“シティポップと呼ばれて”杉真理と安部恭弘からの回答、鈴木マツヲとBOX、捻じれながら進化する | Let's Go Steady――Jポップス黄金時代 !

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■“シティポップと呼ばれて”シティポップの祈祷師とシティポップの貴公子からの回答

 

 

「シティポップ」(CITY POP)は、もはやブームというより、完全に定着したと言っていいだろう。なかには“これも「シティポップ」!?” という、勘違いやこじつけもあるが、コンピレーションやリイシューなどに関わる方の精力的な活動に頭が下がるばかり。新たな世代にもその魅力が伝わってきている。“再評価”や“新たな評価”などというと、失礼に当たるかもしれないが、某アーティストは“40年前に言ってよ~”と、嬉しそうに冗談めかして言っている。いずれにしろ、“再”や“新”にしろ、その実力や魅力が正しく評価されるのは嬉しい限り。自分は間違ってなかった――と、ひとりごちる方も多いのではないだろうか(笑)。

 

 

 

“シティポップブーム”の中、「シティポップと呼ばれて」という名を冠したコンサートがあった。杉真理のコンサートに安部恭弘がゲストとして出演しているのだ。二人とも、このところ、シティポップ絡みで注目されるアーティストでもある。杉はそのタイトルを“「不良少女と呼ばれて」みたいでいいでしょう”と言う。”含羞”や“屈折”、“諧謔”などを込めたらしい。全面的に肯定や同意、受容をしているわけではないようだ。腹に一物持つという感じかもしれない。

 

 

杉と安部、言うまでもなく大学は慶応と早稲田というライバル同士だが、学生時代からの盟友。安部は杉真理がデビューした時に急遽結成された“プロジェクト”である杉真理&レッド・ストライプス(MARI&RED STRIPES)のメンバーでもあった。そんな二人の共演、そして「シティポップと呼ばれて」という挑発的(!?)なタイトル、行かないわけにはいかないだろう。同コンサートはこの8月4日(金)、東京「SHIBUYA PLEASURE PLEASURE」で行われている。

 

開催から随分、時間が経ってしまって、いまさらになるが、改めて書いておくべきだろう。楽しみにしていたという方もいるはず。実は同コンサートについては、私自身、2度の全国行脚(“俺のSASURAI TOUR 2023”!?)の影響で、コンサート直後に簡単に呟いただけだった。遅まきながら同コンサートを含め、他にも書いておきたいコンサートがあるので、時間遅れかもしれないが、手遅れではないので、書いておく。お待たせしました。お待たせし過ぎたかもしれません(苦笑)。

 

 

 

この日のコンサート、本2023年1月25日(水) に同じく東京「SHIBUYA PLEASURE PLEASURE」で、なかの綾、野田幹子、鈴木雄大をゲストに招き、行われた杉真理のライブ「Masamichi Sugi LIVE 2023 Winter~Mr.Melodyのメロディー祭!」を彷彿させるものがあった。昨2022年11月23日に杉真理デビュー45周年記念企画として、「ウイスキーが、お好きでしょ 」( SAYURI<石川さゆり>)や「雨のリゾート」(松田聖子)、「あいつのブラウンシューズ 」(松原みき)、「素直になりたい 」(ハイ・ファイ・セット)、「Love Again」(須藤薫)、「ホールド・オン 」(竹内まりや)……など、提供曲116曲を集めた6枚組CD BOX『Mr. Melody~杉真理提供曲集~』をフィチャーしたライブである。あの満漢全席のような豪華さと賑やかな楽しさは忘れがたい。杉真理音楽生活45周年の記念番組を見ているようだった。今回はそんなバラエティ豊かな“番組”に夏の風物詩を加え、ちょっと辛口に味付けしたという感じだろうか。

 

 

杉(Vo、G)を始め、藤田哲也 (bB) 、橋本哲 (G)、小泉信彦 (Kb)、清水淳 (Dr) 、丹菊正和 (Perc)、宮崎隆睦 (sax.)というお馴染みのメンバー。そしてゲストに安部恭弘(Vo、G)というラインナップである。

 

