田んぼの中の道を走ります。
もはや宇佐美くんとの
一騎打ちの様相をていしてきました。

半袖半ズボンです。
汗が噴き出して、
体をほてらせます。
小刻みに揺れる宇佐美くんの細い背中に、
僕はまるで覆い隠れるみたいにして、
ひたすら走り続けました。

宇佐美くんは相当僕を気にしていました。
僕には彼の姿は見えているのに、
彼にはただ
足音が聞こえるだけだからです。

田んぼの一本道は、
目に見えるような、大風が身体をくぐる抜け、
去ってはまた吹いてきます。
ほてっていく頬に、
冷気がひたひたと触れていきます。

宇佐美くんは全然ペースを下げず、
いやむしろ加速して、
足を速めていきました。
僕は遅れをとらぬよう、
必死にくらいついていきます。

眼前にこんもりとした杉林が見えてきます。
学校はもうすぐです。

校舎の裏門から入って、
あとはトラックを半周すれば、
4キロマラソンのゴールです。
あと少しです。

また、サンバイザーおじさんの声が、
よみがえってきます。

どこかで彼を抜き去るんです。
あとは全速力で走り抜ければよい、
僕はその好機を、
校門に入った瞬間と見定めました。

そして、
用水路の小さな石橋を渡ると、
校門の前で僕は一気に足を加速させていきました。

「あ」
一言、宇佐美くんが言った気がしました。
僕はその声を背中に聞きながら、
もうあとは、
無我夢中で走り続けます。

足はもう、
自分のものじゃないみたいで、
勝手に前へ前へと進んでいきます。
力いっぱい蹴りだせば、
もう宙を浮いて飛んでいくみたいです。

先に駆けっこを終えている、
女子たちの歓声が聞こえてきました。
僕はそれを潜り抜けて、
トラックへと入っていきます。
もう、後ろも全く気になりません。
たぶん、宇佐美くんとはだいぶ距離が開いていました。

そして、
まだ誰の足跡もない白線を越えていきました。
練習とはいえ、とうとう、
1位でゴールしたのです。

 

プロジェクト408日目。

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<span style="color:#ff0000;"><strong>2019/8/21 408日目</strong></span>
■kindle 本日0冊 累計75冊 達成率0.71% 
■文学賞公募作品の執筆状況 1作目半分くらい ※まだ賞は未定
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 158ページ中50ページくらい了
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『僕を知らない君へ』オープニング 1日目
https://ameblo.jp/levelbooks/entry-12445434453.html

 
 

少し駆けっこについて触れます。
僕は子供の頃から
足が速い方でした。
それは、長距離でも短距離でもです。

運動会では
いつもクラス代表でしたし、
マラソン大会も
1位か2位といったところ、
とにかく早かったんですが、
それでもいつも
ずば抜けていわけじゃいんです。

マラソン大会の前になると、
よく朝練と称して、
走ったりしていました。


そんな中で、
あのサンバイザーおじさんの言葉です。

僕はマラソン大会前の
学年練習の時に、
彼の言っていたことを
実践することにしました。

その頃、
よく競っていたのは、
2組の宇佐美くんと多田くんでした。
僕は最初のトラックでは
先頭集団に入れませんでしたが、
学校の敷地を抜けて、
田舎の一本道にさしかかる時には、
前方を走る彼らを視界にとらえていました。

いつもならここで、
がむしゃらに彼らを抜きにかかるか、
体力が続かなければ諦めるばかりです。

しかしこの日は、
いきなり加速して、
彼らの後ろに
ぴったりとつけました。
2人の後ろに並ぶ感じで、走り続けます。
2人ともちらちら僕を見ました。
抜かないが、
離れていくわけでもなく、
僕がうしろにくっついているからです。

田舎の田んぼ道は、
やがて麦畑の
だんだら坂になっていきます。
緩やかな坂ですが、
長距離走り続けていると、
徐々に足に負担を重く感じます。
僕は冷気を
大きく肺に吸い込みながら、
ざっざという彼らの足音を
追いかけていきます。

サンバイザーおじさんの言うとおりだ。
宇佐美くんと多田くんの背中が、
風をよけているような気がします。

坂は杉木立のあたりを頂点にして、
今度は下り坂にかわっていきます。
そのへんで、
多田くんが少しづつ遅れてきます。
彼の背中にぴったりとついていた僕は、
見切りをつけ、
先頭を走る宇佐美くんの背中につきました。

