フルトヴェングラーの遺産の中で真っ先に取り上げてみたいのが、この録音である。
ベートーヴェン「交響曲第3番『英雄』」
フルトヴェングラー指揮 ウィーン・フィルハーモニー管弦楽団(1944)
「第2世代アナログ盤復刻」!! ウラニアのエロイカ!! と記されている。Delta 盤(DCCA-0031)
1944年の放送用の録音で、戦後ウラニア社から指揮者本人の許可を取らずに発売されて、フルトヴェングラーが裁判に訴えたという伝説の録音である。
・・・これは間違いなくフルトヴェングラーの演奏であることが確認されており、この指揮者のみならず、第三番のすべての録音中最も高貴で感動的である。
今から考えると、1953年にウラニアから発売されたこの録音をフルトヴェングラーが裁判で販売差し止めにしたのは皮肉な結果になった。というのも、これほどの推進力と威厳は、その後のスタジオ録音ではけっして再現されなかったからだ。・・・(ジョン・アードイン「フルトヴェングラー グレート・レコーディングズ」 音楽之友社 2000 p.159-60)
時は、ヒトラー・ナチスの敗色濃い時期で、大戦中にこんな演奏が出来たのだということに先ずは驚きを禁じ得ないなあ。。。
ヴィルヘルム・フルトヴェングラー(1886-1954)
この盤では、[ Bounus Track / Played at 33 1/3rpm ] として第一楽章がもう一度聴けるのだ(少し早めになっている・・・どうやら、こちらの方がイイかも)!
・・・デルタのフルトヴェングラー24作目は遂に「ウラニアのエロイカ」。これこそフルトヴェングラーの最も有名な録音だが、「バイロイトの第9」に続き、今回も伝家の宝刀「究極の手段」が採用されている(ブックレットより)。
推進力のある演奏は、戦時中の敗色濃い時代背景を考え合わせてみると、まさに鬼気迫るところがある。フルトヴェングラーもウィーンフィルも渾身の力を振り絞って作品と対峙しているのがひしひしと伝わってきて、打ちのめされるわ(しばらくは、他の演奏を聴こうという気にさえならない)。
よく指摘されているとおり、ややハイ上がりの音質は、もう少し重心が低かったらなあ、という聴き手の思いがあるけれど、聴いてゆくうちに気にならなくなるから良しとしようで!
<フルトヴェングラー没後70年に寄せて!>・・・1