オープニングのSEは、この日のために一人多重録音したクリフ・リチャードの「サマーホリデー」。同曲から素敵な夏休みが始まる。メンバーが登場し、『Symphony #10』(1985年)の「アニーよ目をさませ!」、そして大学の後輩が経営する会社の社歌(車歌!?)「We were born to run」、真夏のアルバム『Have a hot day!』(1987年)の「Melting World」、『MISTONE』(1984年)の「Davy’sDevil」、『FLOWERS』(1983年)の「パピヨン」など、初期のアニバーサリーな名曲を畳みかける。

 

このコロナ禍で生まれた新曲「Human Distance」から「Frankeyにお願い」(須藤薫)、「パラソルと約束」(SAYAKA)など、6枚組CDボックス『Mr. Melody~杉 真理提供曲集~』に収録された提供曲、そして新曲「大人の恋」まで、怒涛の如く、名曲を惜しげもなく披露していく圧巻の音楽絵巻だ。

 

同曲を終えると、15分間の休憩に入る。会場は既にオーバーヒート気味だが、そんな前のめりの気持ちをやんわりと静めるインターバルになる。

 

二部は村田和人とのアロハブラザーズの「PAKALOLOは愛の言葉」、『Have a hot day!』から「恋のかけひき」が披露される。同曲の歌詞にはクリフ・リチャードの名前が歌いこまれている。オープニングSEはここに繋がるようだ。こんな仕掛けも杉真理らしい。

 

そして、この日のゲスト、安部恭弘が登場。“安部くんは分数コードなど、複雑な進行で譜面も設計図のようで緻密。福岡出身の僕と違って、東京出身でしょう。その洗練され、お洒落な作風は「シティポップの貴公子」に相応しい”と、紹介する。杉は”安部くんが貴公子なら僕は「シティポップの祈祷師」だよ”と、自己紹介する。杉らしいものいいだが、貴公子ではなく、祈祷師にするところに杉らしい“屈折”や“諧謔”がある。

 

2003年にリリースされた安部の『CRONICLE』 のAORな魅力が光る「何万光年も離れた☆からのMESSAGE」を披露。同曲に続いて、2014年11月発売の杉真理&フレンズ名義のアルバム『THIS IS POP』に収録された杉と安部の共作曲「音楽の女神」を披露する。二人の出会いを歌ったナンバーだ。その歌詞の中には“都会育ちの君こそMr.City pop”という言葉もある。杉の国民的ヒット曲「ウイスキーが、お好きでしょ」を歌い、杉と安部が共作した新曲を二人で歌う。タイトルそのものは、ずばり「シティポップ」だ。

 

同曲については杉真理が自らのブログで綴っている。少し長くなるが、引用する。改行、句点、句読点などもこちらで調整している。ご了解いただきたい。

 

 

 

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どうせやるならチャレンジを、という事で去年暮れからお正月にかけて新曲を企てていました。イメージは、フランク・シナトラとディーン・マーティンがビッグ・バンドをバックにタキシードでスイングするような曲調。昔はそんなのジジくさくて嫌だったけど、今なら居直ってやれちゃうのです。

 

タイトルは、すばり『シティポップ』、笑。

「世に言うシティポップ、どうやら僕ら、そう呼ばれてる、、、今聴き返せば新鮮と、どうも皆んなが言い始めた世に言うシティポップ、最初は誰も、まるで見向きさえしなかった。そんな音楽」みたいに始まり、バブリーな時代と背伸びしてた自分達を 振り返る、、、みたいな内容。

 

最後はあのバブリーな時代は、何もかもが嘘くさい、だけど何故か忘れがたい、実はとても大好きさ~って歌い上げちゃう、っていう。

 

例によってウチでお正月にGaregebandを使ってオケを作り安部君とやり取りして、(安部君の歌、改めてカッコいいと思いました)出来上がってみれば最高にゴキゲンな曲が誕生しました。

 

 

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http://masamichi-sugi.txt-nifty.com/sugiblog/2023/01/post-44fa1e.html

 

 

同曲は本2023年1月14日(土)に東京「SHIBUYA PLEASURE PLEASURE」で杉真理がゲストとして出演した「安部恭弘 スペシャル・エレクトリック・ライブ! "GENTLE NOTE Vol.44 at PLEASURE PLEASURE" LOVE & SMILE, BIRTHDAY LIVE 2023」で初披露されている。

 

 

「シティポップの祈祷師」(杉真理)と「シティポップの貴公子」(安部恭弘)という当事者(祈祷師も貴公子も杉の“自称”である)からの回答か。杉と安部の共作曲「シティポップ」はアンビバレンツな感情を内包しつつ、その本音をラスベガスのフランク・シナトラやディーン・マーティンの如く朗々と歌い上げる名曲。現在進行形の“シティポップ”がそこにはあった。

