どこまで話そうか
少し悩んでいます。
まあ、色々な事情があり、
僕は高校生のある時期、
1人暮らしをしていました。

生計を立てていくのは大変でした。
母が、仕送りをしてくれたのもありましたが、
僕は街中を歩いて、
新聞配達のビラを見つけて、
自分で仕事を探してきました。

毎朝、朝刊を配るのです。
17歳になっていましたから、
小学5年の時から、
実に6年ぶりで、
また、この仕事をはじめたのです。

訪れた新聞屋は、
家からは少し離れていて、
住宅街の中に位置する、
結構規模の大きなところでした。

最初、ただアルバイトをしたいって、
訪れたのですが、
応対してくれたおばちゃんは、
「高校生?」
もちろん、ブレザーの制服を着て行ったので、
どこからどう見てもそうなんですが、
「はい、そうです」
「どこ?」
なんだかぶっきらぼうな物言いの、
ちょっと失礼なおばちゃんです。
僕は自分の通っていた
高校の名を答えました。

「あら…そう」
高校がどこかなんて、
関係ないらしく、
おばちゃんは続けて、
「高校生って雇ったことないのよねえ、」
僕は、
「18歳以上なんですか?」
ふと、小学生の頃、
配達の手伝いしていたことを思い出しました。
しかしあれは、
母の手伝いであったし、
母が配達所から持ってきた新聞を、
団地で配っていたに過ぎません。
それに、
早朝の仕事だし、
もしかしたら、法律的な規制が
あるのかもしれません。
僕は口を噤みました。

「ねえ、どうなのかねえ」
おばちゃんは、いつのまにか後ろにいた、
ずんぐりとした、
中年の男に話しかけていました。
薄いパンチパーマ、
真ん丸い顔をしています。

「いいんじゃないの?高校生だから、
夕刊とか集金は無理だろうけど、
朝刊だけでしょ、いいんじゃない」
宮嶋さんという人でした。
結局彼のこの一言で、
僕は採用してもらえました。
 

プロジェクト468日目。

 

――――――――――――――――――――――――――――
2019/10/20 468日目
■kindle 本日0冊 累計75冊 達成率0.71% 
■文学賞公募作品の執筆状況 1作目半分くらい ※まだ賞は未定
■kindleアップのため『桜の闇』を推敲中
 158ページ中50ページくらい了
――――――――――――――――――――――――――――

kindleでは「セノイピープル」「バスストップ」「悲しきウスバカゲロウ」が読めます→
https://www.amazon.co.jp/s/ref=dp_byline_sr_ebooks_1?ie=UTF8&text=%E8%8A%B1%E6%9D%91%E5%81%A5%E4%B8%80&search-alias=digital-text&field-author=%E8%8A%B1%E6%9D%91%E5%81%A5%E4%B8%80&sort=relevancerank

 

『僕を知らない君へ』オープニング 1日目
https://ameblo.jp/levelbooks/entry-12445434453.html

東急ハンズの前を離れて、
僕と高原は駅の方へと向いました。

「あれ、戻んの?」
池袋駅の構内、
僕が家とは逆で、
地下鉄の改札を目指して歩き始めると、
高原は言いました。
「うん、図書館行く」
大学の図書館に行こうとしていました。
「まじめやなあ、」
「いや、そんなんじゃないだろ」
僕は自嘲を込めて笑うと、
そのまま手を振って、彼と別れました。

何も卒論の調べものなんか
するわけじゃありません。
小説を書くためです。

その当時の僕は、
高校の同級、
サトちゃんたちと3人で暮らしていたので、
集中するような作業の時は、
なるべく外でやっていました。

便利なノートパソコンなんて、
まだ持っていませんでしたから、
図書館にこもって、
せっせと大学ノートに下書きをするんです。

そうしてその真っ黒になったノートを、
家にあるデスクトップパソコンで
せっせと入力していきます。
まあ、それが校正作業にもなっていて、
とにかく大学では、
一点集中、鉛筆を持ってひたすら書き進める、
その繰り返しでした。

