Let's Go Steady――Jポップス黄金時代 ! -10ページ目

Let's Go Steady――Jポップス黄金時代 !

Jポップスの黄金時代は80年代から始まった。

そんな時代を活写した幻の音楽雑誌『MUSIC STEADY』をネットで再現します。

佐野元春の1990年代を代表する傑作にして日本の音楽史に確かな足跡を残す名盤『The Circle』 (オリジナルアルバムは1993年11月10日リリース)。同作の30周年記念エディション『The Circle 30th Anniversary Edition(完全生産限定盤)』(2CD+2BD)の12月25日のリリースを記念して、12月18日 (水)に全国13都市15館の映画館にて一夜限定で上映される『The Circle Tour Final 日本武道館ライブ 1994.4.24』(12月15日<日>には18日同様、佐野元春も登壇するプレミア上映も行われる)。同映画は全26曲・2時間40分という伝説のステージをほぼ完全な形で収録している。

 

 

アップコンバートして全編再編集、高画質で生まれ変わった映像と、マルチテープからリミックスし、劇場版5.1chマスタリングを施した音源を使用。30年前の日本武道館の熱狂を真空パック。

 

 

同作品を試写会で見たが、その迫力と同時にバンドの息遣いに驚かされる。あの日の感動が蘇るという、月並みな表現になるが、同映画を体験していると、あの日に引き戻される。同作は30周年記念エディションにも収録されるが、是非、機会があれば“映画館”で見て欲しい。同作品は改めて「SOMEDAY」や「Rock&Roll Night」など、佐野元春の名曲達がザ・ハートランドとともにあること、当時の最新作『The Circle』の重要性と同時代性を再確認させる。英国ジャズ&ロック界のレジェンダリー・オルガン・プレーヤー&シンガー、ジョージィ・フェイムの参加など、前年、1992年7月22日にリリースした『Sweet16』 と双璧をなす“連作”については改めて語る機会もあると思うが、いまはまずは同映画を体験することをお勧めする。

 

 

このメンバー(古田たかし<Dr>、小野田清文<B>、西本明<Kb>、阿部吉剛<Kb>、長田進<G>、石垣三十郎<Tp>、ボーン助谷<Tb>、ダディ柴田<Sax>)だからこそ、作りえた世界かもしれない。佐野元春のキャリアに置いて、何度ものピークは彼らの存在があったからだろう。バッキングヴォーカルとしてゲスト参加したメロディー・セクストンとポーラ・ジョンソンの活躍も見逃せない。ザ・ハートランドの音楽にさらなるソウルとスピリチャルを持ち込んだ。

 

 

 

佐野は同武道館公演後、ザ・ハートランドの解散を正式に発表している。30年前のことを改めて振り返る絶好の機会ではないだろうか。当時、見た方は勿論、見逃した方こそ、是非、見てもらいたい。それは単なる郷愁や懐古を超え、現在を照らし、未来への航路を指し示す。

 

 

 

特別な献辞を小野田清文さんへ 

ザ・ハートランドのビートとリズムを支えたベースの音色は忘れません。

 

 

 

 

 

一昨日、12月6日(金)は東京「新宿ロフト」で開催された友川カズキ・デビュー50周年記念コンサート「一人ぼっちは絵描きになる」を見る。“シティポップの貴公子”と言われる(嘘!)私だが、以前、小川真一さんが上梓した『フォークソングが教えてくれた』(マイナビ新書)とシンコーの荒野政寿さんが編集した『URCレコード読本』(シンコーミュージック・エンタテイメント)を紹介した際に“隠れフォーク派”であることをさりげなく自白(!?)している。

 

友川カズキの50周年。行かない訳にはいかない。何しろ、あのサミー前田のプロデュースだ。そして遠藤ミチロウや戸川純との共演、また、下山淳とのコラボレーション、さらに元ミッシェル・ガン・エレファントのクハラカズユキとのユニット「M.J.Q」で活動する山本久士がゲストとして出演する。いま一番気になる歌い手であり、ギター奏者である。どんな化学変化が起こるか、興味は尽きない。

 

友川カズキ発、遠藤ミチロウ経由、山本久士行きか。一筋の線が見えてくる。曲がりくねり、上り下りの多い、悪路だが、友川は淡々と歩み続ける。情念と怨嗟と反骨の歌を洗練と前衛の音で包む。その歌と音は連綿として続き、感染力の強いウィルスをまき散らす。とんでもないものを見てしまったと言っていいだろう。

 

50周年は単なる名目。友川カズキは時代の遺物などではない。現役の闘志が軽妙と洒脱で照れ隠ししながら、これでもかとパンチを繰り出し、車券を賭け続ける。新旧の名曲を披露しつつ、時代を超えて、凄味を増している。この5月にリリースされた最新作にして50周年記念リリースのアルバム『イカを買いに行く』は8年ぶり、26枚目のオリジナルアルバムながら、その溌溂ぶりに驚く。

 

すべてが見どころと言うべきライブだが、山本久士が嬉しそうに歌い、演奏していたのが印象的。この日、友川がちあきなおみに提供した「夜に急ぐ人」を歌い終えると、最後には客席の後方で、しっかりと友川を見ていたのが私的には心に残る。大役を果たして、お役御免と、あとは自分自身もこの日のライブはしっかり楽しみたかったのかもしれない。そんな彼の思いを知れただけで嬉しくなるというもの。

