12歳の少女は、
平治の右側に座っていました。
彼女の左目が、
黄色く濁って見えることに、
ふと彼は気づきました。

夕暮れ時の光の加減なのか、
最初はそう思って、
また彼女の横顔をそっと見ると、
やはり、
その瞳は黄味がかっていました。

白磁のように艶やかな白い肌の中で、
その一か所だけが、
なぜか少女の、
一点のシミのように思えました。

「気づいた?」
少女はふいに平治を
振り向き言いました。
彼は一瞬どぎまぎして、
「いや、」
「見てたでしょ、わたしのこの目」
と加奈ちゃんは、
自らの左目の下の頬を指さしました。
「見てたっていうか、それは…」
「気づいたんでしょ?変でしょう?」
「…」

彼女は一瞬立ち上がるそぶりを見せましたが、
すぐに腰を落ち着かせると、
「これね、あんまり見えてないんだよ、
一応ね、小さい頃、ごみが入って、
擦ったりして、、
それで擦りすぎて炎症起こして、
見えなくなっちゃったって、
言ってるんだけどお…、ほんとはね、」
少しの間、沈黙が続いて、
平治はきょとんとした顔を
彼女に向けました。
加奈ちゃんは表情のない顔つきになって、
「あいつに殴られたから、それで目、
見えなくなっちゃったんだよ」
「あいつ?」
「うん、あいつが、大人なくせに、
思いっきり殴ってきたから、それで私、
ずっと目つぶってた、
もう開かないんじゃないかって、
朝起きて、目開けたら、
開けれたんだけど、
なんか濁ってて、いろんなもの、
見えなくなってたんだ…、」

平治はなんにも答えませんでした。
あいつ、というのが誰なのか、
それも疑問でしたが、
なにか深く暗い世界に
引き込まれるような気分でした。
夕闇のその先が、
徐々に黒々と塗りつぶされ、
鮮明だった建物の屋根や電信柱を
闇に隠していくように、
その先には、
何も見えないような、
そんな気がしていました。
 
プロジェクト428日目。

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<span style="color:#ff0000;"><strong>2019/9/10 428日目</strong></span>
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■文学賞公募作品の執筆状況 1作目半分くらい ※まだ賞は未定
■kindleアップのため『桜の闇』を推敲中
 158ページ中50ページくらい了
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『僕を知らない君へ』オープニング 1日目
https://ameblo.jp/levelbooks/entry-12445434453.html

 

夕暮れの河原で黄昏れていた平治のとなりに、
小さく見えるランドセルをしょった少女は、
ちょこんと座りました。
「私の話も聞いてくれる?」
「なんだろう…」
「それで、私が将来、どんなになるか、教えてくれる?」
「ふふっ」
平治は笑って、
「俺は将来なんてわかんねえよ、」
「うそ~、みんなそう言ってたよ、
おじさんは未来が見えるってさあ」
「…」
彼は少女をじっと見つめました。
なんだか、態度が推し量れないし、
いつものように、
なんとなく恋占いをしてくれと
寄ってくる女の子たちとは、
違う気がしたからです。

「私ってどう?」
少女の名は加奈ちゃんと言いました。
彼女は子どもにしては長いまつげを伏せるようにして、
平治に聞きました。
「美人になりそうだな」
「そう…」
「鼻もすうっとして、目も綺麗な形だしな」

それで、
加奈ちゃんは狭い川幅の、
向こうの民家の屋根の方に視線を向け、
「きれいになったらいいことあるのかなあ」
子どもらしくないな、平治はそう思いました。
彼によって来る小中学生は、
こんな物言いはしないし、
彼女が少しませているだけなんでしょうか。

平治は首をかしげながら、
彼女の形のよく白い頬のあたりを見つめていました。

しばらく黙ってから、
彼女は、
「私ね、早くお家出たいのね、」
「どこだい家は?」
「あのへん」
加奈ちゃんはすうっと片手を上げ、
川向うの民家が並ぶ、
コロニアルの屋根のあたりを指さしました。
「あの四角屋根んとこ?」
「うん」
「ああ、歯医者さんとこか」
かなり大きな家でした。
まわりからは
お屋敷なんて言われている、
街の名家の歯科医の自宅です。

