渋谷公会堂で“大人の文化祭”開催!「パール兄弟40周年 未来はパール2026」 | Let's Go Steady――Jポップス黄金時代 !

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先週末、10月3日(土)は東京・渋谷「LINE CUBE SHIBUYA」で「パール兄弟40周年 未来はパール2026」を心から堪能する。彼らは2年前、2024 年に「ROAD to KINGDOM 〜目指せ、渋公3か年プロジェクト〜」をスタートさせたが、ようやくこの日、無事にゴールを迎えた。パール兄弟は1988年3月22日(リヴォルーション・ツアー'88”)、1989年6月5日(“TOYVOXツアー”) 1990年6月26日(コンサート・ツアー“プルプル大作戦”の初日に窪田晴男がこのツアーをもってパール兄弟を勘当<脱退>することが発表される)、1992年4月(歌手のイルカをゲストに“イルカショー”)など、渋谷公会堂でのコンサートを度々、開催している。当時、同所はパール兄弟にとって“HOME”だったのだ。

 

 

ただ、あれから30年以上経っている。途中にメンバーの入れ替え、活動休止などもあった。2003年に窪田晴男が復活し、再始動するが、“HOME”は“AWAY”になっていた。渋谷「クラブクアトロ」や原宿「クロコダイル」など、ライブハウスが彼らの“HOME”になる。事業規模の縮小などではない、渋谷を舞台にしたパール兄弟の歌と音は渋谷のライブハウスが嵌り、場が作るモードとともに新たな物語をみせてくれている。いつも超満員で、おしくら饅頭状態は窮屈に感じ、オールスタンディングだと足腰にくるが、決して嫌な疲れではない。適正規模――そのほどよさが心地良かった。かつて『六本木島』(1990年)というアルバムを出したパール兄弟がこの2月27日(金)に「Billboard Live TOKYO」(住所は港区赤坂、最寄り駅は六本木)に出演、彼らのライブを見たが、その歌と音が見事に嵌まる。バブル時代の六本木を思い出した。改めて彼らが都市の現在・過去・未来を歌っていたことを再確認する。

 

 

「ROAD to KINGDOM 〜目指せ、渋公3か年プロジェクト〜」を宣言した際、あまりに唐突に感じた。小室哲哉との共演など、別に“Jポップ”の荒波に巻き込まれることなく、唯我独尊の活動でいいのではないかとも思った。実際、小室がゲスト出演し、共演した昨2025年11月12日(水)の渋谷クラブクアトロ公演でTM NETWORKの「Get Wild」、「Self Control」、小室がレコーディングに参加したパール兄弟の「RUN-NEW バックステージ」」などを聞くと、まったく違和感がない。実際、TM NETWORK の同曲のギターは特にクレジットされていないが、窪田晴男が弾いているという(小室は彼の弾くギターのイントロでTM NETWORKの新たな視界が開いたという。その恩返しで共演したそうだ)。水と油と思っていたが、心地良いマリアージュを味合わせてくれる。同時にパール兄弟のメンバーのJポップへの“貢献”を噛みしめることになる。変なえぐみがないのは驚きだ。

 

 

この日は渋谷公会堂、スペシャル・ゲストにアニソンの女王と言われる水樹奈々(松永俊弥が長年、彼女のバッキングを務めていて、その縁で参加した)、ゲストに⼿塚眞(舞台総覧)、リーマンズ(ラッキィ池⽥、かとうけんそう、中嶋勇⼆、齊籐眞紀、林茂助、朝⽇太⼀)、そしてダンサー、振付の⾹瑠⿎という豪華な面々(+ペーソスの米内山尚人がギター他でサポート)がサエキけんぞう(Vo)、窪田晴男(G)、バカボン鈴木(B)、松永俊弥(Dr)という4人を支える。

 

 

いまのパール兄弟が渋谷公会堂にどれだけの人を集めるか――そんな興味を持って、見届けてやろうという心構えで来た方も少なくないだろう。数字がすべてを物語るわけではないが、質は当然として量にも拘りたくなるもの。会場に入ると、リアルタイムの同世代組(当然、高齢者!)だけでなく、伝説を追体験したいという後追い組(若年といいつつも中高年!)が駆け付け、席を占拠する。2階席は満席でないものの、ほとんど埋まっている。30年ぶりの渋谷公会堂にこれだけ人が集まるのは奇跡的ではあるが、彼らが3年をかけ、全国を回りながら宣伝活動をした成果だろう。2024年10月4日(金)、大阪・福島のライブハウス「THIRD STONE Fukushima」で元サディスティック・ミカ・バンド、サディスティックス、イミテーションの今井裕がゲスト出演した二人パール兄弟(サエキけんぞう+窪田晴男)のライブを見ているが、そこでも宣伝活動に余念がなかった。いい意味でその一生懸命さを間近で見れば、誰もが足を運ばずにはいられないだろう。

