【小説】浄化ビジネス〜男と自信〜 | ごっこ遊びdeキャラメイク☆ヒカリサス☆山本麻生(ヤマモトマイ)

ごっこ遊びdeキャラメイク☆ヒカリサス☆山本麻生(ヤマモトマイ)

成長するまでに封印したキャラをやりたいことに合わせてごっこ遊びで開放するキャラメイキングのお手伝い
漫画好き

 
波動うんちく入れた小説書きました。
 
 
近未来、AIによって単純作業は取って代わられ、時代は「人間にしかできないもの」が求められた。
 
機械ができないことが世の中から淘汰された結果、
スピリチュアルな面から人を支える分野は「波動業界」として、世間に浸透しつつあった。
 
波動業界の玉石混交な中、若い世代にも関わらずひときわ稼いでいる女がいた。
 
それが、神宮鈴である。
 
 
「神宮さん、今日のお客様は…」
衛は、タブレットに保存してある予約表を見ながら報告する。
家守衛は一人しかいない神宮浄化コンサルティングの社員だ。
秘書と雑用など、ありとあらゆることを引き受けている。
 
衛は、25歳であり、まだまだ社会経験が少ないために失敗することも多いが、充実した毎日を送っていた。
 
表参道のビルの2階に入っている小さな事務所は、応接室と従業員の集合場所としてしか機能していない。
 
毎朝、二人で予定の確認と軽い打ち合わせをすることにしていた。
こうして時間をとっておかないとお互いの話をちゃんと聞いていなくて何度もトラブルになったため、この時間は重要と言える。
 
 
神宮鈴は、今日もバランスのよい美しい肢体の線がはっきり出るワンピースを着ている。
体の線を隠すようなファションが流行する中、攻撃的ともとれた。
 
 
衛は、神宮鈴のそばで修行するうちに波動が少しずつ見えるようになり、そのエネルギーに負けないよう日々精進が求められた。
 
女性のエネルギーは両手を広げた範囲に広がり、男性のエネルギーは手のひらサイズの広がりしかない。
 
神宮のエネルギー範囲に入ると、いい香りやら体の線やらに翻弄され、どんな無茶振りでも「はい」と言ってしまうため、懲りた衛は狭い事務所の中で慎重に距離を取っておへその下あたりの丹田に力を入れた。
 
「衛、今日安間様いるのね…最悪」
予定の中にマッサージ店を営む男性がいることに神宮は顔を歪ませた。
長いまっすぐな髪は少しの動きでもはらりと揺れて、ほのかにいい香りがする。
 
安間は50代の男性なのだが、神宮を遠慮なくいやらしい目で舐め回すように見るのだ。
この仕事をはじめたときはわからなかっったが、エネルギーを見る目を鍛えていると、男性が発するエロ目がどれだけ女性を弱らせるかがわかるようになった。
 
女性は、鍛えなくても男性よりエネルギーが分かるような体の作りになっている。こんなエロ目に始終さらされているなんて女の人はがんばってるんだな、ということは大きな発見だった。
 

 

事務所から出ると、数件こなしてお昼を食べ、午後の安間の約束の時間になった。
店は、ビジネス街の雑居ビル5階にあり、安間は快く入れてくれた。
 
5階はすべて安間の店のスペースであり、一番奥にある事務所に案内される。
 
キャビネットに囲まれてはいるが、ほどよく整頓されてスッキリした空間のはじにしつらえられた衝立の裏。
せまいところに押し込められるように並ぶソファーとテーブルがいつものカウンセリング場所だった。
 
この店は、男性をターゲットにしており、サラリーマンの常連客が多い。
店もシンプルな作りで華美な装飾はない。
安間は従業員を数人抱える経営者であり、神宮とは年間契約を結んでいる。
 
軽い問診と浄化で2時間。
それを月1回受ける契約だ。
 
マッサージのような人の体に触って癒やす仕事は、邪気を受けやすい。
神宮の顧客の半分はマッサージやエステ関係者だった。
 
衛はいろいろな顧客と接する内に、男性をターゲットにしてこの規模の広さの店を維持して繁盛させ続けている安間は、経営能力が高いのだ、と最近気づいた。
 
油っぽく光る禿げた頭を耳元に残る白髪ボールが縁取っている。
「今日も家守くんいるのかい?
いなくてもいいんだよ。
ねえ、神宮ちゃん。
俺と神宮ちゃんの仲なんだから」
 