手を伸ばせば、
触れられるくらいの距離を走ります。
ややもすると追い抜けそうな
彼の背中を見つめながら、
そのタイミングをうかがっていました。

 

プロジェクト407日目。

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<span style="color:#ff0000;"><strong>2019/8/20 407日目</strong></span>
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『僕を知らない君へ』オープニング 1日目
https://ameblo.jp/levelbooks/entry-12445434453.html

「お前さあ、学校で一番なのか?」
サンバイザーおじさんは、
尻もちついたままの
僕を見下ろして言います。
僕はまだ荒い息を吐きながら、
「一番になるときもある」
と正直に答えました。
おじさんは、
「じゃあ一番じゃないってこともあるんだなあ」
僕はようやく立ち上がり、
お尻の砂をはたきながら、
「まあ、いっつも一番なんて難しいよ」
と答えました。
じいっと、あのギョロ目が僕を見ています。
「なに?」
僕は黙って見られるのが怖くなって、
たまらず聞きました。
「いやな、今な、」
おじさんは腕を組むと、
白み始めている雲に目をやり、
「お前のおでこ見てたんだよ、
俺なあ、顔見れんだよお、
お前さあ、顔相って知ってるかあ」
「がんそう…」
「そうだよ、顔見てな、未来を予言するんだ、
お前のな」
「え…」
僕は思わずうっすらと汗ばんでいる、
自分のおでこを手で覆いました。
「もうちっと見せろよお」
彼の顔がぐぐっと近づいてきます。
僕はもう身動きもせず、
男がおでこを嘗め回すように見るのに
身を任せました。
「いい形だなあ、ひいでてる」
男はそのごっつい指で、
僕のおでこをなぞりました。
「真ん中がぽこっと出てるだろう、
こりゃあ前頭葉が発達してんだよ、
創意工夫な、創造力が高いんだよ」
僕は彼に触れられてぞっとしながらも、
その言葉を聞き続けました。
当時の僕には難しい言葉ばかりで、
言っている意味は
よくわからなかったと思います。

まあ、とにかく、
僕のおでこは
中央で少しぷっくりと盛り上がっているのです。
子どものころ、
少しだけ気にしたこともありました。

「今度はいつ駆けっこあるんだ?」
男はようやく顔を離すと、
僕から目を離さずに言いました。
冬の時期です。
年明けには小学校で恒例のマラソン大会があり、
近づくと、
毎週のように予行練習があったのです。
「来週の火曜…」
僕は答えました。
サンバイザーおじさんは、
大きく何度もうなずき、
「いいか、一位ってのは、最後になればいいんだ、
途中は何位でもいいんだ、
風の抵抗をよ、受けないように走るんだ、
その方が、力も温存できるし、楽だからな、、」
なんだか、とても意味のあることを言っている、
そう感じた僕は、
素直にその話に聞き入りました。
おじさんは続けて、
「ともかくよ、途中までは、
2番で走るんだ、1位のやつのよ、背中にぴったりつけてな、
それで風よけて走るんだ、いいな、」

実はここ最近の予行練習で、
僕はいつも3位か4位でした。
本番で1番を狙うつもりはもちろんありましたが、
予行練習でも、
1等賞をとってみたいとは思っています。
僕は大きくうなずきました。

川の上、団地の方に、カブのエンジン音がします。
母が迎えにきたのです。
僕は彼に背中を向けると、
小さな土手を足早に駆け上がっていきました。
 

プロジェクト406日目。

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<span style="color:#ff0000;"><strong>2019/8/17 406日目</strong></span>
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『僕を知らない君へ』オープニング 1日目
https://ameblo.jp/levelbooks/entry-12445434453.html

風はなく、
早朝の陽の上がる前の、
ピンと張りつめて冷え切った空気が、
周囲を包んでいます。

その空気を、小刻みに震わせて、
男の声が、がらんどうとした踊り場に広がりました。

「お前、駆けっこ早いんだろう?」
「はい」
僕の声は震えていました。
「学校で一番か?」
「はい…」
本当は学年で1番だったり2番だったり、
時には6番だったこともあったけど、
僕はそう答えました。
「俺もなあ、昔は速かったぞお、」
「…」
「駆けっこだよ、お前より速かった」
男はそういうと、
ぐぐっとサンバイザーのつばを
上げて見せました。
そのとたん、
やつの顔がくっきりと見えます。

