クレンペラー盤「さまよえるオランダ人」を聴く・・・! | マンボウのブログ

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今度は、この名盤である。チョキ

 

 

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ヘッドフォンワーグナー:歌劇『さまよえるオランダ人』全曲
オランダ人・・・テオ・アダム(バス=バリトン)
ゼンタ・・・アニヤ・シリヤ(ソプラノ)
ダーラント・・・マルッティ・タルヴェラ(バス)
エリク・・・ジェイムズ・キング(テノール)
舵取り・・・ケネス・マクドナルド(テノール)
マリー・・・アンネリース・ブルマイスター(メゾ=ソプラノ)
BBC合唱団
ピーター・ゲルホーン(合唱指揮)
ニュー・フィルハーモニア管弦楽団
オットー・クレンペラー(指揮)

録音時期:1968年3月19日(ステレオ)
録音場所:ロイヤル・フェスティヴァル・ホール(ライヴ)
リマスタリング:ポール・ベイリー

 

 

   GB EMI SAN207-9 テオ・アダム/アニャ・シリア/クレンペラー ワーグナー「さまよえるオランダ人」全曲(3枚組)の商品詳細:アナログ・レコード  通販 RECORD SOUND

 

 

メモクレンペラーの『オランダ人』は、暗黒の力に満ちた独特のドラマ構築に特徴があり、気楽さや救済といった要素はあまり顧みられません(実際に救済のモティーフはカットされています)。悲劇的色彩が持続低音のように機能するここでのアプローチは、ワーグナーの音楽が備えるエネルギーの凄みをあらためて聴き手に刻印する説得力が感じられ、当時20代ながら破天荒なスケールの歌を聴かせるアニア・シリヤと、クレンペラー・テンポを完全に理解して深みある歌を聴かせるテオ・アダムの絶唱もあってインパクトの強さは絶大です。

 

 

 

 

 

メモEMIセッション録音直後の演奏会形式上演による『さまよえるオランダ人』ライヴ録音が、ステレオで登場します。
1967年。クレンペラーでワーグナーのオペラを録音できるチャンスは残り少ないと感じていたEMIのチーフ・プロデューサー、ピーター・アンドリー(ウォルター・レッグの後任)は『さまよえるオランダ人』を提案し、乗り気になったクレンペラーは、バイロイトを訪れ歌手を物色します。そこでドホナーニ指揮する『タンホイザー』でエリーザベトを歌っていたアニヤ・シリヤに一目惚れし、アンドリーに次のように書き送りました。
「彼女は音楽的にも演劇的にも飛び抜けている。間違いなく天才だ。彼女が『オランダ人』の録音とコンサートに参加出来るよう、ありとあらゆる手を尽くさねばならない。他の歌手にゼンタを歌わせるなんて、黒を白だと言い張るようなものだ!」

かくしてシリヤは歴史的名盤の録音セッションに参加することになりましたが、セッション中のクレンペラーを振り返って「真剣なときは私が女であることさえ忘れてしまったように厳しかった」と語っています。オランダ人とゼンタのデュエットはなんと6回も録り直されたのだそう。しかしその理由は「マエストロは何度も、どこかを踏んずけたりぶつかったりして大きな騒音をたてるんですもの!」
実は、クレンペラーとスタッフ一同が強く望みながらEMIの録音では実現しなったことが一つありました。それはエリク役のテノール歌手で、皆がジェイムズ・キングを望み、キングも同意しながら、彼について優先権を持つデッカが、コンサートへの出演は認めつつも録音への参加を拒否したのです。このためEMI盤ではエルンスト・コツープが歌っています。コツープも決して悪い歌手ではありませんが、やはりキングの方が実力は上でした。シリヤも「キングの存在によってコンサートが一層強烈な体験になった」と語っています。
リハーサル中は厳しかったクレンペラーも、それ以外の時間は終始ご機嫌で、シリヤやスタッフを笑わせていました。それは、このコンサートの際、クレンペラーの巨体を舞台袖から指揮台まで支えて歩く役をシリヤが仰せつかっていたからかも知れません。「彼はとても重くて、指揮台に辿り着くまで5分もかかったのよ!」

そしてまた、リハーサルを見学に来たジョージ・セルとのエピソードも残っています。クレンペラーは70歳のセルに“ヤング・マン”と呼びかけ(セルはクレンペラーの12歳年下)、シリヤを「俺の婚約者だ。」と紹介するなど愛想よく対応しています。しかし、普段は絶対あり得ないのに、リハーサル全編を立ったまま指揮するなど、クレンペラーがいかにこの年下の指揮者を意識していたかも同時に伺い知れます(ちなみにセルはこの8ヶ月後にニュー・フィルハーモニア管に客演し、ベートーヴェンの8番と9番の見事な演奏をおこなっています)。

クレンペラーのへヴィーな『オランダ人』には、サヴァリッシュの快速な『オランダ人』とはまったく違った世界があります。当時、バイロイトに蔓延していた度を越してドイツ的な音楽作りを刷新したいと考えていたヴィーラント・ワーグナーは、サヴァリッシュやクラウスのすっきりしたスタイルを熱狂的に支持していました。サヴァリッシュに比べると、クレンペラーのワーグナーは対極といえるものですが、ヴィーラントはクレンペラーのワーグナーも称えており、『トリスタン』を指揮するよう要請したり、EMIの管弦楽作品集には讃辞を呈したりもしていました。それに、ヴィーラントが提唱した新バイロイト様式の演出の元祖とも言える前衛的なワーグナー演出が、クレンペラーによって、ベルリンで行われていたことも忘れてはならないでしょう。ヴィーラントはクレンペラーについてこう述べています。
「彼が他に全く類のない独特な指揮者である所以は、古典的ギリシャ、ユダヤの伝統、中世のキリスト教精神、ドイツのロマンティシズム、現代のリアリズムといったものの混在にある。」

シリヤは語ります。
「ええ、クレンペラーのやり方は、私のそれまでのやり方とは全く違いました。でも、私は今でも感じるのです。クレンペラーの音楽作りがわたしは一番好きだったと。彼の音楽には、何か‘実質’がありました。」

シリヤが舞台上で感じたこの感覚を同じく感じることができる、このライヴ録音が秘めた重要性には計り知れないものがあります。(ユニバーサルミュージックIMS)
 

 

   

 

 

 

コンヴィチュニー盤に劣らず豪快な演奏だけど、そこは天下のマエストロだけあって精緻さも兼ね備えている。どちらを取るかは当然ながら、クレンペラー盤ということになるわ!グッ

 

 

なお、クレンペラーによるワーグナー作品の全曲盤は、残念ながら、この「さまよえるオランダ人」のみである!えーん

 

 

 

 

   <ワーグナーを聴く!>・・・18