こんにちは、リブラです。

今回は「イニシエーション」第5章・6章の解説です。

 

第5章ふるさとに帰りたい

弟が生まれたことで、母は赤ちゃんの世話に

追われる毎日になりました。

 

元々家族の中でどこか疎外感を抱いていたエリザベスは、

さらに孤独を深めていきます。

 

育児の疲れから、母は以前にも増して小言が多くなり、

素直になれないエリザベスを「反抗的な子」

と決めつけました。

 

ある夜、悲しみと怒りが限界に達したエリザベスは、

家を飛び出そうとします。

 

しかし、母に見つかり、すぐに連れ戻されてしまいました。

 

けれども母の関心は、娘の心の傷ではなく、

「家庭教師をつけて勉強させること」に向いていました。

 

誰一人、自分が何を感じ、何を苦しんでいるのか

を理解してくれない。

 

そんな絶望の中で、エリザベスの心は

「ふるさとへ帰りたい」という思いでいっぱいになります。

 

思いつめた彼女は、その気持ちを一通の手紙に書きました。

 

「わたしがほんとうの子ではないことは知っています。

お願いですから、元いた場所へ帰してください」

 

彼女はその手紙を、接客中だった母の膝の上へ、

そっと置いてきます。

 

その夜、母はその手紙を父に見せ、

激しい怒りをあらわにしました。

 

「いいこと。私たちがいい親じゃないというなら、

明日からまったく違う親になることだってできるのよ。

そうしたら、あなたはきっと後悔するわ。

よく覚えておきなさい」

 

一方、父は面白がるように笑いながら言いました。

 

「帰りたいという、その『本当の両親』とやらは

どこにいるんだ? いったい誰のことなんだ?」

 

その問いを聞いた瞬間、エリザベスは気づきます。

 

まだ、その場所へ帰る時ではない。

 

そして、この問いの答えを両親に求めても

無意味なのだ、と。

両親は、その答えを知らないのです。

 

この頃、エリザベスはまだ七歳でした。

 

ある日、父が「人間は万物の霊長である」と

語るのを聞きます。

 

父は、人間こそ自然が生み出した最高傑作だ

と信じていました。

 

その言葉を聞いた瞬間、エリザベスの心に、

突然ひとつの思いが浮かびます。

 

「何も知らない人たちに秘密を明かすことは、

〈かれ〉が望んでいない」

「えっ、〈かれ〉って……誰なのだろう?」

 

自分で口にしたはずなのに、

その名前だけが思い出せません。

 

けれども彼女の心には、すべてを知り、

絶対的な愛と理解で自分を包み込んでくれる存在の記憶が、

ゆっくりと蘇り始めていたのでした。


第6章 結束に憧れて

やがてエリザベスは、母方のいとこの息子たち

と親しく遊ぶようになります。

 

本で読んだ「永遠の友情」に憧れていた彼女は、

みんなで「永遠の友情同盟」を結ぼうと提案しました。

 

全員が賛成し、その証として署名をすることになります。

 

少年二人と姉のグレーテは、頭文字を大きく崩し、

複雑に装飾した大人のようなサインを書きました。

 

ところがエリザベスだけは、

自分の名前をそのまま素直な文字で書きました。

 

すると仲間たちは言いました。

「そんな普通の署名じゃだめだ。崩し文字の署名が

書けるようになるまで、仲間には入れない」

 

仲間になりたい一心で、エリザベスはその夜、

一生懸命に崩し文字の署名を練習します。

 

翌日、ようやく合格し、「友情同盟」の一員になる

ことができました。

 

しかし、その瞬間、彼女の胸には

言いようのない嫌悪感が込み上げます。

 

すると、心の奥から静かな声が聞こえました。

 

「その署名は偽物だ。それは、おまえの文字ではない。

偽物によって真実が手に入ると思うのか。

おまえの本当の署名を受け入れられない者が、
おまえの真の友になれるはずもない」

 

その声は、エリザベスに大切な真理を教えていました。

 

自分を偽って得た居場所は、本当の居場所ではない。

 

どれほど仲間に入りたくても、自分らしさを手放して

築いた絆は、本物の友情にはならないのです。

 

「イニシエーション」第5章/第6章の要約

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第5章・第6章 解説

母との分離が生んだ愛の欠乏感

母親の関心が赤ちゃんへ向かうと、

先に生まれた子どもが寂しさを感じるのは、ごく自然なことです。

 

しかし、エリザベスの母は、育児に追われるあまり、

その心の変化に気づく余裕がありませんでした。

 