 

安部がステージを去り、“杉真理劇場”が始まる。大谷翔平への応援歌「It’s Show Time」、『OVERLAP』(1982年)の「ラストナイト」、「小説家と結ばれる方法」(『HAVE A HOT DAY!』)、「夏休みの宿題」(『WORLD OF LOVE』1992年)など、杉流ポップスを披露する。同曲を終えると、杉達がステージから去る。そしてアンコールを求める拍手と歓声が会場を満たす。

 

再び、出て来て「クラブ・ロビーナ」(須藤薫&杉真理『POP 'ROUND THE WORLD』2007年)、「シャローナに片思い」(『魔法の領域』2008年)というリゾートなラブソングを畳みかける。

 

1回目のアンコールが終わると、ステージから消え、すぐに戻り、2回目のアンコールが始まる。「素敵なサマー・デイズ」(『STARGAZER』1983年)、「さよならCity Lights」(『OVERLAP』)と、杉真理の“CLASSICS”とでもいうべき“名曲”の大判振る舞い。

 

アンコールを終えると、その日は<おまけ>があった。安部恭弘が再登場して、杉と安部で「シティポップ」を再び歌ったのだ。観客には嬉しいプレゼントだろう。いつもより多くやっています状態。同曲の曲想そのものはシティポップというより、ポップス。ポピュラーミュージックの王道を歩む二人には相応しいのではないだろうか。フランク・シナトラもディーン・マーティンも、この歳だからできること、背伸びすることなく、普通に大人の歌を歌うことができるのだ。

 

実は、1974年にリリースされ、20年後の1994年にリイシューされたシュガー・ベイブの『ソングス』。山下達郎、大貫妙子、村松邦男、伊藤銀次などが在籍した日本のロック史に残るバンドの伝説的なデビューアルバムである。その1994年盤のライナーノートに「シュガー・ベイブ『ソングス』CD発売にあたって。」という大瀧詠一の解説がある。その中で“山下達郎は「クリスマス・イブ」の作者として日本の歌謡史に残る人です。山田耕筰・滝廉太郎・中山晋平・古賀政男・服部良一・中村八大・筒美京平、という流れの後に続きます。”と書いている。

 

そんな視点で、杉真理の音楽を聞いてみると、また、違った地平も見えてくる。杉真理流のシティポップはシティポップを超えていく。その親しみやすいキャラクターゆえ、“大音楽家”や“大先生”という感じはないが、その曲や歌詞、歌は実に堂々たるもの、偉大なる音楽家としての実力と魅力を改めて再評価すべきだろう。まだまだ、彼がやるべきことはある。これからも新曲をもっともっと楽しみに待つことができそうだ。

 

 

 

杉真理 Masamichi Sugi LIVE 2023 「シティポップと呼ばれて」

<ゲスト>安部恭弘

2023年8月4日(金)渋谷PLEASURE PLEASURE

 

 

M-00 ~Opning SE~

M-01 アニーよ目をさませ!

M-02 We were born to run

       ~MC~

M-03 Melting World

M-04 Davy’s Devill

       ~MC~

M-05 パピヨン

       ~メンバー紹介~

M-06 Human Distance

       ~MC~

M-07 Frankyお願い

M-08 パラソルと約束

       ~MC~

M-09 大人の恋は(新曲)

 

      ~休憩~

 

<二部>

M-10 PAKALOLOは愛の言葉

M-11 恋のかけひき

       ~MC~

M-12 何万光年も離れた☆からのMESSGE(安部)

M-13 音楽の女神(安部)

M-14 ウィスキーが、お好きでしょ(安部)

M-15 シティポップ(安部)

       ~MC~

M-16 It’s Show Time

M-17 ラストナイト

M-18 小説家と結ばれる方法

M-19 夏休みの宿題

 

   <アンコール>

EN-01 クラブ・ロビーナ

EN-02 シャローナに片思い

   <アンコール2>

EN-01 素敵なサマー・デイズ

EN-02 さよならCity Lights

     <おまけ>

シティポップ(安部)

 

 

 

■鈴木マツヲが描くモダンロックの新世界

 