 

衰えを知らない友川の歌と、彼の歌を包み込む永畑雅人(パスカルズ)のキーボード、華やかさを添える松井亜由美(パスカルズ)のバイオリン、そして、友川を刺激し、時には対峙するTOSHIこと石塚俊明(頭脳警察)のドラムとパーカッション。彼らでなければ2024年の友川カズキは表現できなかったかもしれない。友川は何度もメンバー紹介をしたのが印象的。また、ちあきなおみが降臨したかのような、飛び入りで「夜へ急ぐ人」を歌ったタブレット純も楽しませてくれた。

 

15分の休憩を挟み、約3時間近い長丁場ながらこれは見るべきライブ。配信もある。是非、見ていただきたいもの。友川とTOSHIの「トドを殺すな」に震えて欲しい。

 

なお、配信は以下を参照。アーカイブで12月20日(金)23:59まで視聴可能。

https://twitcasting.tv/shinjukuloft/shopcart/338496

 

 

 

セットリストなどは以下に掲載されている。

https://x.com/voltagerecord/status/1865377606176268500

 

 

 

 

https://x.com/voltagerecord/status/1859765549028475385

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

Beat Goes On――つい使いがちな言葉だが、それを実感する瞬間は、そうたくさんあることではない。昨日、12月1日の日曜日の夜、それを改めて再確認する。

 

12月1日(土)、東京・高円寺「Show Boat」で開催されたsami“PRESENTS”「NAKED SONGS vol.14 」。2010年10月に始まった同イベントも14 回目(実際はVol.10 は前編・後編開催なので同回を含めると15回)になる。佐野元春ドキュメント『路上のイノセンス』の著者として知られる音楽ライター&シンガーソングライター下村誠が行っていた詩と音楽のイベントの精神を引き継ぎ、ビート詩人やビートに影響を受けた音楽を紹介してきた。Samiこと、若松政美という若者(という年齢ではないが、その風貌と行動を見ていると、つい、そう表現したくなる)のわがままと無茶ぶりから始まったものだが、知らぬ間にたくさんの種を蒔き、ザ・サブタレニアンズという収穫を生んだ。ザ・シェイクスの黒水伸一、THE BRICK'S TONEの篠原太郎、the LEATHERS のCROSS、久保田敏明の4人が結成した新時代のビートバンドの誕生は、このイベントでの共演が契機である。彼らはともにビートを紡ぎ、新たな歌を作った。この3月にはデビューアルバム『All Doors Are Open』をリリースしている。同作はビート界隈だけでなく、多くの音楽ファンに絶賛された。この10月には名古屋、京都ツアーを経験(同ツアーの模様を黒水が嬉々としてSNSに公開している)。「NAKED SONGS 」へのバンドとしての出演は4年ぶりになる。

 

 

この日、さいとういんこ、カワグチタケシ、URAOCBという3人の詩人が集まった「POETS on Sunday」、「翼の折れたエンジェル」など、数多くのヒット曲を持つシンガーソングライター高橋研のアコースティックユニット「KEN TAKAHASHI&the acoustic gentlemen」( 高橋研・中井いち朗・吉岡誠司・佐藤史朗)、そして「ザ・サブタレニアンズ」がビートの宴を繰り広げる。見どころ、聞きどころは多々、あったが、この日の白眉はアンコールでさいとういんこが天と地を結ぶ、虹と龍という言葉を引用してポエトリーリーデイングを行い、それに繋げる形で、ザ・サブタレニアンズと高橋研が下村誠の「虹の戦士」を披露したところ。まさに時代と世代を超えてビートは続いていくことを実感する。

 

また、最後には「NAKED SONGS」の第1回に新曲として披露され、それ以来、出演者で歌い継いだイベントのテーマ曲といえる「BEAT GOES ON〜吠える言葉〜」(ザ・サブタレニアンズのアルバムに収録された!)が披露される。下村誠の歌と音、詩とビートが生んだ奇跡。たくさんの応援と助力を得て、継承される。イベンターとしてはまったくの素人の若松政美が成し得た。こんなイベントは、そうあるものではない、痛快ではないだろうか。

 

 

下村誠は2006年、享年51と若くして志半ばに亡くなったが、彼の意志と遺志を引き継ぎ、そこから新しいものが生まれる。本イベントだけでなく、来年、2025年3月9日(日)には吉祥寺「MANDA-LA2」で下村誠の歌を唄うコンサートも篠原太郎や西本明、そしてザ・スナフキン(1990年代に下村誠withザ・スナフキンとして結成され、活動するが、活動停止。2019年に開催された「下村誠の十三回忌ライブ」を契機に活動を再活)が参加して行われるという。円環のようなものも感じる。

 

下村誠の文章などをまとめた書籍「音楽(ビート)ライター下村誠アンソロジー 永遠の無垢 」(大泉洋子 )も出ている。そんなことを思うと、自分がしなければいけないことも見えてくるのだ。下村誠と同じく佐野元春の評論やインタビューで知られる吉原聖洋の言葉を残し、彼の意志と遺志の継承という作業をするべきという思いを抱く。まだ、こんな私でもやらなければいけないことが多そうだ。

 

ビートは続いていく――それを改めて再確認するとともに自分も単なる傍観者ではいけないと、発破をかけられた(というと大袈裟か、背中を押されたという感じだろうか)日曜日の夜だった。