「私ね、大人になったら、幸せになれるかなあ」
「…」
平治はちょっと黙ってから、
「それはあ、今は幸せじゃない、
今はつまんないって聞こえるな」
「それは、別にね、」
やはり、大人びたふうで、
平治にはとても違和感が感じられました。
「だってそうじゃないのかなあ、
今がよけりゃ、
大人になることなんて、
全然考えなくったっていいんじゃねえかな」
彼女はまた黙って、
ランドセルを背中から外すと、
それを小脇にかかえるようにして、
かばんの上に顎をのせました。

夕闇の中で、
境界をあいまいにした川岸のあたりで、
ちゃぷちゃぷと音をたてて、
川面がゆれていました。
 
プロジェクト427日目。

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<span style="color:#ff0000;"><strong>2019/9/9 427日目</strong></span>
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『僕を知らない君へ』オープニング 1日目
https://ameblo.jp/levelbooks/entry-12445434453.html

 

平治が占いで有名になってから、
彼はよく女子小学生や中学生に
取り囲まれるってとこまで話をすすめました。

彼は外出するといっても、
たいがい団地の敷地内か、
近くの川原にいるので、
女の子たちは恋占いをしてほしくて、
そのあたりを探すわけです。

それで見つけたら、一斉に駆け寄って、
彼に箴言を仰ぎます。
たいがいのことは当ります。
まあ、当るというか、
ぼんやりした、そうじゃないかってことを言って、
それが往々にして、
子どもにとってはその通り、となるんですね。

平治はそれをイヤともいいとも
思っていなかったようで、
ただ平然と彼女たちと触れ合っていたようです。

不思議なのは、
見た目も変わった大人という感じなのに、
子どもらがそんなに不信感も抱かず、
彼と近づいていったことです。

姉に聞いた話でも、
誰も不審に思っていなかったようなのです。

ここからは、
また別の友人に聞いた話です。

ある時、
またいつものように彼が川原にいた時です。
1人の小学生が近づいてきました。
彼女は小学6年生です。
同学年の中では背が高く、
目だった容姿を持っていました。
少女はゆっくりと平治に近づき、
川原を眺めている
その背中にそっと声をかけました。
「ねえねえおじさん、」
平治は無言で振り返ります。
「おじさんって、占い師なんでしょ?」
彼女は後ろ手になって、
座っている男を見下ろします。
平治は座って、首を向けたまま、
「おじさんじゃねえよ俺、」
「え~、だってみんなそう言ってるよ、」
彼は立ち上がりました。
「そっかあ」
言うわりに、あんまり気にしていないふうです。
「ねえ、私の話も聞いてくれる?」
彼女は立ち上がった平治を見上げ、
その影になった顔を覗き込みながら言いました。
平治は少し考えるようでしたが、
「いいけど、なんだ?」
それで、彼女は平治の立っていたあたりに座ると、
「あのね、私ね、」
と話し始めたのです。
平治は少し距離をおいて、
彼女のとなりに座りなおしました。
 
プロジェクト426日目。

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『僕を知らない君へ』オープニング 1日目
https://ameblo.jp/levelbooks/entry-12445434453.html
 

 


噂が噂を呼んで、
平治はいつしか、占いおじさんなんて言われていました。
彼はそれを知っていましたが、
よくも思っていませんでしたが、
あまり気にもしていませんでした。

ところが、
彼がたまに街に出たり、
近所をうろついていると、
そう言った趣向が好きな女の子たちが
集まってきます。

「ねえねえ、おじさん、私占って、」
中学生の女子です。
たいがい女の子たちは、
1人であることはなくて、
3人も4人も集まって、
彼の周囲をとりまきます。
平治はいやな顔ひとつせず、
彼女たちを見渡します。

