる鐘の音

  じゃーん、ぐわらーんという音

 

 

  4

  こんどは葬儀の鐘の音

  鉄の鐘!

 

 

  鐘が鳴る、鐘が鳴る

  おお、鐘の音、鐘の音、鐘の音

  嘆きと呻きの鐘の音

                           (p.80-9)

 

 

脚注の中で、必要かと思われる部分も書き抜いてみよう。

 

 言うまでもないだろうが、西洋の鐘は、橇の鈴にせよ教会の鐘にせよ、いくつもの鐘がごく高い音でいっせいに鳴る。そのことを頭においてこの詩を読んでゆくと、この詩にある擬音効果がよりよく汲みとれるであろう。

 

 Runic rhyme  ここでは magic spell のこと。Runic は北ヨーロッパにあった古代ルーン文字(Rune)のこと。それが魔術の記号の意にもなった。

                      (「対訳 ポー詩集」岩波文庫 1997:p.128-9)

 

 

この訳では、オノマトペも適宜で変化を齎しているような。。。

 

なお、四つの連は、それぞれ第一楽章、第二楽章、第三楽章、第四楽章というふうに捉えることも出来そうで、前半の二つの楽章は明るさに充ちており(幼年期と青年期)、後半の二つの楽章は暗さが目立ってくる(後年期と葬儀)。

 

そういう風に考えれば、まさに四楽章構成の交響曲という成り立ちが浮かび上がってくるわ(鐘の素材も、銀、金、銅、鉄という具合に変化してゆく)!グラサン

 

 

 

加島祥造による「解説」(上記の対訳に所収)でも、こう書かれている。

 

 しかしこの詩は、思いつきと擬音語だけで成功したのではない。それを支える物語、ひとつの筋立てがちゃんとあるのだ。

 第1連が少年期を思いださせる雪橇の鈴の音であり、次に結婚式に鳴らす鐘(青年期)、そして火事を告げる鐘(これは中年期のあの騒がしさを象徴する)、そして最後の連では葬儀の鐘が鳴りひびく。

 このようにこの詩は人生の大きな4段階に鳴る鐘のひびきを伝えて、なんとなし人の人生の意味を伝えるところがある。

                           (p.197)

 

 

 

付記:なお、ドイツ語訳(「Manfred Pawlak, 1980  10Bde. 」)によると、各連の終わりにある「bells bells ---」の連呼は、それぞれ、schellt(Ⅰ)、wellt(Ⅱ)、gellt(Ⅲ)、schallt(Ⅳ)という動詞の三人称単数現在形が用いられているのが興味深い。それに脚韻を踏む工夫も凝らされている(なので、Ⅲはちと苦しいかも)。流れ星

 

 

 

 

   <エドガー・アラン・ポーを読む・・・!>・・・55

では、次に、この訳を。チョキ

 

 

  本世界詩人選「ポー詩集」(小沢書店 1996)福永武彦・入沢康夫 訳

 

 

入沢康夫(1931-2018 )訳である。

 

 

   鐘のうた

 

    ⅰ

 

  聞きたまえ 鈴をつけた橇の音----

  白銀の鈴を!

 

 

  りん りん りん りん

  りん りん の鈴の音----

  うるわしい音楽さながらに鳴りひびき

  更に鳴りわたる鈴の音につれて

  北欧の古曲にも似たリズムにのって

  拍子 拍子 拍子をとって ちかちかと瞬いているかのようだ。

 

 

    ⅱ

 

  聞きたまえ 甘やかな結婚の鐘----

  黄金の鐘を!

 

 

  らん らん らん の鐘----

  らん ろん らん ろん

  らん ろん の鐘の----

  韻律正しい諧音は 更に更に高まっていく。

 

 

    ⅲ

 

  聞きたまえ けたたましい警鐘----

  真鍮の鐘を!

 

 

  じゃん じゃん じゃん じゃん

  じゃん じゃん じゃん の鐘の音

  阿鼻叫喚の警鐘の音で聞きわけて、つぶさに告げる。

 

 

    Ⅳ

 

  聞きたまえ 間をおいてひびく鐘----

  くろがねの鐘を!

 

 

  いんいん いんいん

  いんいん いんいんの鐘の音

  歎きの声 呻きの声を 洩らす 鐘の音。

                            (p.138-45)

 

 

 

 

さすが詩人でもある入沢康夫訳では、オノマトペなど鐘の音と響きも工夫を凝らされているようだ!口笛

 

 

 

 

   <エドガー・アラン・ポーを読む・・・!>・・・54

それでは、順に日本語訳を見てゆくとしよう。チョキ

 

 

先ずは、阿部保(1910-2007)訳から。

 

 

  本阿部保訳「ポー詩集」(新潮文庫 1956)

 

 

各連の最初の二行と最後の数行を併せて引用してみる。

 

 

    鈴(りん)の歌

 

       一

  鈴つけた橇の音を聞け----

  銀の鈴。

 

 

  鈴、鈴、鈴、鈴、

  鈴、鈴、鈴から----

  鈴のさやかに鳴る音から

  美妙に溢れ出るちりんちりんと鳴る音や

  古北欧派の韻をふみ、

  拍子、拍子も面白う。

 

 

       二

  柔らかな華燭(うきゆい)の鈴、

  金の音色の鈴を聞け。

 

 

  鈴、鈴、鈴、鈴、

  鈴、鈴、鈴の----

  揺れ響く

  鈴の韻が合い調和するよう

  促す歓喜を

  告げることであろう。

 

 

       三

  たかい警鐘----

  真鍮の音色の鈴を聞け。

 

 

  鈴、鈴、鈴、鈴、

  鈴、鈴、鈴の ----

  鈴の ----

  鈴の叫喚や鳴る音の、

  鈴の憤怒の浮き沈み。

 

 

       四

  静かなる鈴の音を聞け ----

  鉄の鈴。

 

 

  鈴、鈴、鈴、鈴、

  鈴、鈴、鈴の ----

  鈴の鳴る音に

  鈴の歎き呻きに

  酔うような古北欧派の韻をふみ

  彼が鳴らし、鳴らし、鳴らすとき

  拍子、拍子も面白う。

                            (p.86-93)

 

 

 

ここでは、オノマトペや音色の響きはそれほど強調されていないかな。。。グラサン

 

 

 

 

   <エドガー・アラン・ポーを読む・・・!>・・・53