僕が最も親しくしていたのは、
2浪生の健太郎さんでした。
彼は20歳で、
当時の僕からすれば4つ上の、
はるか大人だなあと
つくづく思っていたものです。
とにかくよく飲む人で、
お酒の席が好きっていうより、
アルコールに浸りたいみたいな感じで、
缶ビール片手に
煙草を吹かしている姿が
思い出されます。
彼の部屋によく行っては、
高校生のあとの人生の、
よく分からない人間の交流を、
わけも分からず聞いていたものです。
彼は僕に、
お酒も煙草も勧めてきたわけですが、
僕はついぞそれらには
何の興味も示しませんでした。
本当は好奇心から、
そうしたことに手をつけそうですよね、
親元を離れて、
初めて感じる自制的な環境の中、
僕はそうしたことには
今でもはっきり憶えているくらい、
強い拘りがありました。
少なくともこの時期では、
どう勧められても、
けして煙草もお酒も
口にはしませんでした。
健太郎さんは、
煙草をすうっと吐き出して、
「花くんは意志強そうだかんね、
こんな境遇でも乗り切れそうだよなあ」
「いや、そんなことないです、、」
僕は閉じた赤本の表紙を
ぼんやり見つめながら、
「わかんないだけです、
これからどうするかとか」
「そうだよな、まだ高1だもんな、
俺もその頃戻りてえなあ」
「戻り、たいですかね」
僕は早く大人になりたいな、
と思っていました。
大人じゃないから、
こんな境遇にいるんです。
母が再婚を機に、
その新しい父と住居を定めたのは、
東京から2時間もかかる
地方都市でした。
僕はどうしても
そこに行く気がしなくて、
新聞屋でのアルバイトを
見つけてきたんです。
それで、自活したいという気概を
親に見せたのです。
母は根負けして、
それを受け入れてくれました。
しかし、実際にはとても
辛い思いもしました。
やはり、恥ずかしながらも、
親を恋しいという気持ちもありましたし、
同級生らと違う境涯を、
自分は自分と言い聞かせるのは、
中々心労を感じるものでした。
僕はそれでも、
「大人になれば、自由な選択は、
もっとあるわけですしね、」
「そう思うの?」
健太郎さんは窓に座ったまま、
身を乗り出して言いました。
僕はゆっくり首をたてに振って、
「健太郎さんだって、
自分で選んだんですよね、
東京来るって、大学行くって、」
「はははっ」
それで、彼はからからと笑うと、
「そうだよなあ、そりゃそうだよな、
自分で決めたんだっけ」
「違うんですか?」
彼は少し黙ってから、
笑いが嘘みたいに
落ち着いた声になって、
「いや、そうに違いねえから、
そうだ、俺、自分で決めてんだ」
プロジェクト478日目。
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2019/10/30 478日目
■kindle 本日0冊 累計75冊 達成率0.71%
■文学賞公募作品の執筆状況 1作目半分くらい ※まだ賞は未定
■kindleアップのため『桜の闇』を推敲中
158ページ中50ページくらい了
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