 

 

この日のステージ、開演時間の17時過ぎ、かとうけんそうの“影ナレ”から始まる。5分後、サイレンが鳴り響き、照明が当たると、そこにはデビッド・バーンを彷彿させるダブダブサイズのスーツを纏ったサエキけんぞうがいた。舞台には発砲スチロールと思しき、“落とし”や、“崩し”に使用するオブジェが雑然と建てかけられていた。「鉄カブトの女」をリーマンズの狂喜乱舞とともに披露する。いきなり会場はヒートアップ(死語!)。同曲を始め、「しがらみクラブ」、「歩きラブ」など、新旧の名曲を初っ端から繰り出す。予め、ネタバレになるが、ライブ後のXを見たらセットリストが掲載されていた。この日のコンサートはどうやら3部制で、第一部は「崩壊→復興」、第二部は「バブル」、第三部は「未来」とある。各部のテーマにリンクする形で選曲されているようだ。かとうけんそうの影ナレは各部の頭にも入る。これが絶品だった。彼は影ナレだけに影のMVP(勿論、リーマンズでも大暴れ!)だろう。

 

 

第二部では水樹奈々が登場する。流石、人気者。会場が沸き立つ。パール兄弟と水樹奈々のファンがその共演を心の底から喜んでいるのを感じる。きっと、双方のファンはこんな共演を夢想していたのではないだろうか。それが現実のものになる。

 

 

水樹は、自らのブログでも「勇気と希望をいただきました」と、その日の感想を書いているが、持ち歌を1、2曲、歌いにきましたというゲストではなく、第二部のテーマである「バブル」に相応しい選曲と立ち居振る舞いを持って参加。かの時代を彷彿させる豪華絢爛ぶりをそのパフォーマンスで見せつける。水樹は「COSMIC LOVE」を披露。同曲は水樹がヒロインとして出演している2008年放送のテレビアニメ『ロザリオとバンパイア』のオープニングテーマ。当時、タワーレコードのナビゲーターが大絶賛している。“同時点の水樹曲中で、もっともおしゃれなナンバーとして人気の高い、まるでピチカート・ファイブのナンバー”と評している。その言葉に嘘はなく、アニソンがピカート・ファイブへ。見事なメタモルフォーゼ。続いてサエキのリクエストで美空ひばりの「真赤な太陽」を歌う。お嬢感をばらまく。そしてパール兄弟の「江戸時代の恋人たち」では水樹がサエキとデュエットしている。後述するが、彼女はアンコールにも登場。さらに2曲も歌っている。水樹が華やかさと雅さをステージに加える。90年代バブルは何処か。まさにここにあった。そういえば9月30日(水)に渋谷のランドマーク「西武」が閉店になっている。なんというタイミング。私達は渋谷公園通りを上り、渋谷の栄枯盛衰の物語りを体感する。第二部はバカボン鈴木の華麗なるスティックソロにキング・クリムゾンがひょっこり顔を出し、⾹瑠⿎が見事に舞い踊り、「ヨーコ分解」で絞める。

 

 

そして第三部は「未来」である。パール兄弟といえば“未来はパール”。サエキはウィリアム・ギブソンも憧れたサイバーパンクシティ、千葉出身でもある。少年ホームランズやハルメンズ時代は総武線を“SOUL TRAIN”を模して“SOUBU TRAIN”と呼び、そこから“SOUB SOUND”と名付ける。かつて“チャイバウエイブ”や“チャイバサウンド”なる言葉も生んでいる。チャイバウェイブを牽引したSOUBU TRAINの覇者・サエキけんぞうはニューウェイブからサイバーパンクへと舵を切り、パール兄弟ではひりひりするような名曲を量産。この日も「TRON岬」や「TOY VOX」などを披露する。サエキは水玉(泡!?)が身体を覆う、『美女と液体人間』など、東宝特撮映画のような衣装を纏う。ジェネシス時代のピーター・ガブリエルにも似ている。懐かしい未来へ一飛びだ。同曲に続き、懐かしい未来の青春ソング「青いキングダム」の観客の涙腺を刺激する。とりわけ、窪田晴男の流麗なギターが感情を優しく撫で、心地良くくすぐる。この日に限らず、随所で彼の凄味を体感する。その音をアップデートし、常に最先端の頂へとパール兄弟を誘う。「青いキングダム」はパール兄弟には珍しい、わかり易い歌詞に美メロ満載という名曲に涙の堤防決壊するもの多し(想像!)。

