「おつかれさまでした」
と、口々に言いあい、
カートを自分のロッカーにしまって仕事を終える。
貴子と晴美は、仕事を終えると
すぐに食堂へ行くことにしていた。
終業は五時とは言え、体を使うので、
ものすごくおなかが減るのだ。
「今度はアメリカだって」
貴子はハンバーグをほうばりながら、
モニターを見る。
モニターには、次にいつどこへ寄るかと、
降りれるかどうかが表示されている。
モニターの表示が変わり、
「甲板に出て陽に当たろう」
「電波時計、時刻の修正、確認を。
うっかり遅刻を失くそう」
「とびこむな。泣きたくなったら、保健室」
など、この船の中で注意すべきことが
CMのように流れている。
二人がぼんやりモニターを眺めていると、
隣のテーブルに、うるさい男三人が座った。
人数が多いとはいえ、
数カ月もいればなんとなく顔を覚えてくる。
晴美は顔をしかめて、貴子を見た。
貴子も気づいたらしい。
横に来たのは、二人が苦手なグループだった。
「ここブラックだよなぁ」
「給料安すぎなんだよー」
「こんな刑務所とはオサラバしてぇ!」
「あー、地上が懐かしい!」
男どもは、叫ぶようにさんざん愚痴った後、
十分ほどで夕食を終わらせ、嵐のように去っていった。