「家庭教師をつけて勉強させればよい」という対応は、

娘の心を理解しようとするものではなく、

結果として母娘の距離をさらに広げてしまいます。

 

この母娘のすれ違いに注目すると、

わたしたちの心に潜む「愛の欠乏感」が、

人生にどのような影響を与えるのかが見えてきます。

 

弟の誕生によって、エリザベスは母とのつながりを

失ったように感じました。

 

その「寂しさ」は、愛が不足しているという

心からのサインでした。

 

ところが、そのサインは素直な言葉ではなく、

夜に家を飛び出そうとしたり、

勉強を拒んだりする反抗的な行動として表れます。

 

一方の母は、その反抗を見て

「この子を何とかしなければ」という恐れを抱き、

さらにコントロールしようとします。

 

つまり、エリザベスは「愛がほしい」と叫び、

母は「この子を制御しなければ」と反応した。

 

二人とも愛から行動しているつもりなのに、

その愛はまったく噛み合っていません。

 

こうして、「愛の欠乏感」は新たな欠乏感を生み、

親子の距離はますます広がっていきます。

 

やがてエリザベスは、

「愛を求めても与えてくれない人たちは、

本当の両親ではないのではないか」という結論に至り、

「本当の両親のもとへ帰してください」という手紙を書きました。

 

けれども、その手紙は母の心を深く傷つけることになります。

 

十月十日お腹の中で育て、大切に育ててきた娘から、

そのような言葉を向けられた母の悲しみは計り知れません。

 

ここにも、「愛の欠乏感」が生み出す皮肉があります。

 

愛を求めるあまり取った行動が、相手を傷つけ、

さらに愛を受け取れなくなる現実をつくってしまうのです。

 

エリザベスの場合は、それに加えて

前世の記憶が中途半端によみがえっていました。

 

本人は良かれと思って行動しても、

その真意は誰にも理解されず、

すべてが裏目に出てしまいます。

 

その結果、「誰も私をわかってくれない」

「本当にわかってくれる人たちのもとへも帰れない。」

という深い絶望を味わうことになります。

 

それでも彼女は希望を捨てませんでした。

 

本当の両親が無理なら、

今度は「真の友情」を求めます。

 

しかし、第6章では、その願いも打ち砕かれます。

 

友情同盟に入るためには、「崩し文字の署名」という

条件を満たさなければならなかったからです。

 

仲間になるために自分を偽って得た絆を、

彼女の魂はすぐに見抜きました。

 

「その署名は偽物だ」

「偽物によって真実が手に入ると思うのか」

 

この内なる声は、とても重要なメッセージです。

本当の自分を隠して手に入れた人間関係は、本当の絆にはならない。

 

この経験を通して、エリザベスは

外側の人間関係に希望を求めることをやめ、

ようやく自分の内側の声に耳を傾けるようになります。

 

そして、その静かな心の中で、

エジプト時代の師である〈かれ〉の記憶が、

少しずつよみがえり始めるのです。

 

愛がほしいのに、なぜ人は愛から遠ざかるのか

 

わたしは、この章で描かれている「愛の欠乏感」の根源は、

バーストラウマによって生まれたインナーチャイルドだと考えています。

 

わたしたちは誰もが胎児の時代を経験しています。

 

その頃は、温かい子宮の中で、ただ存在しているだけで

必要なものはすべて与えられ、

不足という感覚はありませんでした。

 

しかし、誕生と同時に世界は一変します。

 

自分で呼吸し、泣いて要求しなければ

何も得られない世界へ移るのです。

 

この「満たされた世界からの分離」が、

人生最初の欠乏体験になります。

 

その記憶を抱え続けている心の一部が、

インナーチャイルド(子ども意識)です。

 

インナーチャイルドが本当に求めているものは、

お金でも評価でも成功でもありません。

 

求めているのは、ただ「愛」のみです。

 

しかも、それは条件付きの愛ではなく、

「すべてを与え、何も要求しない無条件の愛」なのです。

 

だからこそ、それを人間関係だけに求めても満たされません。

 

人間は誰もが欠乏感を抱えて生きている存在だからです。

 

では、どうすれば「愛の欠乏感」から抜け出せるのでしょうか。

 

わたしは、そのヒントがこの二つの章に描かれていると思います。

 

人間関係から「無条件の愛」を得ようとすることを手放し、

自分の内側にある「愛の源泉」を思い出すことです。

 