男の目のふちは、
幾重にも皺が重なっていて、
瞳は少し前に出て見えます。
ぎろりと、睨んでいるようなのです。
僕はそれでまた怖くなって、
半歩後ろに下がりました。

「勝負するか?」
「しょうぶ?」
喉の奥にかさかさした冷気を感じます。
「そうだよお、駆けっこ、おら、」
すると、男はコートをバッと脱ぎ捨てました。
僕は仰天して、
さっと背中を向けると、
5階に向かっていかなきゃならない新聞を抱えて、
走り始めていました。

「おらあ、待てよお」
間延びした声のわりに、
すごいスピードで男が追いかけてきます。
僕は駆け足には自信があったのです。
幼いころから、
常に代表選手に選ばれていました。

6号棟の周囲から飛び出して、
裏の河原にさしかかりました。
草むらの中にある小道を走り続けます。
男はぐんぐん近づいてきて、
とうとう僕の肩に手をかけました。

そのまま、
2人地面に転がりました。
すぐに立ち上がったのは、
サンバイザーおじさんです。
僕ははあはあ荒い息を吐きながら、
観念して彼を見上げました。

空は薄っすらと白み始めています。
日の出の時間になって、
急速に冷え込んできていましたが、
体はほてって汗ばんでいました。

「追いついたぞお、俺のが速いな」
影になってよく見えない男の口が、
そう言って動いています。
男は屈みました。
僕はそのぎょろッとした目が見たくなくて、
口を喘がせながら、
そっぽを向きます。
「俺こわいか?」
僕はもう観念しているのです。
白み始めた
薄水色の雲に覆われた空をにらみながら、
「こわくなんかない」
そう答えていました。

 

プロジェクト405日目。

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<span style="color:#ff0000;"><strong>2019/8/16 405日目</strong></span>
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『僕を知らない君へ』オープニング 1日目
https://ameblo.jp/levelbooks/entry-12445434453.html
 

姉から、
サンバイザーおじさんの話を聞いていると、
なんとなく

うなずけるところもあるのです。

女の子は恋愛と、
その行方を占うことに
一喜一憂するのが大好きです。
姉たちの間では、
サンバイザーおじさんが、
恋愛が成就するか否かを占ってくれて、
それが当たるんだといいます。

「ほんとなのそれ?」
僕は聞きます。
姉は楽しそうに、
「だってその後

すぐ仲良くなってたから、
占い通りだって、

みんな騒いでたんだよ」
「ふ~ん、」
小学5年の僕は、
恋愛には全くといっていいくらい、
まだ興味がなく、
そうしたことには関心が湧きません。
ただ、今の時間の、
その先を見通してくれるという、
それが少し気にかかっていました。

サンバイザーおじさんは、
あの古ぼけた団地の1階の踊り場に、
いたりいなかったりします。

僕は毎朝朝刊を配り、
彼がいるであろう場所に
気を配るんですが、
いないときもあるわけです。
そんな時は少しほっとして、
歩を緩めると、
いつもいる場所あたりの

暗がりに目を向けます。
それで本当にいないとわかると、
また階段を駆け上がっていくわけです。

とにかく、
一度話しかけられてからは、
特に警戒していました。
ますます季節は真冬に近づいて、
配達の時間は暗くなります。
いつも電灯は切れそうに
弱弱しい光を明滅させていました。
モルタルの壁は薄汚れてひび割れ、
黒々としたしみが
奇怪な模様を作り出しています。

だいたい、こんなところに、
一晩中うずくまる男の神経などしれません。
得たいの知れないことが、
とにかく恐怖なのです。

時には姉の話を思い出して、
本当はコミカルなおじさんなんじゃないかって、
そう自分に

言い聞かせたりもしていました。

そしてとうとう、
2度目の衝撃の日が訪れます。

おじさんは、

またも僕の足音を聞きつけ、
がさがさっと立ち上がりました。
厚手のコートに、

サンバイザーをしています。

僕はびくつきながら、
新聞を握りしめたまま、
その場に立ち止まりました。
「お前、駆けっこ早いなあ」
おじさんは野太いざらついた声で、
僕を見下ろして言いました。

