2023年7月7日にPANTAが星になって、3年が経つ。もう3年なのか、まだ、3年なのか、わからないが、いまだに喪失感はなくならない。こんな時代に彼がいればどんな言葉を発し、どんな音を紡ぐか、つい考えてしまう。
今年も7月7日(火)に“七夕忌” が行われた。今年から会場は東京「渋谷ラママ(La.mama)になった。“催事”の正式名称は『PANTA四回忌追善公演「七夕忌」』になる。会場は立錐の余地もない、満員御礼状態。会場が狭すぎたかもしれないが、やはり、この日はこの場所に誰もが駆けつけたかったのだろう。会場の入り口には渡辺えりの花も出ていた。出演者は今年も彼に縁あるものが揃い、思いと愛しさと悼みの籠った“熱演”が繰り広げられる。そこには、3年の間に生まれ、育ったものもお披露目される。PANTAは不在ながらその仲間が彼の思いを引き継ぎ、2026年に新たに届けられたものがたくさんあった。
この日、最初に演奏をしたアップアップガールズ(2)の鍛治島彩はPANTAに導かれ、ロックバンド「KAJI ROCK」を結成している。アイドルからロッカーとして生きようと覚悟する。彼によって、鍛冶島はいい意味で人生を180度(か、わからないが、90度以上だろう。とりあせず360度ではない!)変えられた。PANTAのメッセージやアティテュードは人に多大な影響を及ぼす。
新生・頭脳警察をPANTAとともに立ち上げ、彼の晩年を支えたプロデューサーの田原章雄が司会・進行を務め、彼は作家の伊東潤を呼び出した。伊東はPANTAに「氷川丸の小説を書いてほしい」という要請を受け、『海峡の女神』を書きあげている。PANTAの母親は病院船「氷川丸」にペナン島から看護師として乗船している。この8月19日に光文社から新刊として刊行されるという。
▲トーキョーキラー
次のトーキョーキラーはPANTAの地元・所沢の「MOJO」や「渋谷ラママ」でも度々、共演、彼の秘蔵っ子とでもいうべきギタリスト、kemeが率いるロックバンドである。PANTAや頭脳警察のロックンロールを新しい世代に引き継ぐ。鮮烈で切れ味するどい音の塊は懐古や郷愁ではなく、いまという時代をしっかりと照射する。
▲PANTAから仲野茂に贈られた
ヘルメット
▲仲野茂バンド
仲野茂バンドはPANTAが仲野のために歌詞を書下ろし、それをレコーディングしたアルバム『に』に収録された「穴の空きまくりアナーキー」、「太陽」、「泣くんじゃねえ」を畳みかける。ステージには仲野茂がPANTAから形見分けとして生前に貰ったバイクのヘルメットが飾ってある。その風景をバックに歌詞にカワサキやスズキなどがある「穴の開きまくりアナーキー」が歌われる。同曲は仲野に当て書きしたもので、その歌詞を貰った時、仲野は“穴の開きまくりアナーキーだから、俺が曲をつけるしかないじゃん”と語っている。仲野茂を始め、下山淳、岡本雅彦、梶浦雅弘、竹内理恵はPANTAへの思いを込め、それを1枚のアルバム『に』を結実させ、それを彼へ捧げた。彼らはPANTAの新しい歌を私達に届けてくれるのだ。ちなみにこの日、下山のギターストラップが切れてしまうというハプニングがあったが、仲野は“PANTAが来ている。いたずらをしたんだよ”と嬉しそうに話す。
▲アキマツネオ
ステージにはPANTAの盟友というべき、アキマツネオが頭脳警察を率いて登場する。“コンサートの最後にやりそうな曲を選んでしまった”と、自嘲気味に話し、「万物流転」、「オリオン頌歌第2章」を披露する。この時にもハプニングが起きる。アキマ自身、何度もそれらの曲を歌っているはずだが、途中で歌詞につまり、歌えなくなる。譜面が途中から入れ子になって、順番が狂ってしまったようだ。アキマも“PANTAのいたずらだと”叫ぶ。「万物流転」は最初から歌い直し、2度目の披露になるが、観客にとっては嬉しいハプニングだろう。
▲うじきつよし
アキマに続き、うじきつよしが登場する。いままさに聞くべき、日本の生命線であるオイルロード「マラッカ」を歌った同曲をPANTAへの思いに、エロティシズムとプロテストをぶち込み、観客に放つ。会場の熱が一際、高くなるのを感じる。うじきはバンド活動だけでなく、ユイットやソロで全国をツアーして回っているが、その際、PANTAの歌を歌っているという。それを聞いて、喜んでいる人がたくさんいることを報告する。観客も嬉しそうに頷き、歓声と拍手を送る。うじきは一人ではない、たくさんの人達が彼のメッセージを受け取っている。きっと、それを歌う度に実感しているはず。だから全国を回れる。
▲(写真左端)宮地大介
PANTAは2022年10月に上演された深作組(深作健太)の『オルレアンの少女-ジャンヌ・ダルク-』大阪公演に出演しているが、そのPANTAの最後の舞台で共演した宮地大介が詩を朗読する。同朗読は「アメリカよ〜時代はサーカスの象にのって」というメドレーにして届けられる。
