折り返しの電話には、その気持ち悪い喋り方をする年配の男の人が出た。
「あ、お世話になります、◯◯ですけれども」
と名乗ると、
「あの物件はねぇ、あなたには合わないです。ですから今回は見送りします」
「…。は?」
全く意味不明で、▲山の容姿以上に想定外。
困惑しているうちに一方的に電話は切られていた。
「……。」
なんなんだ、このもやもや感。
頭の中がどう動いていいのか、戸惑ってる。
心も、抱くべき感情が定まらなくて、喜怒哀楽のどれを選ぶべきか迷ってる。
もう夕方も遅かったので、一晩悩んだ。
ともかく、納得いかないことは確かだし、名前も聞いてない相手から一方的に言われて終わるのは、なんか違う気がするので、せめて名前を聞いて、理由も聞いて、んで、赤の他人が「あなたに合わない」って宣言するくらいなら、逆説的に捉えるならば、私に合う物件も見つけてもらえるはずだ。
という結論に達した。
翌日、◯◯商事が開く時間を待ち、電話をする。
電話に出たのは天然S子ちゃんで、
「昨日お世話になった◯◯です」
と私が名乗ると、急にパニクったらしく(まさか電話してくると思ってないんだろう)、
「え、今日はどういった用件で…?」
けっこうテンパりつつも、合格点をあげられるくらいの受け答えをしてくれた。
「昨日ですね、帰ったら留守電が入っていたんですよ、この電話を聞いたら電話くれって。で、電話したんです」
「あ、はい」
なんか、さすがのS子ちゃんでも構えてるなってのが、伝わってくるような、警戒心剥き出しの引きつった声。
「で」と、私は続ける。「『あなたには合わない物件だから』と言われたんです。ええ、ですから、それなら私に合う物件をぜひ探してほしいと思いまして」
まあ、ここは演技入ってたけどねw
ポジティブシンキングすぎる奴になりきってみた。
「いや、あの、昨日の緊急会議でですね、あの後、薬を飲んでいる方は、当社で物件は紹介しない方針に急遽決まったんです」
ははは、S子ちゃん、正直すぎるよ。
君はいい人だね。
でも、ごめん、言うことは言わせてね。
「そんなこと、一言も聞いてないですよ、私。『あなたに合わない』ってだけしか聞いてませんから。ですから、赤の他人がそれを言い切れるくらいなら、私にぴったりの物件も紹介してもらえるってことじゃないですか!」
「ええー。いやいや、そうじゃなくて、本当に、昨日、◯◯さんが帰られてから緊急会議を開いて、決めたことなんです」
「そうなんですか。今、それ、はじめて聞きました。留守電が入っていて、すぐに折り返しの電話をしたんですけど、なにせその男性は名乗りもしなかったので、お名前すらわからないんですよね~」
「私はその場にいなかったので、ちょっと…」
S子ちゃん、君はこの仕事、向いてないかもよ。
「だったら、なぜその男性は、その薬のことをはっきりと言わなかったんでしょう? その理由だけで断られたとなると、こちらも色々と言い分が出てきますね」
「あ、あの、私ではこれ以上のことは…。折り返し電話します。いつなら出られますか?」
想定外返しをS子ちゃんにするつもりはなかったので、親切に部屋を案内してくれて雑談も楽しかったS子ちゃんには申し訳なかったけど、ま、電話出ちゃったら、会社背負うものだしな。
「歯医者の予約などを入れていて、ちょっとしばらくバタバタしてるんで、いつ出られるという確証はないです。電話の前で一日中待ってるわけじゃないし、誰だってそうじゃないですか? ともかく、今日はこれから予定がありますので、今日は困ります」
S子ちゃんは相当テンパってたけど、そこからはお決まりのオトナなやりとりをし、電話を切った。
さーて、次はどこの不動産屋さんへ行くかな。
今度は大手にするか。
大手なら、少なくともあんな水商売崩れの接客業をバカにした服装の人はいるわけないし。
と、ネットで問い合わせた物件の中で気に入ったのを絞りこんでいたら、電話がかかってきた。
おいおい、今日は電話に出られないって伝えたのに、さすがS子ちゃん、やってくれるな。
電話をかけてきたのは、ホラーな▲山だった。
S子ちゃんに言ったことと同じことを伝える。
「でも、決まったものは決まったんです。薬を飲んでる人には部屋は貸しません」
ガンと言い張ってくる▲山。
どんな理屈なんだよってツッコミどころは満載だったけど、こいつは気持ち悪いので、S子ちゃんには言えなかったことをぶちまけようと決める。
「その理由で断りの電話を受けてませんけど。ですから、今日も電話をしたんです」
「なにを言われても、あなたに貸す部屋は、あ・り・ま・せ・ん!」
おいおい、わたしゃ客だぞ?