「わたしね、2年の陸上部に好きな人いるのね、」
1人の少女が言います。
「どんな人?」
平治は、朴訥な感じで聞き返しました。
女の子は少しだけ頬を赤くして、
「背高くて、かっこいい人、髪さらさらでえ」
「ふうん、」
で、その女の子を見下ろして、
まじまじと顔を眺めます。
しばらく黙って、それから平治は、
「お前のこと、気にしてるかもしんねえな、」
ただ、想像で言っているのです。
続けて、
「お前天パーだろう?」
「え?やだなに?」
女の子は慌てた顔して、
額のあたりの髪を両手で押さえました。
「いやさあ、さらさらの髪してんなら、
それをお前には要求しないってことだよ、」
「なにそれ~」
「だからよ、」
平治はしゃがんで、彼女の目線に入ると、
「人間なんてそんなもんだよ、
自分にあるものは求めないし、
自分にないものは求める」
少女はきょとんとしていました。
それで、首をかしげて、
「ありがとう、」
と頭を下げ、
みなとともに走り去っていきました。

…、
それだけです。

プロジェクト425日目。

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『僕を知らない君へ』オープニング 1日目
https://ameblo.jp/levelbooks/entry-12445434453.html


「お嬢さんたちは、
なんでここにいるの?」
平治は、
自分を囲む3人の小学生に言いました。
女の子たちは顔を見合わせ、
くすくす笑うと、
一番背の低い子が、
「学校から帰るとこに決まってんじゃん」
いかにも生意気そうな顔して言いました。
平治はその子の顔をまじまじと見つめます。
「やだっ、なにっ」
小柄な女の子は、
怪訝な表情で一歩後ずさりしました。

平治はかまわず、少し前かがみになって、
彼女をじっと見続けたまま、
「お前さ、まだお父さんと
お風呂入ってんだろう?」
「え~!」
他の2人の子が騒ぎ立てました。
言われた小さい子は真っ赤になって、
「なに言ってんの!
なんでわかんのよそんなこと!」
結構な剣幕です。
「いやさ、」
平治は夕空に目をそらし、
「甘えんぼだろう、
きっとお父さんみたいな恋人作るぞ」
「え~、なに言ってんの」
女の子は足をばたつかせて、
みんなで大騒ぎです。

実は、これが、
僕の姉から聞いた話でした。
姉は噂の噂として
聞いていたようでした。

実はこの女の子が、
高校生になって広めたものでした。

自分が交際していた男性が、
あまりにも父の雰囲気に似ていて、
それを子供のころ、
河原のサンバイザーおじさんに
言われたって話です。

他愛もないことです。
その子が、小学5年になっても、
父親とお風呂に入っていたのは本当の話です。
でも平治の発言は思いつきに近かったんですが、
彼女は本当のことを言われて、
かなり驚きました。

そして噂は、
いつしか平治が予言者だとか、
必ず当たる恋愛占い師とか、
そんなふうにして広まっていきました。
 

プロジェクト424日目。

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『僕を知らない君へ』オープニング 1日目
https://ameblo.jp/levelbooks/entry-12445434453.html

 

 

夕暮れ時の小川沿いのささやかな土手道。
平治はいつもここを通って街中へと入り、
学校に通っていました。

以前はなんとも思わない場所でしたが、
家にこもるようになってからは、
唯一の外界であり、
いつしか、お気に入りの場所になっていました。

彼は、まるで画家が細部を観察するように、
視界に届くすべてを眺めまわしていました。
川向うの家の並び、屋根の色の順番、
その先の煙突、もう少し遠くの街中の看板、
そういったものが、
記憶の中に鮮明になるほど、
刻銘に見つめていました。

雨の日や、
その翌日で座り込めない日でもない限り、
平治はほぼ毎日のように
土手に座っていました。

そんな時です。
背後から、
小学生の女の子に声をかけられたのは。
「おじさん、なにしてんの?」
まだこの頃の平治は25、6歳です。
彼は振り向きながら、
「おじさんじゃないよ」
と答えました。
見れば、3人の小学高学年らしい女の子が
佇んでいます。
「いやあ、おじさんだよお」
1人が言いました。
平治は笑って立ち上がりました。
彼女たちからは、
見上げるような大きさです。

彼女たちは一瞬たじろぎましたが、
最初に声をかえた子は持ち直して、
「おじさん、いっつもここにいるでしょ、
噂だよ、変な人がいるって」

最近であれば、
子どもたちはこうした行動に目的がない大人に
声をかけることはないと思います。
ただこの時代だと、
往々にしておおらかだったとも言えるし、
子どもたちも
果敢に挑んでいくようなところがありました。