 

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<span style="color:#ff0000;"><strong>2019/8/17 404日目</strong></span>
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『僕を知らない君へ』オープニング 1日目
https://ameblo.jp/levelbooks/entry-12445434453.html

「小学5年生はサンバイザーしない?」
僕ははじめ、
男の言葉の意味が
咄嗟にはわかりませんでした。
だから口をあえぐようにしながら、
黙っていたんですが、
おじさんはぐぐっと近づいてくると、
「だからさあ、サンバイザーだよお、
みんなするう?」
僕はそれで、首を何度も横に振りました。
「そっかあ、しないのかあ」
襟の大きなコートにサンバイザーです。
どう考えてもおかしな恰好でしょう、
僕はもう耐えられなくなって、
背中を向けると
一目散にその場を立ち去っていきました。

怖いという印象よりも、
ただただもう、わけが分からないなって
思っていたんです。

帰り道では、
母には何も言いませんでしたが、
その日の夕方だったか、
もう中学1年だった
姉に話してみたのです。
姉は目をまん丸くして最初は驚いて、
それからけらけら笑いながら、
「ああ、知ってる知ってる~、
サンバイザーおじさんでしょ?
夏でも冬でもサンバイザーしてて、
団地の近くで出没するんでしょお」

サンバイザーおじさんは、
近隣では結構な有名人でした。

「わたし知ってるよお、
あの人さあ、
あの辺の公園にいっつもいて、
占いとかしてくれんだよね、
家はやっぱ団地なんだね」
「うらない?」
「うん、なんかベンチ座っててね、
子ども来ると占ってくれるって、」

姉が言うには、
小学生の頃、
友だちが何人か占ってもらったって話です。
「それがさ、すっごい当たるんだって、
みきちゃん(姉の同級生)がね、
公園で遊んでたら、
サンバイザーおじさんがおいでおいでって、
手招きしてんだって、」
姉はさも噂話をするように、
ちょっと楽しそうに話しています。
「それで呼ばれてさ、
いきなりおでこのあたり見てて、
お小遣い増えるなあって言ってきてね、」
「言ってきて?」
僕も身を乗り出します。
「ほんとにしばらくしたら、
お小遣い増えたんだって!」

なあんだ、て顔を僕はして、
「そんなの当たるよ、別に…」
「そおかなあ、みきちゃん、
全然小遣い上がってなかったんだから、
それが言われてから急にだよお」
「そんなもんかな…」
ちょっとがっかりです。
僕はおじさんへの恐怖とともに、
少し神秘的なこと
期待していたみたいです。

そして、
また明日の朝、
あいつに会うことを考えると、
一つ身震いしました。

 

プロジェクト403日目。

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『僕を知らない君へ』オープニング 1日目
https://ameblo.jp/levelbooks/entry-12445434453.html

男でした。
まだ暗がりの中で、
眼ばかりが光って見えました。

僕は階段上から、
踊り場で佇むその男を見つけ、
目が離せなくなりました。
そのまま、階段を降りていきます。

僕より少しばかり背が高い、
中年らしい年齢の男です。
横幅が広くて、
薄汚れた黒地のオーバーのようなものを
はおっています。
なぜか、この冬の季節に似つかわしくない、
薄茶色のサンバイザーを、
ぼさぼさで強張ってみえる
髪の上にかぶっていました。

僕は彼の前をやみくもに走り過ぎようと、
階段の途中から助走をつけて、
走り出していました。

「おい待てよ」
間延びした野太い声で
呼び止められました。
僕はそれで立ち止まると、
その場にたたずみ、
男に振り返りました。

実際、震えるほどびびりましたが、
僕はなんとか持ちこたえ、
彼を見上げます。
「兄ちゃん、今何年生だ?」
喉の奥にざらついた感じのする声です。
僕は、
「小学5年」
と、言葉少なに答えます。
「そうかあ」
男はそう言うと、
自らの髪をかきむしるようにしながら、
「どこの学校?」
僕は彼の質問に、
通っていた学校の名を言うと、
「ほうかほうかあ、俺もあそこだった」
と、男は大きく何度もうなずきました。
顔の下半分は、
ぼうぼうの髭に覆われていて、
口を開くたびに、
黄ばんだ乱杭歯が見え隠れします。

