天国⑤ | ごっこ遊びdeキャラメイク☆ヒカリサス☆山本麻生(ヤマモトマイ)

ごっこ遊びdeキャラメイク☆ヒカリサス☆山本麻生(ヤマモトマイ)

成長するまでに封印したキャラをやりたいことに合わせてごっこ遊びで開放するキャラメイキングのお手伝い
漫画好き

「あいつら相変わらずだねぇ」

貴子が男どもの後ろ姿を見送りながら、
デザートの「たけの子の里」をつまむ。

すぐにいなくなることを経験で知っていた二人は、

男どもがいる間

なんとなくしゃべることをやめて
食べることに専念していた。

「ここって、ブラックかなぁ?」

食べることが遅い晴美は、
そうつぶやいて最後のドレッシングまみれの
キャベツをかき集める。

「ハァ?何言ってんの?

通勤時間なし。

残業なし。

貯金がしやすくて、漫画が読める。

こんな職場ないよ!」


給料のほとんどは、住宅手当やら、
食費で飛んでいくけれど、
使うところがないから、お金が貯まる。

現に、晴美は努力することなく月五万ためている。

船とはいえ、公園とプールを完備し、
お金を出せばエステもある。


休日は、Cレベルの本なら読み放題で、
絶版漫画も多数あるから飽きることがない。

ネットにつなげることはできないけど、
電源は使えるので、ゲーム機を持ち込んで
延々やってる人も多い。

元々漫画とゲームにしかお金をかけない人間が
中心に集まっているから、
漫画があれば文句なく働く人ばかりで、
他人に干渉してくる人も少ない。


「楽だよねぇ」

晴美は、食後のコーヒーを堪能しながら、目を細める。

「晴美、おばあちゃんみたい。

もうそろそろ行こ。私ゲームしたい」

二人とも若く見えても四十を越えており、
結婚も恋愛も子供も諦め、仕事でキャリアも作れず、
趣味に生きてしまった身としては、
この船は天国のような場所だった。


「おばあちゃんって洒落にならん。

今日お風呂一緒に入る?」

「やめとく。晴美なかなか来ないんだもん」

晴美は、満腹感で眠たくなる目をこすりながら、
貴子と別れてCレベルの倉庫へ向かった。

倉庫が閉まる前に今日読む本を借りておかなければ。

晴美は今日はどこの棚を攻めようかとわくわくしながら、
足早に狭い通路の奥へと消えていったのだった。