アルツハイマー再考~その1 | 老年科医の独り言

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認知症治療にかかわって30年目になります。
今回心機一転、題名を変更して、ぼつぼつ書いていきたいと思います。

βアミロイドの沈着は、アルツハイマーの発症・進行と無関係

 と言ったら、みなさんは驚かれますか?

確かに脳内のβアミロイドの沈着は、アルツハイマーを起こした方に起こる事は事実です。でも原因では無いんです。

 

脳内にアミロイド前駆タンパク(APP)が作られるようです。通常は、αセクレターゼで無害化されるのですが、アルツハイマーの脳内では、βセクレターゼで水溶性アミロイドが作られるようです。更にγセクレターゼでβアミロイドとなり脳内に老人斑として蓄積していきます。

水溶性アミロイドが強い神経細胞毒性を示すようです。βアミロイドは脳に対しては無害だと言う事のようです。

βアミロイドは、脳内にアルツハイマーを起こさせる変化があった証拠ではありますが、直接の原因ではないと言うことです。

これは、専門家の間では、周知の事実のようです。しかし未だにマスコミには、βアミロイド云々と言う文字が散見されます。

アルツハイマーがβアミロイドで発症していないと困る人々がいると思えてなりません。

 

最近、βアミロイドと同様に、PET検査を用いてタウタンパクを描出する方法が確立されました。それを用いたアルツハイマーの脳内の変化を検証した専門家は、アミロイドの沈着とアルツハイマーは無関係とまで言い出しています。

現在アルツハイマー発症の大きな原因は、海馬の障害だと考えられています。そう考えると、海馬にはベータアミロイドよりタウ蛋白が蓄積している事実から、前記のような考えに成ったようです。

これは、少し慎重に検討する必要が有ります。

 

次回にアルツハイマーに起こる短期記憶障害について検証してみたいと思います。