安間は古い顧客であり、衛より付き合いが長い。
こういったお顧客への防波堤として衛が雇われたことは入社してすぐにわかった。
 
「そんなことより」神宮は吐いて捨てるように話題を変える。「最近はいかがですか?」
 
神宮から拒否するエネルギーがトゲトゲしく刺さってくる。
ブリザードのように冷たくて痛いエネルギーに全然気づかない安間にいつも驚嘆する。
 
エネルギーが全く見えないのに、質の高いマッサージなんてできるのかいつも疑問だった。
 
いいマッサージ師はエネルギーをうまく使っている。女性は無意識に使っていることが多いが、男性は意識的に使っていることが多いとこの仕事をはじめてから知った。
 
あまりにも顧客に多いので、いろいろマッサージを受けてみた結果、衛も実感したことだった。
エネルギーをうまく使えていないマッサージを受けると、もみ返しがひどいのだ。
 
「神宮ちゃん聞いてよ。
最近、YOUTUBEはじめたら、すっごい体がしんどくてさー。
いつもより強めに浄化してくれる?
お酒とか暴飲暴食とか止まらないんだよ。
一段とお腹が出てきちゃって、ボク傷ついちゃう」
 
安間は、ニヤリと笑って、太鼓腹をぽんと叩いた。
ふざけて言ったかわいこぶりっこが、神宮と衛を貫いてぶるりと体を震わせたが、当の本人はうまい冗談を言えたと得心のいった顔をしている。
 
「家守さん準備をお願いします」
神宮の硬い声に衛の中に一本の芯が通る。
「はい」
と静かに返事をすると、カバンから塩を取り出す。
 
事務所の中の小さなスペースに、安間を立たせ、安間を中心に床に塩で円を描く。
結界を作ることは衛の仕事だ。
 
清浄な空間を。
整えられた空間を。
エネルギーが通りやすい空間を。
 
衛の準備が終わると、神宮が安間の背に立ち、手を合わせて祈りを上げる。
それほど大きくない声が、安間の汚れを飛ばして整えていく。
衛はこの時間が好きだ。
 
神宮が、最高に神秘的に輝く瞬間。
 
最初の文言は衛がまだ理解できない言葉を綴る。
だんだん日本語になっていく。
 
安間は目をつぶったままどんどん顔が赤らみ、汗が滴り落ちる。
安間を害するものを焼ききっているのだ。
内なる力を呼び起こし、整えていく。
 
そして、仕上げに入った。
 
我は神の宮
我の音に力を
我は鈴
音に力を
この者を光り輝かせたまえ
 
神宮の声いに安間がぐらりと揺れたので、衛は腰に手を当てて支えた。
安間が揺れることは珍しかった。
いつもどっしりとしているのに。
 
浄化が終わると、安間はぐったりとソファーに腰かけた。
 
「安間さん」
神宮は、祈りを上げるときの通る声から普通の静かな声に戻って言葉をかけた。
 
「今、女性と付き合っていますね。
あなたには向きません。
このままだと危ないですよ」
神宮は無表情だった。
 
「誤魔化せませんなあ」
と安間は力なく笑う。
 
二人はマッサージ店を出た。
 
衛が次の予定っと移動時間を計算しながら、
「今日も安間さんの冗談…絶好調でしたね」
と横を見ると神宮が必死の形相でスマホに何かを打ち込んでいる。
すると神宮に電話がかかってきた。
「開先生ありがとうございます
実は…」
 
次の約束まで時間がある。
神宮の電話が終わることを待って、喫茶店に入ることにした。
「安間さん、女性と付き合ってるって、結婚してましたよね」
 
神宮はむっつりしている。だいぶ怒っているらしい。
この人の下について1年。
この顔は話をしたい顔だと学習した衛は、話し出すツボを探して安間の話題をいろいろふってみた。
 
「あのジジイ…」
と神宮は悔しそうな顔をした。
「あの人はね、自分に自信がなくなると自分責めしそうなおとなしい女の子をうまく誘導して自分の女にするのよ!」
 
衛は、人生の不平等を感じながら、じっと話を聞いていた。
あのハゲデブに女がすぐにできて、若くて細身の衛はヤれない上に女に振り回される不条理。
 
「しかも、相手を幸せにする覚悟もないし、女の子の恨みの念もそのまま貰っちゃう」
 
衛は、飲もうと手にしたコーヒーカップをコースターの上に置いて、勇気を出して聞いてみた。
「相手を幸せにする覚悟があれば、浮気をしてもいいんですか?」
 
「社長なんて、清濁開放しないとエネルギーなんて出ないわよ。
英雄色を好むって言うでしょ!
モテたいとか、浮気相手に貢がないといけないとか、そんな理由で稼げるならいいじゃない。
 
そんなところで自分をジャッジしてる人を相手にしてたら、私が儲からないの!
 