杉真理の同志である松尾清憲が彼の同志である鈴木慶一とユニットを組んだ。名付けて“鈴木マツヲ”。当然、“松尾スズキ”ではない。しかし、そのネーミングのセンスがいかにも彼ららしい。コロナ禍を挟み、随分前からリハーサルやレコーディングが極秘裏に行われ、噂は漏れ聞いていたものの、ようやく、その全貌を現した。

 

先々月、8月20日(日)に「ビルボードライブ東京」で、鈴木慶一と松尾清憲による期待のユニット、鈴木マツヲの“デビューライブ”(1stステージを見たので、正真正銘のデビューライブ!)を体験する。6月21日にリリースされたデビューアルバム『ONE HIT WONDER』の新たな名曲からレフトバンクやコーギス、ホットレッグスなど、“一発屋”(!?)の名曲、初めての二人の共同作業、CINEMAの名曲まで、70分間に屈折と諧謔を含む、ニッチでポップな世界を見せてくれた。この感覚は久しくなかったものかもしれない。モダンロックの新たな夜明け、鈴木と松尾の新世界だろう。

 

この日、2 ndステージ後に命名されたという「鈴木マツヲ & ニュー・ネアンデルタールズ8」、直前にメンバーの体調不良で、変更などもあったが、そんなアクシデントをものともせず、それがまるでレギュラーバンドの如く、安定しつつもワチャワチャした演奏を聞かせてくれた。鈴木がMCで、昨今の“コンプライス”を気にしながらメンバー紹介するところが、2023年らしい。流石、モダンロックの世界も変わりつつあるようだ。

 

本当は前日、19日(土)も「ビルボードライブ東京」での白井良明監督総指揮による「かしぶち哲郎没後10年。『リラのホテル』リリース40周年記念『リラのホテル』トリビュートライブ」も行きたかったが、所用のため、行けず、残念だった。両日の公演とも再演を希望する。もっと、見たいと言う方はたくさんいるはず。

 

 

鈴木マツヲ(鈴木慶一+松尾清憲)『ONE HIT WONDER』発売記念ライブ

鈴木マツヲ & ニュー・ネアンデルタールズ8

鈴木慶一 Vo

松尾清憲 Vo

ゴンドウトモヒコ Horns & Sequence

高橋結子 Dr

AYAKA  B

畠中文子 Kb

マスダミズキ G

上野洋子 Cho

 

 

 

 

https://twitter.com/kmatsuo30th/status/1694246445451506044

 

 

 

 

■BOXと竹内まりやの「TOKYO WOMAN」がドラマ主題歌になる

 

 

松尾清憲と杉真理といえばBOXだろう。「TOKYO WOMAN」は2012年にリリースしたアルバム『マイティ・ローズ』の収録曲。実は同曲を竹内まりやはBOXとともにカバーしている。同曲は未発表曲になってしまったが、同曲をモチーフに佐津川愛美とりょうがダブル主演のオリジナルドラマがフジテレビで放送され、同放送に合わせ、竹内まりやとBOXがカバーした同曲がついにドラマの主題歌として陽の目をみることになった。放送自体は4夜連続スペシャルドラマ『Tokyo Woman』(2023年11月6日(月)〜 9日(木)24時25分〜24時55分 放送    ※関東ローカル)になる。深夜だが、同曲が同ドラマにどう絡むか、楽しみなところだ。

 

そのBOXが明日、10月18日(水)に東京「SHIBUYA PLEASURE PLEASURE」でライブ「BOX BOX LIVE 2023・ライブを止めるな!」を行う。久しぶり&貴重なライブになる。既にチケットはソールドアウトだが、明日、当日券が若干、出るそうだ。これは行かなければならないライブだろう。少し早いクリスマスプレゼントか!?

 

https://twitter.com/mt_rainier_hall/status/1713771396747399593

 

 

 

 

10/18(水)

BOX 杉 真理 / 松尾清憲 / 小室和之 / 田上正和

BOX LIVE 2023 〜ライブを止めるな!〜

会場        SHIBUYA PLEASURE PLEASURE

OPEN    18:15 START     19:00

 

17:45~2階席立見予定

¥9,000(ドリンク代別)

6階会場チケットBOXにて若干枚数販売致します!

※入場時1DRINK代¥600必要

 

 

BOX[杉 真理(Vo,G) / 松尾清憲(Vo、G)/小室和之(Vo,B) / 田上正和(G)]

サポート:島村英二(Dr) / 小泉信彦(Kb)