さて、「三つのプロローグ」から、最後の「天上の序曲」を・・・
フィナーレの手前にある、メフィストの台詞。
Meph. Da dank' ich Euch; denn mit den Toten
Hab' ich mich niemals gern behage. (p.28)
メフィスト それは有難うございます。なせと云ふに、死人なんぞに
構ってゐるのは、わたしやあ本から厭ですから。 (鷗外訳: p.20)
メフィスト これは願ったりかなったり。死んだ魂なんぞとは
こちとら 関わりたくない方なんで。 (柴田訳: p.29)
メフィスト
ありがたい。死人相手はおもしろくない。ふっくらした色つやの頬ぺたがい
い。死体なんぞは願いさげだ。猫がネズミをいたぶるようにやるとしましょう。 (池内訳:p.20)
最後のメフィストの台詞は・・・
メフィスト(一人)己は折々あのお爺さんに逢ふのが好だ。
そこで附合がまづくならないやうに気を附けてゐる。
悪魔にさへあんな風に人間らしく話をしてくれるのは、
大檀那の身の上では感心な事さね。 (鷗外訳: p.22)
メフィスト(ひとりのこって)
あの老いぼれとは、ちょくちょく会っておきたいものだ。縁をつないでおく
としよう。なかなかのおかたじゃないか。悪魔にも、わけへだてなく声をかけ
てくる。 (池内訳: p.21)
(この部分は、柴田訳では省略されている)
ドイツで発行されたファウスト博士とメフィストフェレスの記念切手
なお、「天上の序曲」(Der Prolog im Himmel)は、まさしくヨブ記の始めにおける神とサタンの対話にヒントを得たものである。(塩谷饒「ルター聖書」 大学書林 1983 p.210)
<ゲーテ「ファウスト」の日本語訳を巡って!>・・・3