ディオンヌ・ワーウィックの『バート・バカラックを歌う』(Burt Bacharach Song Book)やニルソンの『ランディ・ニューマンを歌う』(Nilsson Sings Newman)という感じだろうか。名歌手が名作家の名曲を歌うという趣向だ。
そのアルバムの発売を記念するライブは“山下久美子 with Band”として、後藤秀人(G) 、伊藤隆博(Key)、千ヶ崎学(B)、椎野恭一(Dr)、ビリー・ジーン(A.S)というお馴染みのメンバーが彼女を支える。彼らは2月28日(日)に山下久美子の故郷・大分のライブハウス「BRICK BLOCK」で凱旋ライブ「KUMIKO YAMASHITA 〜MELODY from OITA〜」を行ってきたばかり。バービーボーイズのいまみちともたかをスペシャルゲスト、大澤誉志幸をシークレットゲストに賑々しく、故郷に錦を飾る。大分のラジオ特番にも出演。地元ならではの寛いだ番組と話題にもなった。
この日、アンコールには康珍化が書いた新曲「もっとやさしく」も“山下久美子 with Band”として披露された。同曲、作詞は康珍化、作曲は mei / 成海カズト / YASU、編曲はYASUになる。お馴染みの作家ではなく、作曲・編曲は敢えて若手と組んでいる。彼らはKinKi KidsやKing&Prince、SixTONES、氷川きよし、嵐……などを手掛けている。懐古や郷愁ではなく、新たな世界を目指し、冒険や実験をするところが山下久美子らしい。ドラムンビートやテクノなどを彷彿させる曲調で、ダンサブルに躍動していく。山下の新世界を伺い知れる。
もう一昨日のことになるが、3月3日(火)は東京・渋谷「ラママ」(渋谷La.mama)で開催されたイベント「GIRLS' SOUND STREET LIVE」を見る。知り合いに見て欲しいバンドがいると言われて、同所に出向いたが、いきなり、佐野元春や坂本龍一、山下達郎、甲斐よしひろ、川村恭子、渋谷陽一などがDJとして出演した伝説の音楽番組『サウンドストリート』(1978年11月23日から1987年3月20日までNHK-FMで放送された)のプロデューサー湊剛さんが開会の挨拶をしていて、驚く。この「SOUND STREET LIVE」は同番組のライブ版で、渋谷ラママにて昨2025年からイベントを開催しているという。齢82でステージに立ち、自ら仕切る。頭が下がるばかり。こんな先輩がいるから、僕たちは素敵な音楽と出会えるのだろう。
この日の出演は実績も人気も実力も充分という松田樹利亜 、DOLL PARTS 、PINK DIAMOND 、Aishaというガールズロッカーが顔を揃え、ZIGGYの森重樹一が黒一点、華を添える。「GIRLS' SOUND STREET LIVE」という3月3日の“雛祭り”に相応しい、『サウンドストリートライブ」の特別ヴァージョンだ。
彼とは2020年2月に東京・中目黒「ウェーブス中目黒」で「Case-K Moonshine」としての初の個展『AGITATION/Case-K Moonshine』で会った以来だから6年ぶりになる。きっと、月光さんも来ると思っていた。彼は松田樹利亜もZIGGYもプロデュースしている。そして私自身も彼のプロデュースしたZIGGYやSHADY DOLLS(シェイディドールズ)を度々、取材している。シェイディドールズでは彼と一緒に彼らの初の海外レコーディング(1987年にリリースされたセカンドアルバム『BLOW YOUR MIND』のロンドンレコーディング)へも行っている。そんな縁もあり、現在、ソウルフラワーユニオンやリクオ with HOBO HOUSE BANDで活躍する高木克の近況もことも話したかった。彼は昨年のツアー中に事故に合い、暫く治療のため、活動休止していた。先日、リクオのライブで復活したことを伝えたかった。終演後、喫煙スペースで彼と久しぶりに話すことができた。勿論、高木の近況を伝える。月光自身は耳の不調のため、音楽制作の一線から離れたが、こうして自らの関わったミュージシャンのライブに顔を出し、手助けをする。実際、交流が途絶えても、ともに過ごした時間はかけがえのないもので、そのことを忘れない。高木もシェイディドールズで、月光に会っていなければいまの自分はなかったという。バタフライエフェクトーーその経験は未来へと繋ぐ。改めて湊剛や月光恵亮のこれまでの活動と今の行動に頭が下がる。まだまだ、やれることはしなければならない。現役の先達に見習うことはたくさんある。