「俺がパチンコ行ってんの言ったろ」
そう聞かれたんです。
僕は彼を見返して、
「言ってないですが、」
一息ついて、
「それで知りました、
彼は舌打ちすると、
また煙を吐き出して、
「いちいちうるせえよな、
俺が何しようが関係ねえじゃん」
「まあ…、」
僕はちょっと迷ったあとで、
「でも、みんな期待してるから」
「あんにだよ、俺にかよ」
「山野井さん、すごく才能あるからって、
みんな言ってて」
「ふっ」
彼は鼻で笑って僕の言葉を遮ると、
「馬鹿にしてんじゃねえよな、
誰が才能あるって?誰が期待してんだよ」
「いや、」
僕は、新聞屋でそれを話していた連中の
名前を出しました。
彼らも、ボクシングをやりながら
配達をしています。
山野井は、乾いた笑い声を上げて、
「んなわけねえじゃん、あいつらだって、
自分のことで精いっぱいなのによお、
なんだよ期待してるって、
俺に期待すっと、
あいつらなんか得するわけ?
ありえねえよそんなの」
「…」
まあ、確かにそうでしょう、
みながそう口にしているからって、
本当に期待してるわけでもないでしょう、
団体競技を、
みんなで頑張ろうって話でもないし、
ボクシングは、どこからどう見ても、
個人競技です。
一対一、あるいは、
自分との闘いしかないのです。
僕はそれでも、
「でも、みんなが勿体ないって言うのは、」
「お前さ、」
山野井は、僕の言葉をまたさえぎって、
「そんな人いいこと言うなよ、
要はよ、自分だよ自分、
それだけなんだよ」
吐き捨てるような言い方でした。
街灯の白い光の筋に、
彼の煙草の煙が交錯していきました。
誤解のないように言いますと、
16歳の僕にだって、
なにもそんな
偽善じみた世界があるなんて、
思ってはいないのです。
ただ、自分のことなら、
自分自身にだけは
正義の使徒でいないと、
誰も信じられないなら、
自分自身だけは信じないと、
そうでないと、
いったい何を糧に生きていけばいいのか、
暗闇の中で、わからなくなってしまう、
そういうことは、
感じていたのです。
プロジェクト498日目。
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2019/11/19 498日目
■kindle 本日0冊 累計75冊 達成率0.71%
■文学賞公募作品の執筆状況 1作目半分くらい ※まだ賞は未定
■kindleアップのため『桜の闇』を推敲中
158ページ中50ページくらい了
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『僕を知らない君へ』オープニング 1日目
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