引きこもりに捧げる小説書きました | ごっこ遊びdeキャラメイク☆ヒカリサス☆山本麻生(ヤマモトマイ)

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成長するまでに封印したキャラをやりたいことに合わせてごっこ遊びで開放するキャラメイキングのお手伝い
漫画好き


他の小説家さんもよく書いてますが、

これから始まるのは小説で、
現実ではない。

ということだけ、確認してから
読んでくださいませ。

私にセンスがありまくりだからって、
臨場感半端なかったって、
小説だということを
ご理解くださいませ。





両親の死 堕ちた心

母が死んだ。

父親を介護して看取った一カ月後に、
力尽きたように死んでしまった。

私は両親が歳をとってからの
子供だったけれど、
まだ30歳という年齢で
天涯孤独になってしまった。

葬儀社に言われるままの数日間。

親戚付き合いのなかったおかげで、
地元の数少ない友達と
両親が仲良くしていた
ご近所さんのおせっかいで
なんとか葬儀を迎えることができた。

会社へ復帰する日数計算をしながら、
実家の畳の上に体を放り出す。

緊張が解けると、
体が嫌に重く感じられた。

「これで自由」

ふと意味も分からず出た言葉が
スイッチだったように、
私は暗闇に包まれる。

体に力が入らない。

何が起こったのかつかめないまま、
眠りに落ちた。





「…すみません…」
のろのろと電話を切る。


私は、それだけのことで
糸が切れたように動けなくなった。

全ての力を振り絞って
会社に電話を入れた。

「しばらく休ませて欲しい」と
言いながらどこかで「ざまあみろ」
と思っている私がいた。

何に対してかは分からない。


「いつ出れる?」

という言葉の返事を濁す自分は、
いつも妄想していた自分だった。

会社に行けなくなる自分を
私はいつも待っていたのだ。

会社にいけなくなるほど
弱ることを夢見ていた。

会社に思い知って欲しかった。




いつの間にやら実家の近くに
できていたコンビニは、
私の引きこもりを助けてくれた。

食べるためだけに毎日を過ごす。

友達に電話する気も起こらない。

友達に言われることは分かっている。

でも聞きたくない。

私は今動けないのだ。

動けないから、
ひどいふるまいをしても許されるハズだ。

毎日毎日寝ることしかできない。

食はどんどん細くなっていく。

私の体は絶対的弱者になった。

もう、誰にも「私」を見せなくていい。


世界を裏切ることはなんて
気持ちいいのだろう。

落ち込んでるはずの心は
昏い悦びに打ち震える。



私は仕事も辞めることにした。

両親の遺産は、私をしばらく
堕落させるぐらい残してくれていた。

何をがんばっていいかも分からないまま
仕事を続けられるほど私は強くなかった。





誰にも会うこともせず、
ひたすら眠るか、ぼそぼそと
コンビニの弁当をつつく日々。

テレビも辛くてしばらく
見ていなかったけれど、
ふと何気なくつけてみた。

気になっていた映画を見つけて、
チャンネルを合わせる。

5分ほどのニュースがはじまる。

ニュースを見るだけで吐き気がしてから
しばらく縁遠かったけれど、
もうそろそろ大丈夫かもしれないと
期待を込めて見てみることにした。

たった5分。

政治関係でもやってしまえば
あっと言う間に終わる。

元気だった頃は何も気にせず、
職場での話題作りにしようと
積極的に見ていたのだから。

ひさしぶりの勇気。

私はもうそろそろ寝ることに
飽きてきたのかもしれない。




「…母親を殺害したとして、
23歳の女性…逮捕され…」

何かの布に覆われた顔から、
目が私を射る。

―あれは、もう一人のワタシだ。

私は必死にリモコンを手繰り寄せ
テレビを消し、トイレに駆け込んだ。

コンビニ弁当が全部出てしまった。

私は敷きっぱなしの布団に入る。

両親が死んで初めて涙が出た。

「お父さん、お母さん、ごめんなさい。
私は、あなたたちがキライだった…」



私はいつも居心地の悪い思いをして
この家で生きてきた。

今思えば、父も母も少し
押しつけがましいだけの普通の人だった。

けれど、ずっと、
「両親の気持ちを満足させるだけの道具」
としか自分を思えなかった。

ワタシを思い通りにすることが、
あの人達の教育だった。

ワタシはそれをはねのけられるほど
強くなかった。

操り人形のように、
私には糸がついていて、
気づくと親の思い通りに動いている。

家から出ても変わらない。

私は、親の喜びそうな会社を選んでいた。

親に「幸せだ」と
見せるためだけの人生。

彼氏も作らず、自分を追い詰めて、
「お前たちの教育は糞だ。
お前たちの生んだものは、
こんな糞なのだ」
と見せるためだけに生きていた。

そして、そんな私を両親は喜んでいた。

余計に私は苦しくなっていた。




世の中は「愛情神話」にあふれている。

そして、私も「愛情神話」を信じていた。
親の愛に気づけば、
自分は救われると思っていた。


両親が死んでから、
私は実家という「愛の結晶」に
こもることで、親の愛を探し続けた。


証拠品を突き付けて、
自分に何度も何度も
「親の愛」を納得させようとした。

証拠を確認するほど、
どんどん自分の体は動かなくなった。

私に奇跡は起こらない。

自分を惨めにさせるだけだった。

私はやっぱり、
愛することができないのだ。

罪悪感は私を打ちのめす。



私は両親に愛されたのに、
両親を愛せなかった子供。

それが私。

「ごめんなさい」
いくつもいくつも涙が出た。

親の糸が切れ、うれしかった。

あなたたちの死を喜んでごめんなさい。

社会のクズになることで許してください。

あの目ができるほど
強くなりたかった。

「アイセナイ」ことを言って
しまいそうで、反抗期も
満足にできなかった。

私は、両親の前でいつも注意深く過ごす。
自分の罪が分からないように。
最初は確かに親に見せるためだった。
でも、本当は愛せないことを
自分にも誰にも見せないためだけに
生きていた。

「アイセナイ」ことを
誰にも知られたくなかった。

私はひたすら泣き続ける。

その涙さえもあの人達のためではない。


自己憐憫で泣き続けていた。





心屋のひとたちが
ざわっとするように
わざと書いてます。



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