男は、少しかがんで、
僕に目線をあわせると、
「小学5年は、サンバイザーする?」
「へ?」
「だからあ、小学5年って、
サンバイザーするかあ?」
男は自らの被っている
サンバイザーの
つばに手をかけながら、
「俺はさあ、サンバイザーしてんだよ、
小学生するのお?」
僕はきょとんとして、
逃げ出しそうな足を必死に堪えて、
首をやみくもに横に振りました。

これが、
サンバイザーおじさんとの出会いです。

 

プロジェクト402日目。

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『僕を知らない君へ』オープニング 1日目
https://ameblo.jp/levelbooks/entry-12445434453.html

踊り場の階段下に
うずくまっていたのは人間だと気づいても、
しばらくはそのままでした。

僕は配達があるので、
毎日そこを通るのですが、
そいつは毎日います。

いったい何をしているんだろう、
そうも考えました。
ほとんど動きもしないので、
酔っぱらって寝ているんだろうか、
そんなふうにも思っていました。

そのうち、
どんどん日が短くなって、
配達の時間は
薄暗い日の出前になっていきます。
そいつは、まだいます。
まだ、というか、
いつも同じ場所で、
同じ格好して、
うずくまっているのです。

母にはなぜか言えませんでした。
ただでさえ、
6号棟は怖いって話をしたことがあったので、
いろんなことに怯えてるようには、
思われたくありませんでした。

ただ、ある日の帰り、
バイクの後ろに乗りながら聞いたことがあります。
「ねえ、6号棟って、人住んでる?」
信号で停まっていた時です。
母は、メットの中からくぐもった声で、
「なに言ってんの?新聞配ってるでしょ、」
「そうなんだけど、あんま人気ないし、
なんか人住んでなさそうな感じだし」
「怖いの?まあた、お化け屋敷みたいとか言うの」
と笑って、
あんまり取り合ってくれませんでした。

僕は身震いしました。
そして、
ますます毎朝の
6号棟の配達がいやになっていました。

冬が近づいて、
さらに日が短くなって、
もはや配達の早朝時間は、
夜のように暗くなっていました。

そんな時です。
入り口から猛ダッシュして、
踊り場を走り去るとき、
あいつが、ついに立ち上がったのです。

僕は驚きながら、
逃げるように階段を駆け上がりました。
心臓が高鳴ります。
5階のポストに新聞を投函すると、
おそるおそる、
階下へと降りていきます。
1階を階段からのぞきこむと、
あいつは立ち上がり、
僕より先に、こっちをじっと見ていました。

 

プロジェクト401日目。

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『僕を知らない君へ』オープニング 1日目
https://ameblo.jp/levelbooks/entry-12445434453.html

それは、
小学5年の晩秋のことでした。

僕は新聞配達を続けています。

夏の終わりくらいから、
あることが気になっていたのです。

団地の中でも、
一番端にある6号棟は、
運河に近く、
他の号棟から
少し離れたところにあります。

そして、建物自体が、
なぜか古びていて、
おそらくリフォームなんかが遅れていたのか、
モルタル壁にひびが入り、
庭木も生い茂っていました。

ここだけ、
取り残されたような建物なのです。

僕は子どもらしく、
なんとなく薄気味悪い感じを
覚えていました。
幸い、
ここで新聞をとっている人は少なくて、
3つある階段のうちの2つ、
1つは1階で、もう1つは最上階の5階、
合計2件に配るだけでした。

朝はまだ暗いのですが、
電灯はいつも切れそうで、
薄暗いほのかな明かりが、
消え入りそうに
明滅しているばかりです。

僕は怖くて、
できればここだけ配らないで、
新聞を投げ捨ててでも
帰りたいと思っていましたし、
一度などは、
本当に真っ暗だったので、
1階にある集合ポストに新聞を入れて
済ましてしまったこともあります。
ところがその時は、
配達屋にクレームの電話がきて、
母から注意されていました。

もう、
とにかく猛ダッシュです。
新聞を手にして、
階段を一気に駆け上がり、
投函すると
転げ飛ぶように脱出します。

ところが、
この晩秋の日、
僕の恐怖心は
倍加することになります。
実は夏の終わりから、
なんとなく気になっていたんですが、
1つめの入り口の1階踊り場に、
人がうずくまっているのです。

