もぬけの殻になった小林さんの部屋です。
「ママさん…」
ドアのところに佇む
2つの人影を見て、
そう口にしたのは宮嶋さんでした。
「ママ、さん」
僕は、
このでっぷりとしたおっさんの言葉を反復して、
その意味をわからないでいました。
「聞いたよ、小林さん」
そう言って、
女性は玄関口に入ってきました。
派手ななりをした、化粧の濃い、
おばさんでした。
もう1人も似たような女性。
「早いねママさん」
宮嶋さんが答えると、
ママさんと呼ばれた女性は、
「あの人、お金全部払ってないだよ」
話し方からして、日本人ではなく、
どうやら中国人のようでした。
これは、後から知ることになりますが、
要はチャイナパブってやつですね。
小林さんはそこの常連客で、
ママさん、と口にした宮嶋さんも、
同じ感じだったのでしょう。
宮嶋さんは少し考えるようにして、
「お金ね、」
ママさんは靴を脱ぐと、
部屋にあがってきて、
「ねえお金、20万くらいあるよ、」
「飲み代ですか?」
僕は聞きました。
たぶん小林さん、
昨日の晩も、
そこで飲んで帰ってくる途中だったんでしょう。
「お金、宮嶋さん払う。払う?」
ママさんは迫るように宮嶋さんに言います。
それで慌てた宮嶋さんは、
「それは勘弁してよ、俺じゃないでしょ、」
「保証人じゃない?」
「は、なに言ってんの?」
後ろにいたもう一人の女性も、加勢して、
「だってお金払ってないで逃げたでしょ、
だれ?払うの誰?」
僕はこの光景を、
1人外から眺めていたんですが、
まだ16だった当時は、
話の内容がよく呑み込めていませんでした。
ただなんとなく、
小林さんは、借金をしていて、
みなを困らせている、
それだけです。
しかし、ことはもう少し大きかったようで、
宮嶋さんは、
ママさんたちとの押し問答の途中で、
ふいに大声で、
「あ!もしかして、」
いきなり、
部屋の隅にあったビニル袋をひっかきまわし、
それから、押し入れをあけました。
そこにも、
もう何もなかったわけですが、
僕は、
「どうしたんですか?」
宮嶋さんの背中に聞きました。
その背中、わなわなと揺れて、
「あのやろう、
集金の金全部持っていきやがった…」
「…」
「月末だろう…、全部だ全部、」
僕と派手めの女の人たちは、
ただ茫然と、
怒りで顔を赤らめた
宮嶋さんを見つめていました。
プロジェクト488日目。
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2019/11/9 488日目
■kindle 本日0冊 累計75冊 達成率0.71%
■文学賞公募作品の執筆状況 1作目半分くらい ※まだ賞は未定
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158ページ中50ページくらい了
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『僕を知らない君へ』オープニング 1日目
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