人間関係からの愛を期待せず、

物質による代替えの充足を求めず、

自分を愛する気持ちに満たされているとき、

愛は尽きることがありません。

 

そこにつながることで、

「愛がほしい」という不足の意識は少しずつ静まり、

「愛を与えたい」という豊かさへと変わっていきます。

 

すると、不思議なことに、その愛に触れた人の心も癒され、

自然と「与える愛」と「受けとる愛」の循環が生まれます。

 

エリザベスは、

「良い子なら愛してあげる」という条件付きの親の愛にも、

「条件を満たせば仲間に入れてあげる」という友情にも失望しました。

 

しかし、この失望は決して無駄ではありませんでした。

 

なぜなら、彼女はそこで初めて、

それらが「無条件の愛」ではなく、「条件付きの愛(ニーズの愛)」だった

ことに気づき始めたからです。

 

「ニーズの愛」とは、「○○してくれるから愛する」

「○○にはわたしが必要だから」という、

条件によって成り立つ愛です。

 

もちろん、人間社会では、このような愛のカタチも存在します。

 

わたしたちは誰もが何らかのニーズ(必要性)を抱え、

その中で人間関係を築いています。

 

けれども、その愛だけで心の欠乏感を埋めようとすると、

条件を損なうたびに傷つき、「もっと愛してほしい」

「もっと認めてほしい」という欠乏感に苛まれます。

 

エリザベスは、両親にも友人にも、

その条件付きの愛を見たからこそ、

外側に「無条件の愛」を求め続けても

満たされないことを悟り始めます。

 

だからこそ、彼女の意識は外側ではなく、

内側へと向かったのです。

 

そこで思い出し始めたのが、

エジプト時代の師〈かれ〉から受け取っていた、

見返りも条件も存在しない無条件の愛でした。

 

人間関係に「無条件の愛」を求めることを手放し、

自分の内側にある「愛の源泉」へ意識を向ける。

 

そのとき初めて、「愛がほしい」という欠乏の連鎖は終わり、

「愛を与えたい」という豊かさの循環が始まるのです。

 

ニーズの愛と無条件の愛の違い

 

ここで、わたしが心理学を学ぶ中で大きな衝撃を受けた

言葉があります。

 

ヴィジョン心理学の創始者、チャック・スペザーノ博士の、

「傷つくならば、それは愛ではない」という言葉です。

 

わたしはこの言葉に出会ったとき、

長年抱えていた人間関係への見方が大きく変わりました。

 

わたしたちは「愛しているから苦しい」

「愛しているから傷つく」と考えがちです。

 

しかしチャック博士は、それは愛ではなく、

欠乏感を埋めようとする「ニーズ(必要性)の愛」

なのだと教えています。

 

「愛してほしい」

「認めてほしい。」

「わかってほしい。」

 

そうした満たされない思いを相手に求めるほど、

人は傷つき、相手もまた傷つけてしまいます。

 

わたしは、この章に描かれているエリザベスの姿にも、

その構図を見ます。

 

母親もエリザベスも、

お互いを愛していなかったわけではありません。

 

むしろ、お互いに愛を求めていました。

 

けれども、その愛は欠乏感から生まれた「ニーズの愛」だった

ため、すれ違い、傷つけ合う結果になってしまったのです。

 

では、どうすれば、その欠乏の連鎖を終えられるのでしょうか。

 

わたしは、その答えがインナーチャイルドの癒やし

にあると思っています。

 

「愛がほしい」と泣いている子ども意識を、

誰かに満たしてもらおうとするのではなく、

自らの高次意識で優しく抱きしめること。

 

外側へ愛を求め続けるのではなく、

内なる愛の源泉につながること。

 

そのとき初めて、「愛がほしい」という欠乏感は静まり、

「愛を与えたい」という自然な気持ちが生まれます。

 

チャックは、薬物依存に苦しむベトナム戦争帰還兵

の更生に携わる中で、

多くの心理療法が思うような成果を上げられない一方、

無条件の愛に基づくパートナーシップにだけ、

人を根本から変える力があることを見いだしたと語っています。

 

そして、その体験を通して、『奇跡のコース』に書かれている

「与えることが受けとることであり、受けとることが与えることである」

という言葉の真意を理解したそうです。

 

わたしは、この言葉こそ、第5章・第6章の核心だと感じています。

 

人は「ニーズの愛」に何度も傷つくからこそ、その限界を知ります。

 

だからこそ、ようやく「無条件の愛」という

新しい愛の在り方へと心を開いていけるのです。

 

次回も「イニシエーション」の解説を予定しています。

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