年齢不詳の小柄な人だ。
挨拶の後に簡単な申し送りが終わると、
晴美達はそれぞれカートをひっさげ、倉庫に繰り出す。
無秩序に漫画の入った段ボールを崩し、
膨大に広がる本棚に区分けしていく。
本の状態や作者によって仕分けされ、
巻数がそろっているものは、
完結しているかどうか確かめてキープする。
倉庫は基本的に静かなので、しゃべりたくなったら、
リーダーのいる部屋に戻る。
最初に集まったこの部屋では、
段ボールから出した本を分別したり、
リーダーが検品して終わったものを
セットにするためパッケージしたりする。
検品から弾かれた漫画の中に見覚えのあるセットがあった。
「十二巻染みあり」と書かれた付箋が貼り付けてある。
晴美は、小さい付箋のついたページをめくり、変色した個所を見つけた。
―よく見つけたな…こんなの。
作業効率から考えて、
一ページ一ページ細かくみるわけにいかず、
ざっとめくって調べてるはずなのに、
花絵のチェックは本当に厳しい。
花絵を尊敬しなきゃと思いつつ、
めんどくささが混ざったなんとも言えない気持ちになる。
晴美はそのセットを自分のカートに乗せると、
倉庫に踵をかえした。
「あれ、もう戻るの?」
先に戻っていた貴子が声をかけてきた。
晴美は付箋のついた本を見せる。
「じゃ、これもついでに」
と貴子が自分のカートから、付箋のついたセットを移動してきた。
仕事はチーム制で、一日につぶす段ボールの数と、
完成セットの数がノルマに達していればいい。
晴美は、はいはいとセットを引き受け、倉庫に戻った。
染みのある漫画本をページに付箋をつけたままBレベルの棚に移す。
Aレベルから、代わりになれる本を探さなければならなかった。