私の美貌で集まってくるんだから、それぐらいのバイタリティがあるに決まってるでしょ!」
 
衛は「適材適所」と「需要と供給」という言葉を思い出していた。
 
ネットを駆使して、自分好みの顧客を捕まえることができるこの時代に、神宮が顧客として抱えているのは、
神宮をいつかモノにできるのではないかと下心を抱えて大きく稼いで、
たくさんお金を払ってくれる男達なのだ。
 
法律というルールだけでなく、慣習を守って、小さく生きるサラリーマンは浮気願望がなくて安全だとしても相手にしたくない。
そういうことなのだ。
 
「安間はね、自分も相手も幸せにできない本当に不毛な付き合いしかできないクズよ!クズ!」
 
神宮は、紅茶と一緒に頼んだケーキをガツガツ食べている。
予想より大きな浄化を行うとお腹が減るらしい。
 
「お互い不幸になるのよ!…これ、甘くて美味しい…」
 
味の感想を言い始めたということはちょっと怒りがおさまってきたのかもしれない。
 
「ワークで自信を取り戻してから、ずっとおさまってたのに!
 
動画はじめたって言ってたでしょ。
昔の女達に見つかって怨念もらってるから、これ以上は女の私には手に負えない。
 
男に鍛えてもらって基礎力上げてもらわないと」
 
その言葉に衛の中で一本の線がつながった。
「さっきの電話は、開先生に引き継ぐためにお願いしてたんですか?」
 
「そうよ!」
ケーキはきれいになくなっていた。
 
神宮は、紅茶を飲み干し、うつむいて絞り出すように「悔しい」と言った。
 
「アイツからちゃん付けを取るまでは私の顧客でいてほしかったのに!
 
1ヶ月の間にどんだけヘマやってるの!」
 
大粒の涙がぽろりと落ちた。
神宮はよく泣く。
最初の頃はびっくりして逃げたくなっていたが、最近やっと慣れた。
女性は泣くと浄化になるらしく、神宮は泣きたいときはわざと煽って泣いてしまうらしい。
 
「化粧直してくる」
全部話して泣いたらたらスッキリしたらしい。
清々しい顔をして歩いていく。
 
どんなにイヤな顧客だろうと、
「稼がせて幸せにして、信頼を勝ち取る」
という信念で動いている神宮は、どんなにひどい扱いを受けようと、かっこいいなあと思いながら背中を見送った。
 
 
後日、衛は、神宮に安間のことを話題に出してみた。
 
「開先生の男だけのセミナーに何回か出て鍛えてもらって状態が落ち着いてきたら、また私の顧客に戻ることになってる」
 
と神宮はさらりと言った。
 
「また、顧客になってもらうんですか?」
 
「いらないって言われるまでは支えますよ。当然でしょ。それが私よ」
 
これがプロかあ、と衛はため息をついた。
 
「安間さん、すべってること気づかないぐらい空気読めないのに、マッサージしたり、口説いたりすごいっすね」
 
「ああ、安間さんはね、触覚で読み取る人なの。
衛は視覚が強いから、不思議に見えるかもね。
触ると全部分かるのよ。
どこが疲れているのか。
どうやって誘えばついて来るのか。
 
しかも社長やってるとエネルギーが強くなるし、エネルギーの使い方も知ってる人だから、気が弱い女の子だとなんとなく逆らえないのよ。
 
だから、同意に見せかけたほぼ無理矢理だから女からめちゃくちゃ怨念もらうわよね。
当然よ。
 
女を幸せにする気がない男って最低!
 
あの人には触らせたらアウトよね」
 
どす黒い闇をさらりと言われて衛は全身に冷たいものが走っていった。
さらりと話題にする神宮の中はどうなっているのか不思議すぎる。
 
神宮は、衛をじっと見つめる。
 
「エネルギー勉強してると、女性のこと誘いやすくなると思うけど、変な使い方しないで…そっか、マ・モ・ル・くんには、無理だっけ」
 
神宮はマモルの部分を区切るように言って、最高にイヤな顔をした。
 
「女に逆らえない因縁持ってるもんねぇ。
忘れてたわぁ」
 
一人で言って一人で笑っている。
 
「そうですよ!
俺には無理ですから!」
 
そう、家守衛は女に逆らえない。
女特有の表面上のイヤでも、イヤと言われたことはできない。
 
親が離婚して、女ばっかりの家で育ったせいだと思っていたが、神宮に言わせると生まれ持った因縁らしい。
 
衛は、神宮の下で働きながらエネルギーを学ぶことで、少しでもこの因縁を軽くすることを目標としていた。
 
絶対この因縁から逃れてやる!
まだ一人で笑っている神宮を見ながら、衛は決意を新たにしたのだった。
 

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