この小説に、
テーマは、
テーマは、もはやありませんでした。
そういうモチーフやコンセプトを持つこと自体が、
僕が長編を書けなかった
今までの足かせでした。
最初に、骨子を思い描こうとするから、
そこから少しそれたときに、
思いとどまってしまうんです。

だから、
これは記録なんだと、
途中からは、
何度も自分に言い聞かせていました。
平明でもいいので、
ただひたすら書くんです。
岡山の片田舎から、
やがて東京に移り住んだ
一人の青年が、
なぜ殺人事件を犯すまでになっていったのか、
その足跡を、
僕の創造のままに記録するんです。

明日からは、
この小説にあたって、
僕自身の経験から
もっとも印象深いモチーフとした、
高校時代の新聞配達について
語ろうと思います。
 

プロジェクト467日目。

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2019/10/19 467日目
■kindle 本日0冊 累計75冊 達成率0.71% 
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『僕を知らない君へ』オープニング 1日目
https://ameblo.jp/levelbooks/entry-12445434453.html

『溺れる時代』
僕はこの小説を書くにあたって、
初めて長編を書こうというのもあり、
相当の意気込みを持っていました。

なにしろ数10枚の短編書いて、
ひいひい言ってた頃です。
もちろん超大作なんてわけには行きませんが、
ある程度長いものを書こうと決めていました。

大学も、そろそろ卒業に近い時期です。
結局のところ、
学生生活中には、
僕は小説をものにもできなかったし、
小説というものを
わかってもいなかったと思います。
そうであるから、
自分なりのスタイルなんてものもないし、
何をもって、
つまりどんなテーマがあって、
筆を進めて行くのか、
それを真剣には
考え切れていませんでした。

卒論を書きながら、
せめて卒業までに、
1作でも長編を書き上げたい、
それが僕の切なる思いでした。

この小説は、
実際にあった事件をモチーフにしています。
しかしながら、
あれほど事件の現場を踏査し、
何度も取材を試みたわりには、
事件そのものについては一切触れていません。

それには理由があります。
僕は主人公でが、
徐々に暮らし向きを
劣化させていく過程を描きながら、
彼が事件を起こしたことについては、
あまり興味がなくなっていきました。
十分にインパクトのある
ものだったにも関わらずです。

書いているうちに、
その結末は、
自死でも通り魔でも、
なんでもかまわなくて、
彼を追い込んでいった、
いや駆り立てていったというべきでしょうか、
その動機ばかりが
気になっていきました。

彼のためらいが聞こえるのです。
路上で、
きたない運動靴を履いて、
それが、
ためらいながら
行ったり来たりする、
その、足音が聞こえてくるようでした。

 

プロジェクト466日目。
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2019/10/18 466日目
■kindle 本日0冊 累計75冊 達成率0.71% 
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『僕を知らない君へ』オープニング 1日目
https://ameblo.jp/levelbooks/entry-12445434453.html

 
人が多ければ、
それなりになにかが起きるのか、
それは、
人込みで歩くのが大変なように、
肩と肩がすれ違うように、
摩擦感、それが摩耗して、
人は擦れて、
窪みにはまっていって
しまうのかもしれません。

また、池袋の雑踏に目をやります。

今から10数年近く前の僕です。
ようやく大学を
卒業しようとしている時期でした。
そして、小説家を目指し、
初めての長編を書こうと試みていました。
それが、
『溺れる時代』だったわけですが、
この作品、
普通の生活をしていた青年が、
徐々に落ちぶれていき、
やがては精神的に追い詰められ、
通り魔を起こすというものです。

これからの希望に満ち溢れていた
当時の僕の気分とは、
あまりにもかけ離れたものでした。

しかし、だからこそ
書こうとしていたのかもしれません。
僕はこの時点まで
いくつかの短編を書いてきていましたが、
そこにはいつも
自分がいた気がしたんです。
つまり、
自分から離れられない主人公がいました。
そこで、
このセンセーショナルな、
通り魔事件に飛びついたともいえます。
そこには、
まるで自分とは違う人生が
ある気がしたからですね。

ところが、
妙な気がしてくるものです。
次第に、
僕が書きだした主人公が、
他人事には
思えなくなってくるのです。
そこには、
肉薄した精神がある気がします。
僕は、いつだって、
彼のような人生を
歩むことだってあり得た、
そう思えてくるわけです。

