音楽・美術・映画をめぐるエッセー(「辻邦生全集 第19巻」)を読んで・・・! | マンボウのブログ

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フラヌールの視界から、さまざまな事象に遊ぶ

とうとう、図書館から全集本の一冊を借りてきた。

年末年始のつれづれに愉しもうという算段である!チョキ

 

 

   

 

本「辻邦生全集 第19巻 ~音楽・美術・映画をめぐるエッセー~」(新潮社 2005)

 

 

メモ文学と渾然一体となり、文学的創造の源泉でもあった音楽と美術――生命の高まりとしての〈美〉を論じるエッセー集。中条省平が独自の視点で精選したシネフィル辻邦生の〈映画クロニクル〉を収録。

 

 

   

 

 

メモ(1925-1999)東京生れ。1957(昭和32)年から1961年までフランスに留学。1963年、長篇『廻廊にて』を上梓し、近代文学賞を受賞。この後、芸術選奨新人賞を得た1968年の『安土往還記』や1972年に毎日芸術賞を受けた『背教者ユリアヌス』等、独自の歴史小説を次々と発表。1995(平成7)年には『西行花伝』により谷崎潤一郎賞受賞。他の作品に『嵯峨野明月記』『春の戴冠』等。

 

 

全体の約半分を占める映画もあるけど、最も興味を惹いたのが音楽エッセーである。

目次を見ていて、先ず目に留まったのが、サーチ

 

   むらさき音符「私の好きなクラシック・ベスト3」(p.102-3)で、ここに挙げられている順に紹介すると、

 

  ① シューベルト「ピアノ三重奏曲第2番変ホ長調 D.929 」 SOCM35 CBSソニー

  ②ベートーヴェン「ヴァイオリン・ソナタ全集」 SFX9507-9510 Philips

  ③フェリックス・メンデルスゾーン=バルトルディ「無言歌集」 MG9760-9762 Deutsche Grammophon

 

というラインアップだ。

この三つを見て、辻邦生の趣味の良さにはたと膝を打ったわ(^^)びっくり

 

演奏者は、

 

  ①イストミン=スターン=ローズ・トリオ 

  ②オイストラフ&オボーリン 

  ③ダニエル・バレンボイム   という布陣である。

 

寸評は、

 

 ①シューベルトのなかには透明な静謐感とともに、やはり若い人らしい陽気さ、明るさが聞こえる。このトリオはそうしたリズムをはっきりつかんでいて、作曲家の味わった「生きる悦び」を伝えてくれる。

 

 ②「ヴァイオリン・ソナタ」を推すのは、青春の若々しい抒情から「春」の至福感を経て「クロイツェル」の激烈な悲劇的情念まで、人生の全段階を経験するような気がするからだ。オイストラフの善良な輝きとレフ・オボーリンの手堅いピアノは、いい意味の慎ましさに貫かれていて、人格の気品さえ感じさせる。

 

 ③ダニエル・バレンボイムでこの曲をかれこれ二十年近く聴いているが、ロマン派のもつ内面世界の温かさ、明るさ、闊達さ、憂愁感、夢想を彼ほど悪びれず心の歌として歌っている人はほかに見当たらない。おそらくロマン派の弱点を知りぬいた果てに、この至福の甘美な泉を見出したに違いない。

 

 

ふむふむ。。。

文学者辻邦生ならではの心象風景が見事に映し出されているわ(^^)グッ

 

 

二段組500ページに近い大冊のレビューをたった2ページ足らずの項目紹介で終えるのは、いかにも不甲斐ない?ので、ここで、未亡人辻佐保子(美術史家)さんの月報の文章を紹介しておきたい!右差し

 

   メモ・・・「音楽・美術・映画」に関するエッセイを集めたこの第十九巻は、「旅」の場合と同様に、つねに辻邦生の文学的創造の起爆剤となり、「絶えず書く」ことを可能にしてきた重要な契機を明らかにするだろう。音楽は肉体の奥深くまで浸透して魂を揺り動かし、執筆中の作品にふさわしい気分や情緒を伝達する。とりわけ音楽のリズムや情感を生々しく伝える声楽には敏感だった。建築や美術作品についての独自の理解は、小説の力学的構造や微妙な肌ざわりに投影される。さらには、芸術家の生涯や仕事ぶりを自らの歩みに重ねながら、過去を振り返り、次の段階に進む貴重な手掛かりを見いだすこともあった。・・・(「月報」 p.5)

 

 

<「絶えず書く」人と暮らして> と題する未亡人の月報の文章には、辻邦生の創作や人生の裏側を覗き見る快感さえ感じられるわ(^^)グラサン

 

 

   Topics:学習院大で「辻邦生『夏の砦』を書いた頃」展 夫妻の感性、結実示す資料も | 毎日新聞

          辻邦生・佐保子夫妻

 

 

 

 

   <辻邦生を読んでみよう!>・・・1