モーツァルトの残した唯一のクラリネットのための五重奏曲は、当時の奏者であったアントン・シュタトラーに捧げられている(協奏曲も同様)。
「クラリネット五重奏曲」は、モーツァルト晩年の幸せ感が横溢した名品の香りがする。
この作品の古典的名盤と言えば、ウィーンフィルの首席奏者であったレオポルド・ウラッハ(1902-1956)の演奏が思い浮かぶ。決定盤として長らく君臨してきた録音は、Westminster レーベルのもの(1951年録音)だが、ここで聴くのは、忘れ去られたもう一つの名盤である、ドイツのシュトロス四重奏団との録音だ。
*ウラッハ&シュトロスSQ(55?)・・・まず、ウラッハのおっとりとしたクラリネットの響きが嬉しい。こんなに寛いで聴くことのできる演奏はないだろう。弦楽器も融け合った音で、見事な調和を醸し出していて、幸せ一杯のモーツァルトを聴くことができる。OPUS盤の復刻を諸手を挙げて歓迎したい。音質もまずますで聴きやすい。
それでは、80年代以降の新しい名演・名盤をいくつか聴いてみたい。
*シフリン&ノース・ウェスト・チェンバーミュージック(84)・・・音域を広げた楽器を使用したシフリンの音色は、やや渋めだが、控えめな弦楽器群との相性がこの演奏の特徴だろう。クラリネットがあくまで主役で、弦楽器との掛け合いという点では、物足りなさはあるものの、落ち着いた雰囲気を醸し出していて心地いい(DELOS盤)。
*シア・キング&ガブリエリSQ(85)・・・バセット・クラリネットを使った演奏。シフリン盤よりも、明るめの音色で演奏全体も軽さと活気がある。オーソドックスな名演として万人に迎えられるだろう(HYPERION盤)。
*マイヤー&モザイクSQ(92)・・・この作品を聴くにあたって、まず思い浮かべたのがこの演奏だ。アグレッシブで切々と訴えかける力強さに満ち溢れた演奏である。音の融け合いというよりも、せめぎ合いを目指したところに表現の指向性をみることができる。モザイクSQはモーツァルトの弦楽四重奏曲でも鮮やかな演奏を聴かせてくれている(NAIVE盤)。
というわけで、いずれも甲乙付けがたい名演だ。その時の気分によって聴きわけるしかないだろう。
ほっこりしたい時には、ウラッハ盤をゆっくりと聴き、気分昂揚したい時には、マイヤー盤が最適だろう。
もしかして、モーツァルト作品の中で、この作品がいちばん好きかもしれないなあ・・・![]()
<師走のモーツァルト>・・・(5)