それを、
取材に同行してくれた
高原に言いたかったのですが、

僕は後ろで佇んでいる、
背の高い彼を見上げ、
「俺が言いたいのは、
誰だってここで
暴れる可能性は、
十分にあるってことなんだよ」
ちょっと極端な言い方でした。
高原は、
「そんなわけないやろう、俺はせえへんよ、」
「そうかな、」
「そりゃそうやろ、捕まるで、
人生おしまいになるし、
なんで見ず知らずの人間殺す必要ある?」
僕は、
彼の反論に少し考えてから、
「だからさ、」
ゆっくり、言葉を区切って、
「犯人だって、お前と同じこと考えたと思うよ、
よっぽど頭いっちゃってない限りさ、
誰だって、そんなこと好き好んでしないでしょ、
問題は、そうしなきゃいられないほど、
追い詰められるってことなんだよ」
「追い詰められる?」
高原は首を傾げました。

僕らは、雑踏の中に
割り込むように入って歩き始めました。
 

プロジェクト465日目。

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2019/10/17 465日目
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『僕を知らない君へ』オープニング 1日目
https://ameblo.jp/levelbooks/entry-12445434453.html

 

「幸せが幸せじゃなくなるってこと、
誰だってあるじゃない」
僕がそう言うと、
高原はすっと眉間に皺寄せて、
「そやろか、幸せなやつは、
えげつないくらい幸せやで、」

2人は相変わらず、
人の往来の激しい
東急ハンズ前に佇んでいます。

僕は少し声のトーンを落として、
「例えばさ、
いきなりルンペンになれって言われたら、
そりゃ無理でしょ、」
「るんぺん?」
「路上生活者だよ、家ない人、
いきなり明日から、あれはできないでしょ、
だけどどうかなあ、、
ゆっくりそうなってったら」
「なんやそれ」
あんまり高原は
話に乗ってきません。
しかし、ここで彼に
それを分からせなければ、
僕の描こうとする世界感はないのです。
「だからね、たとえば、
ある日唐突に、会社が倒産したとして、
それで職を失ったとして、
次を探さなきゃってなって、
でも中々
新しい仕事が見つからないと、、」
「まあ、なんか適当な職探すやろな」
僕は高原のその軽い発言に、
「そんな簡単じゃないかもしれないじゃん」
「そっかな、
ランク落とせばなんかあんじゃない、
ホワイトカラーが、新聞配達とか
日雇いバイトしたってええやろ」
「まあ…、そうだけど、
それでもいいよ、それで、
ちょっと生活の質が変わるよね、
収入が悪くなって、貧乏になってく、
だんだんね、それで、
身内もいなくなったりして、
家の家賃払えなくなったりして、
そっと氷の上に、
裸足で降りるみたいに、
ゆっくりと、路上での生活をはじめてみる、」

僕はそういう自分を、
想像したことが
何度もあります。
それは、一見遠くて、
まるで自分とは
無縁な気もするし、
ひょっとすると、
その階段を本当はもう降りていて、
それがゆっくりすぎて、
気づいていないだけかもしれない、
そんな気もします。

また、人並みの方に目をやります。
若い男女、
携帯を片手にしたサラリーマン、
買い物をしている初老の女性たち、
相変わらず、
ひっきりになしに人が行きかっていきます。

「ほんと人多いな東京」
高原が言いました。
「岡山そんなことない?」
僕が答えると、
「ああ、こんなはおらんでしょ」
彼は笑いを含んで返しました。

プロジェクト464日目。

 

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2019/10/16 464日目
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『僕を知らない君へ』オープニング 1日目

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池袋の路上に立っています。
東急ハンズの入り口付近です。