最初は、なにか大きな物?
粗大ごみ?
と思ったんですが、
これが毎日なので、
僕はそれが、
ようやく人であることに、
数日後に気づきました。

僕が駆け上がっていくと、
がさっと動いたのです。
僕はびくっとして、
その場に立ち止まりました。
が、また一気に階段を駆け上がり、
とにかく5階の部屋に新聞を投函してきます。

戻ってきて、
おそるおそる下をのぞき込みます。
たしかに、
人のようです。
まん丸い背中が
うずくまって見えました。

 

プロジェクト400日目。

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<span style="color:#ff0000;"><strong>2019/8/13 400日目</strong></span>
■kindle 本日0冊 累計75冊 達成率0.71% 
■文学賞公募作品の執筆状況 1作目半分くらい ※まだ賞は未定
■kindleアップのため『桜の闇』を推敲中
 158ページ中50ページくらい了
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kindleでは「セノイピープル」「バスストップ」「悲しきウスバカゲロウ」が読めます→
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『僕を知らない君へ』オープニング 1日目
https://ameblo.jp/levelbooks/entry-12445434453.html

母が毎朝新聞配達を請け負っていたのは、
戸数にして、
大体250件くらいだったかと思います。
そのうち集合団地が50件くらい、
それを僕が手伝っていたわけです。

よく人からは、
お母さんのお手伝いして毎朝えらいね、
なんて言われてましたが、
実際のところは
毎月5000円も駄賃をもらっていたので、
僕的には手伝っているような
気分じゃありませんでした。
いい小遣い稼ぎだと思ってたくらいです。

小学生の僕にとって、
月5000円はかなりの大金です。
何に使ったのか、
よく覚えてませんが、
それは相当な収入でした。

それはそうと、
母の収入は、
いくらくらいだったんでしょうか、

毎朝の配達が、
仮に10,000円だとしたら、
月25日くらいやって、25万円、
そのうちの5000円が僕の収入です。

戸数が250なので、
1戸あたり、40円、
僕が担当していた団地は50戸ですから、
本当は1日2000円、
月にすれば、5万円ですね、

もちろん団地は
配達先が並んでいたので、
完全に単価では比較できないものの、
その10分の1しか
貰っていなかったんですから、
まあ、わりのいいアルバイトって
わけじゃなかったようです。

ただたんたんと手伝っていました。
母を助けるって気持ちも
特になかったのは、
さっきも言ったとおりです。

ただただ早朝の団地界隈を走り回って、
ひとりラップタイムを意識しながら、
新聞をポストに投函していました。
足腰は相当鍛えられたとは思います。
階段を猛ダッシュで駆け上がり、
下りはほとんど飛ぶようにして降りてきました。

これを勤労少年というかは、
難しい定義です。

確かに辛い日もありました。
外での仕事なので、
天候にもダイレクトで左右されます。
雨の日はカッパを着て、
それでも
ずぶ濡れになりながらでしたし、
特に雪の日は
母もバイクは使えませんので、
家から徒歩で配達所に向かい、
そこから新聞を
しょって行かねばなりませんでした。

といいながらも、
子供の頃の僕は、
特段そうしたことを
苦にしている感じもありませんでした。
まあ、性格もあるでしょうか、
眠いな、とは毎朝思ってましたが、、、
 

プロジェクト399日目。

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<span style="color:#ff0000;"><strong>2019/8/12 399日目</strong></span>
■kindle 本日0冊 累計75冊 達成率0.71% 
■文学賞公募作品の執筆状況 1作目半分くらい ※まだ賞は未定
■kindleアップのため『桜の闇』を推敲中
 158ページ中50ページくらい了
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kindleでは「セノイピープル」「バスストップ」「悲しきウスバカゲロウ」が読めます→
https://www.amazon.co.jp/s/ref=dp_byline_sr_ebooks_1?ie=UTF8&text=%E8%8A%B1%E6%9D%91%E5%81%A5%E4%B8%80&search-alias=digital-text&field-author=%E8%8A%B1%E6%9D%91%E5%81%A5%E4%B8%80&sort=relevancerank

『僕を知らない君へ』オープニング 1日目
https://ameblo.jp/levelbooks/entry-12445434453.html