平治は怯んで、
「俺が、変な人って、そんなんじゃないよ」
「じゃあなんでこんあとこでさあ、
いっつもぼうっとしてんの?
お母さんが釣りでもしてんのって言ってた」
平治は首を振ります。
「絵でしょ、絵描いてる」
「いや」
彼はまた首を振ります。
そして、寂しい顔つきになりました。
自分はここで何をしているんだろうと、
考えていたからです。
 

プロジェクト423日目。

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<span style="color:#ff0000;"><strong>2019/9/5 423日目</strong></span>
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『僕を知らない君へ』オープニング 1日目
https://ameblo.jp/levelbooks/entry-12445434453.html

 

平治が、
気絶する間に、
常に過去を見ていたということが、
一体何を意味していたのか、
それは、時間の前と後とでの、
答え合わせに他なりません。
ああしたからこうなる、
こういうふうにしなかったから、
そうなった、
なんてことを、
ひたすら心理で反復するのです。

だから彼は、
自分が頭を打って、
仕事にもつかず
不遇な境涯になっていった事実の理由を、
自らの過去に求め、
そして、
その過去を
いつしか呪うようになりました。

彼は家と団地の周囲を歩き回る以外は、
ほとんど家にいるのですが、
いつしか両親とも
口をあまり聞かなくなりました。

そうして、
いつも一人でぶつぶつ何か言っては、
心の中に過去と現在を反復していました。

おそらく、ですが、
彼のこうした追想感が、
ある意味ひらめきのようになって、
未来を占えると思われたのでしょう。

それがある少女の目にとまったきっかけでした。

彼はいつものように、
団地から近い河原をとぼとぼ歩き、
乾いた草原にどかっと腰をおろしました。

夕暮れです。
川幅のせまい川面には、
薄紅色が溶かされていました。
 

プロジェクト422日目。

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<span style="color:#ff0000;"><strong>2019/9/3 421日目</strong></span>
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『僕を知らない君へ』オープニング 1日目
https://ameblo.jp/levelbooks/entry-12445434453.html

 

 

失神しているとき、
人は完全に
意識を失っているわけではなく、
脳の最下層で、
深い意識を動かしています。

平治は、気絶するたびに、
ゆらゆらと夢を見ていました。
それはひどくリアルで、
足音の響きや、
自らの呼吸まで
聞こえてくるようでした。

子どもにしては少し大柄な体を猫背にして、
彼は学校へと通う
小川沿いの道を歩いていました。

ただ、思考は大人なままでした。
明日の糧や、
現実的な今後の自分について考えているのです。

「おい平治、きょじんの子」
そう言って、
自分より頭一つ分も小さな同級生らが走ってきて、
彼を追い抜いていきました。
平治はそれを気にしているので、
さらに身を縮めて丸くなって、
みなを恨めしそうに見つめると、
「大人のがでかいだろう、
俺はそんなにおっきくないから!」
すると、
1人の男の子が立ち止まって、
「うちの母ちゃんが言ってたぞ、
おっきいといっぱい食べるから、
食費がもたないって、」

そんなもんなんだろうか、
だからうちは、
お金がなくて、
あんな狭い団地に暮らしているんだろうか、

しかし、
彼は別に父と母と暮らすその慎ましい生活を、
不幸だなんて思ったことはないのです。
父は無口で無愛想なところはありましたが、
母は優しくて、
常に彼を気にかけてくれていました。

確かに大学へは行けなかったけれど、
それは経済的な理由以外にも、
自分でなにがしたいのかが
よくわからなかったのもあったわけで、
平治は、特に不満のない自分の半生を、
敢えて、だめなものと決めつけるような、
こうした追想が、
一体自分の中に
何をもたらすものなのか、
まるで検討がつきませんでした。

だから意識を取り戻したあとに、
まるで点検するみたいに、
自分の心理に問いかけていました。

俺の人生はやはり不幸なんだろうか、
何か、不満を抱いているんだろうか、
そんなとこです。
 

プロジェクト421日目。

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『僕を知らない君へ』オープニング 1日目
https://ameblo.jp/levelbooks/entry-12445434453.html

 

