数あるモーツァルトのピアノ協奏曲の中で、最も好きなのが「ピアノ協奏曲第27番」変ロ長調 K.595 だ。
最後のピアノ協奏曲であるだけでなく、ここには、モーツァルトの微笑みと憂いが見事に綯い交ぜになっている傑作であるから・・・
清澄さという観念、概念を最も感じさせてくれるのがこの作品で、遊びと真剣さ、明るさと陰影など裏腹にある心情が込められている。それは、「クラリネット五重奏曲」にも相通じる感情かもしれない。
この作品の演奏は、二つの名演・名盤を推したい。
ウィルヘルム・バックハウスは、ベートーベンのピアノ・ソナタ全集などを通して、往年の巨匠として今でも多くのファンの間で君臨している。彼が亡くなった時には、私のクラスの音楽好きの中でちょっとした話題になったものだ。
もちろん、彼にはスタジオ録音による名盤が存在するが、ここでは、同じコンビによるライヴ盤を聴いてみたい。
*バックハウス&ベーム/VPO(60L)・・・ORFEO盤によるザルツブルク音楽祭ライヴである。けっこう早めのテンポで、しかも軽やかなタッチで奏でられる演奏は、スタジオ録音では得られない感興がある。打鍵も浅めで、音色も明るい。一度限りのライヴならではのパフォーマンスだ。ピアニストと指揮者たちは楽しんで音楽している、という印象が強い。なお、モノラル録音なのが惜しい。ウィーンフィルの音色や響きも心なしか薄めだ。
クリフォード・カーゾンというピアニストは地味ながら、とってもいい音楽性をもっていて、聴くものを虜にしてしまう。派手さはなくても、聴く耳と心さえもっていれば、その味わいは果てしなく深い。
*カーゾン&ブリテン/イギリス室内管(70)・・・この名盤(K.466 ニ短調とのカップリング)のSACD盤を聴いた。音質も格段に良くなり、決して渋いだけではないカーゾンのピアニズムに酔いしれた。オケともども重心の低い響きが好ましい。落ち着いた印象だけでなく、心ドキドキする気がしてくるのは、私だけであろうか・・・
打鍵はより深く、そこから音をすくい上げてくるかのような音色は限りなく艶消しの良さに溢れたものだ。
なぜか、渋めのディスクを選んでしまったが、いずれ劣らぬ名演・名盤として、私の永遠の親友としてつき合っていきたい演奏である。![]()
<師走のモーツァルト>・・・(7)