僕と順平とサトちゃんは、
そうして少しづつ
弁当製造工場の仕事に慣れていきました。
もう、引越しのための費用は
溜まっていましたが、
当時としては給料もよく、
ずっとやる仕事じゃないと思いつつも、
しばらくの間、
ここで仕事をし続けるのです。
前にも少し触れましたが、
ここで働く人たちについて、
もう少し話しておきます。
まず、工場直属で
おそらく正社員の方たちがいます。
例えば100人で
深夜まるまる稼動しているとして、
社員は1名か2名です。
どんな人たちだったかは
ほとんど知りません。
ヒエラルキーの頂点は霧がかかっていて、
僕らにはまるで見えません。
たぶん中年のおじさんたちだったと思うんですが、
開始時の挨拶とかで
見かけたくらいです。
次に工場直接雇用のパート社員の方です。
ここに、
ラインを仕切ったりする
おばちゃんたちが属しています。
実質的には、
彼女達が作業を仕切っています。
僕らとはシフトが違うようで、
夜9時の開始時にはすでにいましたし、
朝は5時前には帰って行きました。
僕が落ちた容器を
手で取ろうとしたときに注意したり、
仕込み部屋に割り振る指示をしたのは、
この人たちです。
このおばちゃんたち、
結構露骨に僕らを差別していました。
まあ、人によるんでしょうが、
とにかくてきぱき仕事が出来ないと、
舌打ちされたりします。
手伝ってはくれます。
それで僕が、
すいません、ありがとうございます、
なんて言っても、
まともに返事なんて
返ってきたことはありませんでした。
彼女たちにとっては、
手伝う行為は、助力じゃなくて、
ラインを停めないための方策でしかないんでしょうね。
この直雇のおばちゃんの次、
カーストの3番目が、
派遣リーダーの野田さんたちです。
厳密には派遣会社の
社員さんたちだったかと思います。
ここも少数人で、
おばちゃんや工場社員とも直接口を聞いて、
主にラインの上流か、
機械をいじるような仕事をしているようでした。
そして、
その下層ということで、
僕らが位置します。
工場から発注された
派遣会社の労働者ってわけです。
30~40人いたんじゃないでしょうか。
ほとんどが20代から30代前半の
同年代の男です。
深夜だったのもあってか、
女の子は1人もいません。
ちょっと年配の男性がいると、
長距離のトラックの運転手で、
免停中の間に働いているとか、
一時的にやってるって感じでした。
僕らは最大の人員数でしたが、
ほとんど最下層でしたし、
まあ、あまりそれを
意識していたわけもなく、
若いのもあって、
休憩室で騒いで注意されたり、
のらりくらりとバイトしてる、
そんな連中がほとんどでした。
学生もあまりいなかったと思います。
深夜で昼とは完全に真逆なので、
さすがに学校通いながらはなかったんでしょう。
要は、
みながフリーターです。
フリーターは、職種ではないので、
つまり、
特になにも目標もなく、
就職もできず、
今後の社会では
特に役に立つわけでもない、
こうした単純作業をして、
生活費と遊興費を稼いでいたに過ぎない、
そういう集まりでした。
僕は何も単純作業がだめって言ってるわけじゃありません。
ただ、こうした作業は、
今後に何か技術や知識を習得するというのは、
ほど遠いんじゃないかって思っているだけです。
最近の骨太政策で、
就職氷河期時代の人の、
正社員率なんてのを
数値化していました。
それによれば、
この対象世代は、
まだ30%以上の人が、
有期限の雇用をされているといいます。
あの頃のフリーターの連中、
僕と同年代ですから、
今では30後半から40代にさしかかってるわけです。
まさに、就職氷河期世代なんです。
僕は、
何も無期雇用が
絶対正しいって思ってるわけじゃないですが、
戦後の日本人が、
当然のように終身雇用で、
社会的安定を手に入れようとしていた価値観からすると、
それは社会から逸脱したものと、
思われたりしているわけです。
家が近かったり、
年代も同じなのもあって、
そこで知り合った連中とは、
その後何年も
仲良くしていた人もいます。
これを書いていて、
ふと、あれから20年近く経って、
みな、どうしているんだろうと考えていました。
もちろん当時の僕には、
はっきりとした社会への不安はありませんでした。
きっと連中もそうだったと思います。
体はいつも充溢していて、
少々無理しても、
翌日にはぴんぴんして、
適当に楽しんで、適度に仕事して、
なんとかなるもんでした。
そんな中で、
微妙に、社会には階層があるってことと、
人生の享楽は
ずっと続くものじゃないってことが、
ほんとうにかすかに、
目を凝らして、
ようやく少しだけ見えているようなものでした。
僕はこうした環境の中で、
小説を書くことを
志しはじめていたわけです。
プロジェクト348日目。
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<span style="color:#ff0000;"><strong>2019/6/22 348日目</strong></span>
■kindle 本日0冊 累計75冊 達成率0.71%
■文学賞公募作品の執筆状況 1作目半分くらい ※まだ賞は未定
■kindleアップのため『桜の闇』を推敲中
158ページ中50ページくらい了
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『僕を知らない君へ』オープニング 1日目
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