ここで、この当時から数年前に、
負傷者6名、死亡者2名を出した
通り魔事件が起こりました。

犯人は、真夏の日差しが
容赦なく降り注ぐこの路上で、
大声で叫びながら、
包丁と金づちを
振り回していました。

僕は、大学の友人、高原とともに、
この地を訪れました。

僕が人通りの多い
サンシャイン通りを眺めていると、
高原は、
「なんか見える?」
「いや…、特になんにも」
「作家やからな、
創造力でいろんなこと見えるもんなんかと思った」
僕は高原の、
その冗談ともつかない言葉に振り返って、
「そんなわけないじゃん、単なる街の風景でしょ、
人がいっぱい行きかってて、
それこそそんな惨劇なんて、
まったく想像つかないような、
平穏な、、」

平穏な、街の光景、
誰もが、
まさかこの場に殺人鬼が現れて、
包丁を振り回して襲いかかってくるなんて、
思いもしないでしょう。

目を閉じても、
僕はそんな凄惨な光景を
思い浮かべることは
出来ませんでしたが、
「この柱のあたりにさ、
まずボストンバッグを置いたわけだよ、」
僕は大きな円柱の前にかがんで、
「そして、おもむろに、
あたりを窺ったりしたかな、
それで、包丁と金づちを取り出す、」
両手になにか持ってる仕草をして、
また、往来の方に向くと、
「で、ここに佇んで、」
僕は言いながら、自らの足元を見ました。

彼は、つまり犯人は、
ここで、一度だけためらったかもしれない、
なにしろ、ここであと一歩踏み出したら、
全てが始まってしまい、
自分の人生が、
全て終わってしまうのだから、

そう、考えていました。

「お前ずいぶんよく知ってんな」
高原が言うので、僕は、
「けっこう調べたんだよね」
そう答えて、
しばらく黙ったあとで、
「でもさ、誰でも
起こしちゃうかもしれない事件だよね、」
「そうかあ、そんなことないやろう、」
「いや、幸せじゃなくて、思い通りにならなかったら、
人は…、わからないよ、」
「幸せなやつやって多いやろう」

僕は、そう言った高原を振り返り、
「だからさ、幸せが、
幸せじゃなくなるってこと、
誰だってあるじゃない」
と答えました。

 

プロジェクト463日目。

 

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2019/10/15 463日目
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『僕を知らない君へ』オープニング 1日目

https://ameblo.jp/levelbooks/entry-12445434453.html

 
平治の話は、
これでおしまいです。
この、小学校の時に出くわした、
サンバイザーをいつも被っていた
占いおじさんと言われていた男、

子どもの頃は、
相当に恐怖感がありながら、
それでも、
何か他の大人たちにはない、
不思議な感覚で、
好奇心をもって接していました。

実はこのおじさん、
『溺れる時代』の作品中、
へいちゃんと呼ばれ、
孤独死する男の
モデルになっています。

彼は何か、
俗世的な欲求を
超越していたか、
答えはノーです。
もしかしたら動物的で、
よくいえば純粋な欲望の中に
生きていたと思います。
しかし、
作中では、
無欲で無垢な中年の男として
描かれています。
だが、そうした無欲さが生み出した
男の生活は、
人目を引くほどに惨めなものでした。
おんぼろアパートの一室で、
両親をなくし、
他に頼りもない天涯孤独、
奇行に近所の人が辟易している、
そういう男が登場します。

やがて通り魔を起すことになる主人公は、
その時点では
まるで似ても似つかない自分を、
男の境遇に重ね合わせていきます。
自分もいつか、
ああなってしまうんじゃないかって、
思わず身震いするわけです。


さて、
しばらく自分のバイト遍歴、
弁当工場や新聞配達、
それから配達で出会った
サンバイザーおじさんについて
語ってきました。

これらは、「溺れる時代」の中で、
主人公が高校中退以後に体験していく
職歴と重ねたところが
狙いだったわけです。

僕はこの長編を書くにあたって、
まずは自分が
経験したことのあるアルバイトを使って、
よりリアルな労働への描写を試みました。

そして、
僕は実際に事件のあった池袋、
東急ハンズの前に佇みました。
それは、通り魔事件から、
およそ1、2年あとの、
真夏の、同じ季節のことでした。
 

プロジェクト462日目。

 

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2019/10/14 462日目
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『僕を知らない君へ』オープニング 1日目
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残念ながら、