こんな口調で言われたら、思わずプチンともくる。
「ちょっと、なんなんですか、その言い方は」
少しここで声を荒げてしまった。
そしたら。
「ほら、薬を飲んでる人はこれだから! 昨日と全然、人が違うじゃない! やっぱりぃー!!」
▲山、お前は電話をかけてきた瞬間から昨日と人が違ったぞ、お前に言われたかないわ。
プチンが、ブチンになってもうた。
「じゃあなんですか、私が確実に問題を起こすとでも最初から決めつけているわけですか? ドクターからの一筆を求めておいて今さらですか? 世の中にどれだけの人が睡眠薬を飲んでいると思っているんです? 100に近い祖母だって睡眠薬を飲んでますよ。それに、内科でも処方されるんですよ、睡眠導入剤は。そういったこともご存知なんですか?」
思わず、まくしたててしまった。
「だーかーらー、なにを言われても、貸せないものは貸せないんです。なんなの、しつこいわねぇ、謝ればいい? はい、ご・め・ん・な・さ・い。これでいい?」
こいつ、小学生か?
わー、これ以上、いじっちゃイケないタイプだわ、怖い!
起きてるのに、超悪夢なんですけど。
しかし、ここはいっちょ、冷静になる。
小学生レベルを相手にするなら、こっちもそこに合わせないとな。
「全然よくないです。謝られてすむんだったら、警察いりません」
「なぁにぃ~!? 気が済まないって言ってるのはあなただけでしょ。なによ、弁護士とか相談しちゃうわけ? どうぞどうぞ、弁護士でもなんでも、好きにすれば!」
「あ、そうですか。では、好きにしますので。お世話になりました。どうもありがとうございました。失礼します」
さ。
録音されたものを弁護士へ持っていって、意見でも仰ぐか。
(ドコモの法人回線は、全ての通話が録音される設定になっているので、普段は気にしてないけど全会話が記録されている)
まあ、またセンセには、
「バカは、ほっといたら?」
って言われて終わるかもしれないけど。
ともかく、文書にしたものは送りつけるね。
それは、気持ちの整理なので、やる。
良かったな、実はあの部屋、全然気に入ってなかったw
それに、あんなのと今後一切、関わりたくないし。
それがわかっただけでも良かった、良かった。
世の中のがんばってるみなさん、がんばってないみなさん、変な不動産屋もいるんで、不動産屋相手に薬を飲んでるとか言う義務ないですから、そこはさらっと「なんのことですか?」と流したほうが得策ですよー。
って、まあ、まさか推定55歳の金髪クリクリ巻き髪が裏から出てくることって、まずないよね!
やっぱり、人は、ある程度歳がいったら、見かけも判断材料だなと思う。
良いお勉強になった出来事でした。
ちゃんちゃん。
※普段はフィクション書いてますけど、これはノンフィクションです
iPhoneからの投稿
「あ、お世話になります、◯◯ですけれども」
と名乗ると、
「あの物件はねぇ、あなたには合わないです。ですから今回は見送りします」
「…。は?」
全く意味不明で、▲山の容姿以上に想定外。
困惑しているうちに一方的に電話は切られていた。
「……。」
なんなんだ、このもやもや感。
頭の中がどう動いていいのか、戸惑ってる。
心も、抱くべき感情が定まらなくて、喜怒哀楽のどれを選ぶべきか迷ってる。
もう夕方も遅かったので、一晩悩んだ。
ともかく、納得いかないことは確かだし、名前も聞いてない相手から一方的に言われて終わるのは、なんか違う気がするので、せめて名前を聞いて、理由も聞いて、んで、赤の他人が「あなたに合わない」って宣言するくらいなら、逆説的に捉えるならば、私に合う物件も見つけてもらえるはずだ。
という結論に達した。
翌日、◯◯商事が開く時間を待ち、電話をする。
電話に出たのは天然S子ちゃんで、
「昨日お世話になった◯◯です」
と私が名乗ると、急にパニクったらしく(まさか電話してくると思ってないんだろう)、
「え、今日はどういった用件で…?」
けっこうテンパりつつも、合格点をあげられるくらいの受け答えをしてくれた。
「昨日ですね、帰ったら留守電が入っていたんですよ、この電話を聞いたら電話くれって。で、電話したんです」
「あ、はい」
なんか、さすがのS子ちゃんでも構えてるなってのが、伝わってくるような、警戒心剥き出しの引きつった声。
「で」と、私は続ける。「『あなたには合わない物件だから』と言われたんです。ええ、ですから、それなら私に合う物件をぜひ探してほしいと思いまして」
まあ、ここは演技入ってたけどねw
ポジティブシンキングすぎる奴になりきってみた。
「いや、あの、昨日の緊急会議でですね、あの後、薬を飲んでいる方は、当社で物件は紹介しない方針に急遽決まったんです」
ははは、S子ちゃん、正直すぎるよ。
君はいい人だね。
でも、ごめん、言うことは言わせてね。
「そんなこと、一言も聞いてないですよ、私。『あなたに合わない』ってだけしか聞いてませんから。ですから、赤の他人がそれを言い切れるくらいなら、私にぴったりの物件も紹介してもらえるってことじゃないですか!」