それが、
大人になってたとえ
いい方になったにせよ、
子どもは特徴的な部分を揶揄したり、
興味を持つことがあります。

それはなぜか、
人は集団生活をし、
群衆となって社会を形成する
特質をもっています。
これは太古に始まったわけではなく、
往々にして、
農耕文化の発達と密接な関連性があります。
農耕は1人ではおこなえない、
家族単位だけでも厳しい、
結局ある程度のグループ構成をし、
分業化した上で生産を維持しているわけです。

人が血のつながりのある
最小単位だけで動いていた時は、
もしかしたら、差別的な感情は
人にはなかったかもしれません。

しかし、共同生活をし、
ある程度の人数で集団的になる場合、
どうあっても、
目に見えない一体感が必要になります。
それは、同じものを信じることとか、
同じ言語で会話するとか、
同じ趣向を持っているとか、
そういうことなんですが、
逆にそうでない場合、
相手を異質と考えるわけです。

大人になると、
社会的に成熟した人間は、
一応差別を助長するようなことを
目に見えてしません。
社会は共同体の中で、
平等的な感覚でないと生きていけないからです。
だから大人は、
本当は人との差異に好奇な感じを抱いても、
それをあまり表面に出さないわけですね、

それじゃあ、
子どもは露骨に、ある意味無邪気に、
差別を口にしたりするのはなぜなんでしょうか、

社会性がまだあまり発達していないから?
たんに思ったことを口にするから?

小さな頃から、
コンプレックスを強く意識していた平治は、
そんなことを考えていたのです。
気絶して、意識を失うと、
幼少期をリフレインさせていました。
そこで彼は、
子ども社会に、
農耕が始まった頃の
原始社会を見ている気がしていました。
 

プロジェクト420日目。

――――――――――――――――――――――――――――
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『僕を知らない君へ』オープニング 1日目
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子どものころから、
ヘイちゃんは父親に似て大柄で、
顔も手や足のつくりも大きかったのです。

そんな彼は、
幼い頃それがコンプレックスで、
身体を丸めるようにして
過ごす癖がありました。

「俺さ、子供のころ、
背中丸めてるから、ちゃんとしないさいって、
よく注意されてたろう?」
彼はあぐらをかいてベッドによりかかり、
起こしに来た母に話し続けます。
「あれ、なんでだと思う?」
「さあ」
母はしゃがんで
平治の顔をじっと見つめ答えます。
「俺さ、体おっきいなって、
すごく気にしてて、
親父もでかかったから、
そのせいなんだって思って、
写真とかでさ、並んでみんなと撮ると、
1人だけ頭でちゃうだろう、
だからいっつもちょっとしゃだんでたんだ」
「そうだったの…」
母は父と比べて、
小言は言いますが、
それすらも静かな声で窘める程度の、
終始穏やかな性格でした。
「わたしはよかったのにねえ、
あんたが大きくなって、
ひときわ大きくなって、
みんなより背が高くて、
誇らしかったけどねえ」

ちなみに、大人になってからの平治は、
人並より少し背が高いくらいです。

「でもみんなに、でくのぼうとか、
巨人って言われたよ」
平治は遠い目をしたままそう言いました。
彼は別にいじめられてたってわけでも
なかったんですが、
何気ない友人の数少ない言葉を、
ずっと覚えていました。
「だからさ、気にしたんだ、
俺、このまま、みんなと違くって、
巨人になったりしちゃうのかって、」
「そんなの…、
あんた大きい方がいいに決まってんじゃないのお」
「いやさ、今俺、ちびっこの頃の夢見てたんだ」
平治は、気絶していた間に、
脳内で起こったことを話そうとしていました。
「人と違うって、
いいことじゃないからさ」

 

プロジェクト419日目。

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<span style="color:#ff0000;"><strong>2019/9/1 419日目</strong></span>
■kindle 本日0冊 累計75冊 達成率0.71% 
■文学賞公募作品の執筆状況 1作目半分くらい ※まだ賞は未定
■kindleアップのため『桜の闇』を推敲中
 158ページ中50ページくらい了
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『僕を知らない君へ』オープニング 1日目
https://ameblo.jp/levelbooks/entry-12445434453.html