「時代はサーカスの象にのって」は1969年、渋谷・並木橋にオープンした「天井桟敷館」のこけら落としとして地下小劇場で上演された寺山修司の戯曲で、ベトナム戦争の時代を背景に8つのストーリーが展開され、アメリカへの憧憬と反発などが描かれる。
2002年、高取英の月蝕歌劇団による『時代はサーカスの象にのって』のミュージカル化にあたり、PANTAが「時代はサーカスの象にのって」の作曲を担当した(作詞は寺山修司と高取英)。その後、2008年に頭脳警察のシングル「時代はサーカスの象にのって」としてリリースされ、2013年のアルバム『暗転』にも収録された。
煽情的な宮地の朗読の後、うじきが「時代はサーカスの象にのって」を歌い繋ぐ。寺山など、演劇空間との融合、これも頭脳警察ならではだろう。PANTAは宮地との共演舞台で、「さようなら世界夫人よ」を歌っている。
▲頭脳警察
うじきに続き、TOSHIを始め、澤竜二、宮田岳、樋口素之助、竹内理恵、おおくぼけいという頭脳警察のメンバーが改めてステージに登場する。彼らはPANTAのヴァーカルパートをメンバーで振り分け、各々、その歌声を聞かせる。そこにPANTAの歌はないが、「銃をとれ」や「ふざけるんじゃねえよ」など、希代の名曲が新しい佇まいで披露される。
「ハイエナ」は1973年に発売された頭脳警察の5枚目のオリジナル・アルバム『仮面劇のヒーローを告訴しろ』に収録された名曲で、近年では和製レアグルーヴとして再評価が著しい楽曲だが、同曲をJagatara2020のメンバーでもある宮田岳によってトライバルでファンキーな意匠が施される。このメンバーでなければできないファンクネスを醸し、新たな光と輝きを放つ。最後はPANTAのファーストアルバム『PANTAX’S WORLD』(1976年)に収録された希代の名曲「マーラーズ・パーラー」を新生・頭脳警察が自分達の十八番として高らかに歌い、この日の演奏を締める。
▲PANTA WITH 頭脳警察
メンバーはステージから消えるが、アンコールを求める拍手と歓声はやまず、それにこたえる形でメンバーがステージに上がる。ステージのスクリーンにはPANTAの歌う姿が映し出される。メンバーはその歌に演奏を付ける。頭脳警察のメンバーの勢揃いだ。「絶景かな」がPANTAの歌に合わせ、合奏される。PANTAとの再会に会場が沸き立つと同時にこれまでこらえていた人達の頬に涙がこぼれる。この日、この場にいる、メンバーやゲストミュージシャン、スタッフ、オーディエンスなど……立場や環境、歴史は違えど、その思いは同じ。それぞれの人達の涙腺の決壊である。まさにPANTAが見せてくれた“絶景”だろう。
PANTA不在で頭脳警察の歌が歌われることにいろいろ毀誉褒貶があるらしい。田原は、それらの雑音を振り払うように“TOSHIがいる限り、俺達は頭脳警察だ”と叫ぶ。生前、PANTAが言った言葉が駆け巡る。「歌は死なない」と、かつて、言っている。この日、私達はその歌が歌い継がれ、同時に新しい力によって、芽吹き、成長をしていることを目の当たりにする。彼の言葉に間違いはない。また、来年、2027年7月7日に集まろう。PANTAが待っている。
なお、PANTAの四回忌、七夕忌公演は渋谷ラママにて18時開演。平日開催でご来場いただけない全国のファンの皆様に今回は配信をしている。
https://premier.twitcasting.tv/c:shibuya.../shopcart/438169
是非ご覧いただきたい。
https://x.com/pantazkofficial/status/2075252017036185856
2026年7月7日PANTA四回忌「七夕忌」無事開催ありがとうございました。続けていくことの大切さを噛み締めながら続けていきます。
— PANTA頭脳警察オフィシャル (@pantazkofficial) July 9, 2026
これからもよろしくお願いいたします。
そして参加してくださった全ての皆さまに感謝いたします。 pic.twitter.com/tuZ2Ay3uOH
『PANTA四回忌追善公演「七夕忌」』2026年7月7日(月)東京「渋谷La.mama」セットリスト
●KAJIROCK
恋したキョンシー君に夢中
カンフーUFO
幸運序曲
●トーキョーキラー
サーフスナイパー
マウント
真夜中のマリア
ハヤブサ
●仲野茂バンド
穴の空きまくりアナーキー
太陽
泣くんじゃねえ
●アキマツネオ
万物流転
オリオン頌歌第2章
●うじきつよし
マラッカ
アメリカよ〜時代はサーカスの象にのって
●頭脳警察
銃をとれ
ふざけるんじゃねえよ
風の旅団
ハイエナ
光輝く少女よ
マーラーズパーラー
EC
PANTA映像
絶景かな