「ええー。いやいや、そうじゃなくて、本当に、昨日、◯◯さんが帰られてから緊急会議を開いて、決めたことなんです」
「そうなんですか。今、それ、はじめて聞きました。留守電が入っていて、すぐに折り返しの電話をしたんですけど、なにせその男性は名乗りもしなかったので、お名前すらわからないんですよね~」
「私はその場にいなかったので、ちょっと…」
S子ちゃん、君はこの仕事、向いてないかもよ。
「だったら、なぜその男性は、その薬のことをはっきりと言わなかったんでしょう? その理由だけで断られたとなると、こちらも色々と言い分が出てきますね」
「あ、あの、私ではこれ以上のことは…。折り返し電話します。いつなら出られますか?」
想定外返しをS子ちゃんにするつもりはなかったので、親切に部屋を案内してくれて雑談も楽しかったS子ちゃんには申し訳なかったけど、ま、電話出ちゃったら、会社背負うものだしな。
「歯医者の予約などを入れていて、ちょっとしばらくバタバタしてるんで、いつ出られるという確証はないです。電話の前で一日中待ってるわけじゃないし、誰だってそうじゃないですか? ともかく、今日はこれから予定がありますので、今日は困ります」
S子ちゃんは相当テンパってたけど、そこからはお決まりのオトナなやりとりをし、電話を切った。
さーて、次はどこの不動産屋さんへ行くかな。
今度は大手にするか。
大手なら、少なくともあんな水商売崩れの接客業をバカにした服装の人はいるわけないし。
と、ネットで問い合わせた物件の中で気に入ったのを絞りこんでいたら、電話がかかってきた。
おいおい、今日は電話に出られないって伝えたのに、さすがS子ちゃん、やってくれるな。
電話をかけてきたのは、ホラーな▲山だった。
S子ちゃんに言ったことと同じことを伝える。
「でも、決まったものは決まったんです。薬を飲んでる人には部屋は貸しません」
ガンと言い張ってくる▲山。
どんな理屈なんだよってツッコミどころは満載だったけど、こいつは気持ち悪いので、S子ちゃんには言えなかったことをぶちまけようと決める。
「その理由で断りの電話を受けてませんけど。ですから、今日も電話をしたんです」
「なにを言われても、あなたに貸す部屋は、あ・り・ま・せ・ん!」
おいおい、わたしゃ客だぞ?
こんな口調で言われたら、思わずプチンともくる。
「ちょっと、なんなんですか、その言い方は」
少しここで声を荒げてしまった。
そしたら。
「ほら、薬を飲んでる人はこれだから! 昨日と全然、人が違うじゃない! やっぱりぃー!!」
▲山、お前は電話をかけてきた瞬間から昨日と人が違ったぞ、お前に言われたかないわ。
プチンが、ブチンになってもうた。
「じゃあなんですか、私が確実に問題を起こすとでも最初から決めつけているわけですか? ドクターからの一筆を求めておいて今さらですか? 世の中にどれだけの人が睡眠薬を飲んでいると思っているんです? 100に近い祖母だって睡眠薬を飲んでますよ。それに、内科でも処方されるんですよ、睡眠導入剤は。そういったこともご存知なんですか?」
思わず、まくしたててしまった。
「だーかーらー、なにを言われても、貸せないものは貸せないんです。なんなの、しつこいわねぇ、謝ればいい? はい、ご・め・ん・な・さ・い。これでいい?」
こいつ、小学生か?
わー、これ以上、いじっちゃイケないタイプだわ、怖い!
起きてるのに、超悪夢なんですけど。
しかし、ここはいっちょ、冷静になる。
小学生レベルを相手にするなら、こっちもそこに合わせないとな。
「全然よくないです。謝られてすむんだったら、警察いりません」
「なぁにぃ~!? 気が済まないって言ってるのはあなただけでしょ。なによ、弁護士とか相談しちゃうわけ? どうぞどうぞ、弁護士でもなんでも、好きにすれば!」
「あ、そうですか。では、好きにしますので。お世話になりました。どうもありがとうございました。失礼します」
さ。
録音されたものを弁護士へ持っていって、意見でも仰ぐか。
(ドコモの法人回線は、全ての通話が録音される設定になっているので、普段は気にしてないけど全会話が記録されている)
まあ、またセンセには、
「バカは、ほっといたら?」
って言われて終わるかもしれないけど。
ともかく、文書にしたものは送りつけるね。
それは、気持ちの整理なので、やる。
良かったな、実はあの部屋、全然気に入ってなかったw
それに、あんなのと今後一切、関わりたくないし。
それがわかっただけでも良かった、良かった。
世の中のがんばってるみなさん、がんばってないみなさん、変な不動産屋もいるんで、不動産屋相手に薬を飲んでるとか言う義務ないですから、そこはさらっと「なんのことですか?」と流したほうが得策ですよー。
って、まあ、まさか推定55歳の金髪クリクリ巻き髪が裏から出てくることって、まずないよね!
やっぱり、人は、ある程度歳がいったら、見かけも判断材料だなと思う。
良いお勉強になった出来事でした。
ちゃんちゃん。
※普段はフィクション書いてますけど、これはノンフィクションです
iPhoneからの投稿