人は幸せにはなれない、

僕はおぼろげに思っています。

だから窮屈とか、

悲愴的だと言うわけじゃなく、

多くの幸せを求めないことが、

裏返せば

幸せかもしれないのです。


それは東洋的な多くの宗教、

哲学や思想と言われる感覚で、

多くの先人たちが

説くところでもあります。


僕が平治という1人の男を

ここ数日書き続け、

念頭にあったのは

そういう部分です。


彼と出会った小学生の頃は、

そんなこともちろん

思いもしなかったのですが、

大人になってふと考えてみると、

彼が何を求めていたのか、

いや彼は、

そういう幸福への希求から

離れた視点で超越していたのか、

それが、ああいう

ふわりとした人格をつくるのか、

考えてもみるのです。


しかし、結局のところは、

僕がそのおぼろげな事実と、

自らの創作の中で導き出した答えは、

やはり、

彼も幸せを求めていたってことです。


だから最後に、

ひとしきり暴れさせてみました。


それは彼の、

不幸と感じる心の裏返し、

反動だったのです。


だから、彼が両親を失い、

徐々に孤独へと進んでいく、

その終わりを、

なんとも後味の悪いものとしました。

僕はそれを、

生々しい人間の生き方と思ったからです。


さて、

平治の話はこれでおしまいです。

実は「溺れる時代」の作中には、

彼をモデルにした

独り住まいの中年男が

登場します。

男は一見近所で噂の変人で、

アパートに一人暮らししています。


作中で男は、

まるで欲求のない、

物事を卓越したような雰囲気で

描かれています。


しかし、

やがて通り魔を起こす

主人公の青年は、

男から跳ね返るような、

幸福感への欲求を

募らせていくのです。


プロジェクト461日目。

 

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2019/10/13 461日目
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『僕を知らない君へ』オープニング 1日目

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自転車を降りて佇むその前まで、
葬列はやってきました。
みな黙々と、
俯きがちに歩いています。
彼らは、まるで平治のことなど、
その存在を無視して
しずしずと歩いているのです。

空は曇天でした。
台地から冷気が湧き上がって、
この地方では
あまりないのですが、
今にも雪でも
はらはらと落ちてきそうな天気です。

葬列の先頭が、
とうとう平治の
目の前までやってきました。
そこで彼は、目をむいて、
喪主のもつ遺影に釘付けになります。

老婆の持つ遺影、
そのモノクロの写真の姿は、
間違いなく
あの偏屈な老人のものでした。
彼には見せたことのない、
穏やかな笑顔の写真です。

平治は自転車をバタンッと倒すと、
列の先頭へと駆け寄って、
「おい、この人ってよ」
いきなり声を荒げました。

葬儀の人たちは、
はじめきょとんとして、
誰も受け答えをしなかったので、
平治はまた、
「おい、どういうことだ?
こいつ、俺知ってんぞ、あいつだろ、」
彼は、
小さな老婆のもつ遺影の額を、
いきなり両手で持って奪い取ると、
それを頭上に掲げます。
「俺は、こいつにいっつも杖でよ、
ぶったたかれてたんだ、」

集団は徐々にざわめき始めます。
「あんだお前は?」
「おいおい誰だこいつは?」
参列にいた男たちが、
老婆をかばうように
平治の前に出てきました。

それでも、
平治は怯みもせず、
「俺はよ、こいつにさんざぶっ叩かれたんだ、
俺はなんも悪いことしてねえしな、
母さんは、
俺もなんか失礼したんじゃねえかって、
だけど俺な!」
彼は人並みの男よりひときわ大柄です。
それが大音量で叫ぶのです。
葬儀の男たちも、
その勢いに気おされてしまいました。
「俺は!俺はなんもしてねえ、
ただちらし配ってただけだ!
だけどこのくそじじい、
杖使って、まるで虫けらみたいに、
人をよお、」
平治の頬を
ぼたぼたと涙がこぼれていきました。

