PANTA(本名・中村治雄)が亡くなった。2023年7月7日、午前10 時44 分、肺癌による呼吸不全と心不全のため、永眠したという。享年73になる。6月14日にあれだけのライヴを見た後だけに信じられなかった。実は訃報を聞いたのは同日、恵比寿ザ・ガーデンホールで行われた『小坂忠メモリアルコンサート 一夜限りのTHE LAST SESSION〜with Chu's Friends』の開演直前だった。どんな気持ちで、このコンサートに臨めばいいのか、戸惑い、落ちつかない気持ちでいた。しかし、小坂忠の妻で、ミクタムレコードの代表・プロデューサーの高叡華がPANTAのメッセージを紹介し、その際、PANTAが逝去したことを告げた。変な言い方だが、とても一人では受け入れられない重い現実をその場にいる人達と共有できることに少し軽くなった気がした。
彼の取材をしたのはいつが初めてか、覚えてないが、PANTA&HALくらいからだろうか。彼を「ROCK STEADY」の表紙にしたこともあった(生憎、すぐには出てこなかった。誰か、上げておいて欲しい)。自慢ではないが、アルバム『R☆E☆D』は、PANTA が書いた未完の長編小説『闇からのプロパガンダ』を原作にした架空の映画のサントラというコンセプトなので、見ていない(というか、実在しない)映画の解説をAV評論家という肩書で書かせてもらった。いまにして思えば、かなり無理のあることだが、彼が持ってきた映画のスクリプトなどは、予算があれば実現可能という迫力があった。
また、PANTAとは取材だけでなく、実際に作品を作ったこともあった。元サディステック・ミカ・バンド、サディスティックスの今井裕のプロデュースで日英の俊英が参加した元イミテーションのCHEEBOのソロアルバムやTレックスのマーク・ボランのトリビュートアルバムなども作った。その天才的な閃きで一瞬にして光輝くものになる。クリエイターとしての凄味みたいなものを間近で体験させてもらった。
いろいろ、語りたいこともあるが、追悼文はあまり得意ではない。このくらいに留める。その代わり、かつて彼を取材した記事が出てきた。『ROCKSTEADY』の1980年12月号である。奇しくも表紙を鮎川誠が飾っている。PANTA&HALの2枚組ライヴ・アルバム『TKOナイト・ライト』の制作リポートである。短いものだが、当時の言葉に触れていただければと思う。とりあえず、これを掲載させてもらう。他に出物があれば、また、掲載する。改めて、彼への追悼と感謝の気持ちを表明させていただく。ありがとう、さようなら、ゆっくり、安らかに。SNSなどを見ると、優しい人という言葉がたくさん出て来ていたが、それに嘘はない。本当に優しい人だった。
そういえば、今は亡き吉原聖洋は『KISS』を世紀の傑作として、高く評価し、その良さがわからない音痴な半可通に挑みかかっていたことを思い出す。彼とも時々、話したが、『KISS』と『唇にスパーク』の再現ライヴを見たかった。
https://twitter.com/pantazkofficial/status/1677241050694549505
PANTA(本名・中村治雄)は2023年 7 月 7 日、10 時 44 分、肺癌による呼吸不全と心不全のため、永眠いたしました。享年73歳。
— PANTA頭脳警察オフィシャル (@pantazkofficial) July 7, 2023
この数年、闘病の日々でした。
闘病の中もROCK魂を貫き、最後の時まで現役の「ROCK屋」としての人生を全ういたしました。6月14日のライブが最後のステージとなりました。 pic.twitter.com/gyXwZW1tpF
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『TKOナイト・ライト』はドキュメントだ!
★7月7日 渋谷カワイ・ホール/新曲作りをしているところ
★ 7月7日 渋谷カワイ・ホール/パンタを囲んでミーティング
★7月16日 日本青年館/本番前のリハーサル。器材をチェックしている
★7月16日 日本青年館/タムコの録音車
★7月16日 日本青年館/本番
★8月11日 原宿ビクター・スタジオ/トラック・ ダウンをしているところ
パンタ& HALの初のライヴ・アルバム『TKOナイト・ライト」がついに発表された。これは7月16日、東京「日本青年館」でのコンサートのド キュメントだ。 そのドキュメント完成のため、それまでに数多くの準備がされた。 僕は運良く、その準備から、ライヴ・アルバムの完 成までに立ち合うことが出来たのだ。
ライヴ・レコーディングをするということはかなり前から決定していた。 いつ決まったかは覚えてないが、これを聞いた時、僕は期待感と不安感が入り混じった複雑な心境になった。 というのは4月23日、中野サンプラザでのコンサートで軽い失望を味わったからだ。何かパンタが斜に構えたようで、 パンタ&HALならではの“熱” が伝わってこなかった。