 

 

サエキは“サンキュー、渋谷!”と叫び、会場に“タオルを回す準備はできた!?”と呼びかけ、小室哲哉さんと作ったという「RUN-NEW バックステージ」が始まる。タオルをぐるぐるさせながら中高年が盛り上がる様は圧巻だ。渋谷公会堂は大人の社交場と化す。後半の“オヨーヨー”なポリス乗りも懐かしく、嬉しくなる。

 

 

同曲に続き、サエキが“マツダファミリアのCMソング”と紹介して、「色以下」を演奏する。レコード会社の企業努力に楽曲の魅力が相まって、あの時代、しっかりと大企業のタイアップが取れている。そんなメジャーなバンドであることに改めて気づく。

 

 

『六本木島』に収録された「プルプル通り」を畳みかけ、サエキは“物足りない。もっと乗ってみたくない。コンプライアンスから抜け出したい”と叫び、“最後にみんなでやりたいと思います”と告げる。ステージには水樹奈々やリーマンズ、⾹瑠⿎などが“全員集合!”。恋のエロチカ大作戦の始まり、「快楽の季節」が投下されると、会場は“気持ちいいねー、俺たち”状態へ。乗り乗りだ。ステージにいる手塚眞を始め、リーマンズも老体に鞭打ち、悪ふざけのように弾けまくる。パール兄弟が豪華ゲストと繰り広げる“大人の文化祭”は、まさにエンタメとアートのいいとこ取りだ。服を破いたり、脱がしたり、オブジェが崩れ、球やブロックが落ちたり、流石、手塚眞の舞台総覧は渋谷公会堂だけに舞台演出にドリフ風味もある。毎週土曜日にテレビで見ていた世代にはたまらいものがあるだろう。脳天と胸と腰を直撃する。

 

 

19時15分にメンバーがステージに消えると、当然、アンコールを求める拍手が巻き起こる。数分後、パール兄弟(いや、パール一家かもしれない!)が嬉しそうにステージに帰って来る。

 

 

アンコールの1曲目(!)は水樹とサエキのデュエットで、一緒にレコーディングした「ぬくもり列車」が堂々、披露される。かつて『PEARLTRON』(1987年)に収録された「ケンタッキーの白い女」というロカビリー&カントリー風味の名曲があるが、同曲を彷彿させるカントリーテイストの名曲で、より牧歌感が加わる。ステージのスクリーンには同曲の映像が流れたが、“銀河鉄道”っぽさもある。列車は千葉の養老渓谷や大多喜などへ向かう小湊鉄道(もしくはいすみ鉄道。いずれにしろ、一日も早い復旧を祈る!)の車窓の風景に思えるが、未確認なので、ご存知の方はこっそりとお教えてもらいたい。わかったらあとでこっそりと直す。しかし、敢えてアニソン風にしないところが冴えている。同曲を終えると、アンコールの2曲目は彼女もそのまま、オールスターメンバーで最後の決め(締め)のに不朽のラブソング「バカヤロウは愛の言葉」が大合唱される。圧巻の一言だ。同曲を終えると、記念撮影など、ステージにぐだぐだと(笑)、残っていたが、その気持ちはわかる。メンバーは19時35分にステージから消えた。

 

 

2時間30分の熱演(三部構成ながら休憩はなし。椅子があることのありがたみをまず再確認)に思わずパール兄弟の集大成と叫びたくなるが、そうではなく通過点、折り返し地点といいたくなる。この日のライブから様々な可能性の萌芽を見る。兄弟たちは還暦を過ぎ、古希に足をつっこむところ(バカボンはもう古希である!)だが、まだまだ、伸びしろがたんまりとある。同時に戦略次第では、こんな奇妙なバンドが天下を取る余地がある。41周年のさらなる進化と深化に期待である。楽しみでならない。

 

 

サエキけんぞうはこの9月4日の毎日新聞夕刊の取材で「ただの年寄りバンドではない。現在進行形のバンドであることを示したい」と語っている。その言葉を改めて、再確認することになった。新作の発表や新たなライブなども当日、発表されている。2027年3月には東名阪のクアトロツアー<「ありがとう40周年 パール兄弟 東名阪クアトロツアー2027(仮)」>を行う。会場で来場者限定で21時から先行予約がスタートしている。東京公演にはKIRINJIが出演する。

 

 

 

また、この日のライブは10月10日(土)12時からアーカイブ配信することが決定している。見逃さないでほしい。URLは以下になる。

 

https://eplus.jp/sf/detail/1846060002?P6=001&P1=0402&P59=1

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