こんにちは、リブラです。

今回は「ミルトン・エリクソン心理療法<レジリエンスを育てる>」の第7章の解説です。

 

*ニキビだらけの少年

 

エリクソンに女性の医師が、

「わたしの息子はハーバード大の学生なのですが、ニキビがひどいのです。催眠で治療可能ですか?」と尋ねました。

 

エリクソンがそれに答えて、「はい。でも、わざわざ来るには及びませんよ。

クリスマス休暇はどう過ごされますか?」と尋ねると

 

女医は「わたしは仕事を休んでサン・ヴァレーに行き、スキーをします」と答えました。

 

それを聞くとエリクソンは、「今年のクリスマス休暇は息子さんをお連れになってはいかがですか?

キャビンを見つけて、備えつけの鏡を全部取り外してください。

食事もキャビンで取るようにするのです。

 

そして、あなたはご自分用の手鏡をバッグに入れるのをお忘れなく」と言いました。

 

母と息子はずっとスキーをして休暇を過ごしたので、立ち止まって鏡をチェックする時間がありませんでした。

 

2週間後、その息子の肌は正常な状態に戻っていました」

 

「ミルトン・エリクソン心理療法<レジリエンス>を育てる」より

 

 

この事例は、以前過去の記事で扱ったエリクソンの「わたしの声はあなたとともに」にも登場しました。

 

皮膚の状態と潜在意識の関係 | リブラの図書館(スピリチュアルな本と星のお話) (ameblo.jp)

 

この「レジリエンスを育てる」の本では、「注意のそらし」が治療の成功につながった事例として挙げられています。

 

エリクソンはこの患者さんに1度も会うこともなく、直接指示も与えず、母子で楽しい休暇を過ごすことだけに集中するように仕向けただけです。

 

エリクソンは精神科医なので病気の原因になっている潜在意識にアプローチしますが、この事例では催眠よりもスキー休暇の方が「注意のそらし」に有効と見たのでしょう。

 

また、この事例では、母親がエリクソンと話しただけで終わっているので、息子は母にスキー休暇を誘われたから一緒に行ったぐらいにしか思ってないところも、ニキビ肌のことを忘れるのに一役買っています。

 

なぜ、なかなか治らないニキビがスキーで遊んでいるうちに治ってしまうのか?

 

エリクソンは患者のとらわれを変化させることによって皮膚を治療することを、パラケルスス(16世紀の医師で錬金術師)の言葉を引用して説明しています。

 

人は自らがこうあると思い描けば、そのようになるものである。

人が今あるその姿は、自らがそうあると思い描いたものなのである。

 

身体の状態は心理的イメージと深い関係を持つが、とくに皮膚の上はより顕著に現れる。

恥ずかしい思いをしたときに顔が赤くなるのはよくある事だ」

 

わたしたちの意識の約95%を占めるのは、潜在意識です。

そして、身体と仲良しなのも潜在意識です。

 

けれども、わたしたちが自覚できる意識は顕在意識です。

顕在意識が占める割合はわずか約5%程度です。

 

圧倒的に潜在意識が優勢です。

でも、起きているときにフォーカスをどこに当てるか決められるのは、顕在意識です。

 

だから顕在意識が物事を判断し、選択し、決定権があるのですが、顕在意識は外部世界に反応して判断するので、自分の内面や身体の情報には疎いのです。

 

顕在意識にだけ任せると、外部世界に合わせるがあまり、自身の内部や身体を無視した判断もします。

 

「注意のそらし」により問題を忘れてしまうことがなぜ有効かと言えば、顕在意識が問題以外のところにフォーカスを向けている間に、潜在意識は問題のない健やかなセルフイメージを内部に構築できるからです。

 

ニキビ肌に悩むと、絶えず顕在意識がニキビにフォーカスを向けることになります。

けれども、顕在意識が得意なのは、治療に必要な情報収集です。治すことはできません。

さらに困ったことに、見つけた治療法に期待し、結果がすぐ現れないと不安を煽ります。

 

すると、潜在意識はネガティブな思考や感情を発生させ、そのイメージを身体に反映させてしまうので悪化します。

 

潜在意識に働いてもらってイメージの構築で治すには、むしろ顕在意識にニキビのことを忘れてもらった方が都合がよいのです。

 

そして、「注意のそらし」が有効なのも、顕在意識が外側の世界ばかりを優先して、潜在意識を無視するようなケースです。

 

顕在意識が押し付ける決定に潜在意識が反発するとき、病気や不快な症状という形で表現します。

 

顕在意識と潜在意識の方向性のギャップがそれほど激しくなければ、病気や不快な症状が現れた段階で心身への配慮が足りなかったことに気づくことができます。

 

ところが、病気や不快な症状などの問題解決すら外部世界の手段だけでなんとかしようと顕在意識がごり押しすると、潜在意識は総力を結集して病気や不快症状を進行させます。

 

今回のケースでも、医師でもある母親は精神科医のエリクソンに相談したにもかかわらず、「息子のニキビ肌を治してほしい」という物質次元の治癒のことしか言っていません。

 

この親子の顕在意識のフォーカスは、息子が受験生のときはハーバード大学合格、ハーバード大生になってからは美しい肌、スキー休暇へと移動したに過ぎません。

 

この母親は、息子のニキビの心配はするのに、クリスマス休暇は独りでスキーに行く気満々だったのです。

 

エリクソンに息子を誘って一緒に休暇を過ごすよう勧められなければ、ニキビと親子関係のほころびが結びついていることに気づかなかったでしょう。

 

この状態ではいつまで経っても、外側の世界の関心事(仕事・お金・社会的ステータス・娯楽など)にフォーカスを向け続け、心の世界にフォーカスを向ける日は来ないでしょう。

 

だから、息子のニキビはなかなか治らなかったのです。

潜在意識(心の世界)にフォーカスを向けさせる役割を果たすまでは。

 

きっとエリクソンは、顏に難治性のニキビがある息子と聞いただけで、この親子の潜在意識の反乱だと気づいたことでしょう。

 

「顔に泥を塗る」とか「顔をつぶす」とかの言い回しもあるくらい、<顔>は外部世界で生き残っていくための強力なアイテムです。

 

その強力なアイテムである<顔>にニキビを発生させて、この親子の潜在意識は内面世界にフォーカスを向けさせようと宣戦布告をしてきたわけです。

 

その結果、親子の共通の悩みであった息子の難治性のニキビのことは忘れ、母は医師の仕事も忘れ、息子は大学の成績のことも忘れ、スキーで遊ぶことだけに集中して親子の楽しい交流の時間を2週間満喫したのです。

 

この間、二人の顕在意識はスキーでうまく滑ることに集中していたのでしょう。

その隙に、かれらの潜在意識は親子の心の絆を回復させ、元の健やかなセルフイメージをそれぞれに構築したのでしょう。

 

パラケルススとエリクソンが言うように、

 

「人が今あるその姿は、自らがそうあると思い描いたもの」であり、「身体の状態は心理的イメージと深い関係」があるのです。

 

何か問題が外の世界(物質次元)で現れたときは、「これは心の世界とどう関連があるのかな?」と考えてみることが顕在意識の過剰な外向きフォーカスを内面に振り向かせる良いチャンスになります。

 

そうして、問題を外部世界と内面世界の両方で手を組み乗り越えていければ、顕在意識と潜在意識が共同創造で楽々超える、幸せな展開が待っています。

 

次回は「エリクソン心理療法<レジリエンスを育てる>」の解説を予定しています。

 

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最後まで読んでくださり、ありがとうございます。