母を思い出していたのです。
母は死にました。
そして、
この老人だって死んだんです。
どんなに威張って、不条理を働いていても、
いつか人は死ぬんです。

この時の平治の心理を、
誰も説明なんてできやしないでしょう。

ただ僕は、
そこに、
そこはかとない哀しみと、
老人の死への快哉が絡み合い、
痛快さが、
彼を興奮へと走らせて行った、
そう思うばかりです。

「俺はよお!虫けらじゃねえぞこらあ!」
彼は頭上に掲げた遺影を、
アスファルトの地面に叩きつけました。
「お前が杖でぶっ叩いたからだ、
だからよお!俺もこうしてやんだ!」
涙でくしゃくしゃになった顔で、
割れた遺影の額縁を、
何度も足で踏みつけました。

老人の顔が、
みるみる泥にまみれていきます。

呆気にとられていた人々も、
ようやく我に返って、
平治の巨体を押さえにかかりました。

さんざん喚き散らして、
平治は取り押さえられ、
そうして、
人生で2度目となる
警察の厄介になることになりました。
 

プロジェクト460日目。

――――――――――――――――――――――――――――
2019/10/12 460日目
■kindle 本日0冊 累計75冊 達成率0.71% 
■文学賞公募作品の執筆状況 1作目半分くらい ※まだ賞は未定
■kindleアップのため『桜の闇』を推敲中
 158ページ中50ページくらい了
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kindleでは「セノイピープル」「バスストップ」「悲しきウスバカゲロウ」が読めます→
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『僕を知らない君へ』オープニング 1日目
https://ameblo.jp/levelbooks/entry-12445434453.html

疎遠になっていた親族も集まり、
母の葬式が執り行われました。

平治もすでに30の半ばです。
頭に障害を
少し残しているものの、
アルバイトとはいえ、
日常的に仕事をこなし、
父母が残した蓄えも
それなりにある、
そうした状況でしたので、
親戚の誰かが
面倒を見るということもありません。

ただ、
僕が新聞配達をしていた頃は、
すでに仕事なんて
とてもしているようでもなかったですし、
生活保護を受けていたのか、
どう生計を立てていたのかなんて、
今となってはわからないままです。

彼は、つねに
サンバイザーをして、
時折女の子たちの占いの相手をして、
団地の6号棟のエントランスで
うずくまっている、
そんな姿しか知らなかった僕ですが、
もう1つだけ、
彼に関する風聞を耳にしています。

これが、最後のエピソードです。

平治は、母が亡くなったあとも、
しばらくはきちんと
仕事を続けていました。
そう、市役所の広報誌なんかを
配るあれです。
それは母の
遺言のようなもの
だったかもしれません。
母は父が亡くなった時、
すぐに仕事をやめてしまった平治を、
とても気にかけていました。
自分がいなくなってから、
彼がちゃんと生きていけるのか、
それが一番気がかりでした。

それは平治の気持ちにも、
ちゃんと伝わっていたようです。
彼は1人きりになってからも、
通夜とか告別式、
納棺に日以外は、
黙々と市役所に向かい、
自転車に紙束をつんで、
市の周辺地域へ
配達に向っていました。

もう年の瀬の近い頃になりました。
集落の畑地は、
ただ様々な茶色の砂地を露出させ、
だんだらと続く畝が、
荒涼とした光景に見えました。

平治はいつものように、
坂道を立ちこぎになって、
自転車を走らせていました。
真冬でしたが、
額には薄っすらと
汗が滲んできます。

坂を上がりきると、
植林の杉を抜け、
見晴らしがよくなります。
田舎道の先から、
大勢の人が
ゆっくりと歩いてくるのが見えました。

普段は、畑へ向う軽トラが行きかうくらいの、
さびしい場所なのです。

集団で歩いている人なんて、
そうそう出くわすものじゃありません。
平治は自転車をとめ、
思わず目を見張りました。

それは、葬列の一行でした。
この地方の習慣なのでしょう、
遺影を携えた喪主を先頭に、
棺を担いだ行列が、
ためらうような
ゆっくりとした歩みで進んでいきます。
 

プロジェクト459日目。

 

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2019/10/11 459日目
■kindle 本日0冊 累計75冊 達成率0.71% 
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■kindleアップのため『桜の闇』を推敲中
 158ページ中50ページくらい了
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『僕を知らない君へ』オープニング 1日目

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