「まず、ここんとこ大きいステージがなかったから、自分の中で歌い方とか、動き方とかに対する革新的アプローチのとまどいが出てしまった。 あと、やっぱり曲順に問題があったんじゃないかな。 僕らは決して短かいとは思ってないんだけど、スピード感ばっかり意識してたから、ものすごく短かいように感じられたコンサートだと思う。 アンコール含めて、計1時間30分なんだから、そんな短かいはずはないんだけれども、やっぱりやってる方、見てる方もやり足らないような感じで終わってしまった。もっと大きな面でいえば、大人し過ぎたよね。 もっとハチャメチャになっても良さそうだもの。でも、こっちとしてはあの一連のコンサート (“1980X” ツアー)があって、 初めてステップアップしたと感じられる」
パンタ & HAL はライヴ・レコーディングのために7月2日から練習スタジオで、 新曲作りとリハーサルに入いった。 新曲というのは「TKOナイト・ライト」と「フロー・ライン」、「ベイビー・グッドナイト」、 「タッチミー」である。 「TKO-」は 『1980X』に未収録だったもので、 原題は 「ナリタ」。「フロ―」 は幻(!?)のアルバム『クリスタル・ナハト』のために作ったもの。
「『ベイビー・グッド・ナイト』 と『タッチ・ミー」はコンサート用なんだよね。あえてスタジオでレコーディングしようという気はない。 新曲で臨場感をあおるということだか ら、とっつきやすいっていうこと。 リズムにしても、とっつきやすいリズム。 エンディングにしても すぐ見えるようなエンディングとか、ブレイクだって客に分かる様に、 だか らどうしてもシンプルになっちゃう。 客とのコミニケーションをいやらしくなく出来るか というのを日本語でね」
この新曲作り、パンタがいっぺんギターでやり、それに対してメンバーが音を付けていく。 それを何度もやり直し、リズム、ブレイク、ソロはどうするか、アイデアを集めて、どんどんまとめていくのだ。 パンター人だけでなく、メンバー全員で作っている。 それも冗談を言ったりしながら、実に和気あいあいの雰囲気の中でだ。
「例えば『北回帰線』とか、ああいうやつは 無茶苦茶神経使うところあるけど、『タッチ・ ミー』なんか軽い感じだったから」
新曲作りは11日まで行なわれた。 14日、15 日はコンサートを想定した通しリハーサルで ある。 曲順が決まったのはコンサートの前日のこと。
「曲順にはえらい気を使った。 サンプラのパ ターンがあるから。 コンサートの前日は変に落ちついていたね。 間違えちゃったらそのまま入いっちゃうんだみたいなことでビビるってなかった。そうしたら修正すれば良いし、どうにでもなれって。 でも、間違えなければライヴじゃないっていうやつもいるし、僕も同感だしね」
エンターティメントを越えた 何かがある
7月16日 いよいよライヴ・レコーディンの日だ。 メンバーは器材のチェック、 音合わせに余念がない。 ホールの外側にはタムコの録音車がライヴ・レコーディングのためにセッティングされている。 パンタはノドの調子がちょっと良くないらしく、レンコンのジュースを用意している。ついに6時30分を少しまわった頃、 コンサ ートは始まった。 コンサート・ナンバー 「HALのテーマ」 と 「螺尾」、そして新曲「フロ 一・ライン」 「TKOナイト・ライト」と続く。
耳馴染みがないせいか、 客の乗りもいまいちのようだ。 しかし、それも「ネフードの風」、 「キック・ザ・シティ」から盛り上がり、「マラッカ」、 「つれなのふりや」で客が総立ちになった。 それはさらに「屋根の上の猫」 「マ ーラーズ パーラー'80」 でピークに達した。
この時すでに不安感など吹き飛び、 僕はパンタ& HALへの期待感、いや満足感でいっぱ いになっていったのだ。
「コンサート終わった時の感想って、一番好きだよ。車で一人で帰る時の雰囲気がね。 轟音の中にいるでしょ。 車の中で一人になると、僕の車ってこんなに静かだったのかと思う。何かホッとしたような感じ。 まあ、良いコンサートだったんじゃないかと思うけど。ただ出来れば、自分のコンディションとか、もっと良い状態で録りたかった。 普段間違えないとこで、間違えてるしね。 だけど動きが感じられれば良いというのがあるから」
コンサートの後、トラックダウンは8月8日から始まった。当初はダビィングとか、するはずだったが、 ドキュメント性を重視するために曲順を一部入れ替える以外は手を加え ないことになった。 12日、 トラックダウン が全て完了した。
「スタジオ録音の他人行儀なところと、ライヴ録音の生々しさの違いかな。 汗と動いてるという躍動感。 それを味わって欲しい。 トラックダウンの時も客席の後方で聞いてる感じじゃないんだよ。 聞いた感じがわりとステージにいる感じなの。 だからこっちサイドに立ったライヴ録音。 そういう臨場感を出していくパターンだから、客席で見てる感じと はまた違ったものになってると思う」
カッティングを経て、2枚組ライヴ・アルバム『TKOナイト・ライト』は10月5日。ついに発表された。拍手、歓声の中にいる自分を発見するのもいいだろう。 これはパンタ& HAL のドキュメントであるとともに、それに立ち 合った人達全員のドキュメントでもある。そ して、そこには単なるエンターティメントを越えた何かがあったはずだ。 それはパンタ& HALの“熱さ” 、“つき動かす力”……。このライヴ・アルバムをただのメモリーとするか、 今を生きている証のドキュメントとするか、それは明日のパンタ&HAL, そして明日の自分に掛っているといっていいだろう。
パンタは歌う。
おれの声が聞こえるか
おれの声に応えるか Yeah Yeah
「つれなのふりや 」パンタ & HAL







