ひさしぶりのゴダイゴ・コンサート 大阪新歌舞伎座『GODIEGO CONCERT 2022』 | Let's Go Steady――Jポップス黄金時代 !

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列島を直撃した台風14号と駆け引きしながら大阪への日帰り旅になる。前日、9月17日(土)には翌18日(日)のコンサートは開催されることがアナウンスされた。これは行くしかないだろう。前乗りも考えたが、18日(日)の天気予報や運行状況を調べると、同日の東京から新大阪への新幹線の計画運休は発表されていなかった。当日、行くことにしたが、もしものことを考え、開演は午後2時からだが、なるべく早めに行った方がいいだろう、午前中に新大阪へ到着する新幹線で行くことにする。その勘は当たる。新大阪に到着して、運行状況を見たら小田原辺りで運転中止になっていた――と、まくらが長くなったが、そのコンサートとはゴダイゴの大阪新歌舞伎座で開催された『GODIEGO CONCERT 2022』のことである。

 

ゴダイゴと台風と言えば、1979年4月8日(日)の“雨の野音”、同じく35年後、2014年10月5日(土)の“雨の野音”を思い出す方もいるだろう。両公演とも現場の日比谷野外大音楽堂にいたが、79年は暴風雨が野音を直撃、PAや照明の調整卓を保護していたテントが吹き飛びそうになるのを当時のスタッフと押さえたり、14年は豪雨の中、立ち続け見ていたことを身体が覚えている。ところがこの日、大阪は雨どころか、晴天である。残暑の名残のような暑さ。気温は30度を超えていた。拍子抜けだ。

 

新歌舞伎座は大阪難波駅から2駅の大阪上本町駅にある。改札から地上に上がると、目の前に聳え立つ複合施設「上町YUFURA」の6~8階にある。外観はただの百貨店(2010年に誕生した、新歌舞伎座と38店のショップ、そしてオフィスからなる複合ビル)、しかし、壁面の外装には歌舞伎座らしい荘厳さがある。会場に入ると、台風が列島を縦断するため、大阪行きを断念した方もいたかもしれないが、3階席まで、すべての席が埋まり、立ち見も出ている。大阪の新歌舞伎座での公演は2018年12月4日(水)の『ゴダイゴ コンサート2018 ~新歌舞伎座 参上!』以来<大阪公演自体は2019年5月10日(金)・11日(土)ビルボードライヴ大阪、2021年10月2日(土)にパナソニックスタジアム吹田で行われたガンバ大阪のクラブ30周年記念マッチ「ガンバ大阪-北海道コンサドーレ札幌」のハーフタイムショーで「銀河鉄道999」を歌っている)になる。

 

開演時間の午後2時を少し過ぎ、会場が暗転、メンバーがステージに登場する。1曲目は「Lighting Man」だった。1979年の傑作アルバム『OUR DECADE』に収録された同曲を演奏した。夕刊フジの9月23日(22日発売)付けのインタビューで、ミッキー吉野は「セットリストは今までとパターンを変えました。『Lighting Man』は“照明さん、そんなに早く灯を消さないでよ。まだまだ続くよ”という歌詞。それがオープニングです」と語っている。ゴダイゴの“再始動”を高らかに宣言するかのようだ。

 

 

ステージにはミッキー吉野(Kb、Vo)、タケカワユキヒデ(Vo、Kb)、スティーブ・フォックス(B、Vo)、トミー・スナイダー(Dr、Vo)、吉澤洋治(G、Vo)、そしてサポートの竹越かずゆき(Kb、Vo)が並ぶ。この日のラインナップである。ブラスやストリングス、クワイヤーはなし。ゴダイゴのメンバー(竹越はサポートだが、いまはメンバーといってもいいだろう)だけでライブを行う。浅野孝已の場所には吉澤が着くことになる。

 

「Lighting Man」に続き、『M.O.R.』(1981年)に収録された「loneliness」が披露される。この流れはいままでなかったパターンだろう。

 

そしてトミー・スナイダーが日本に来て初めてレコーディングした曲で、浅野が“Searching for Symfonica”というフレーズがうまく発音できなかったという「シンフォニカ」がレゲエ・ヴァージョンで演奏される。同ヴァージョンはこの5月12日(木)、2020年同月同日に亡くなった浅野孝已の“3回忌”に東京・南青山の「ブルーノート東京」で行った『ゴダイゴ ライヴ~ひさしぶりマイ・フレンド』でも披露されている。

 

さらに「Nice to see you once more(ひさしぶり マイ・フレンド)」を演奏する。同曲は1999年、1年間の期間限定の再結成時にリリースされたアルバム『GODIEGO...WHAT A BEAUTIFUL NAME』に収録された曲である。作詞をタケカワユキヒデとトミー・スナイダー、作曲を浅野孝已、編曲をミッキー吉野が手掛けている。先日の浅野の追悼ライブのタイトルにもなっている重要な曲だ。

 

トミーが歌いたかったという「A FACE IN THE CROWD(孤独な面影)」が披露されるが、どうせなら(!?)ということで、同曲の前に「DEAD END~LOVE FLOWERS PROPHECY」も演奏される。ゴダイゴの実質的なデビュー・アルバムと言われる『DEAD END』(1977年)のナンバーが披露される“DEAD END”コーナー。何か、ゴダイゴの起点を再確認するかのようでもある。

 

『西遊記』(1978年)を飛ばし(!?)、アルバム『OUR DECADE』から「TRY TO WAKE UP TO A MORNING」と「WHERE'LL WE GO FROM NOW(はるかな旅へ)」が披露される。

 

同曲の後、メンバーのトークが繰り広げられるが、いつものゴダイゴがいた。メンバーは久しぶりにコンサートができる喜びを語る。スティーブは「ビルボードライヴ大阪」でのライブを熱望し、繰り返しアピールしていた。

 

楽しいトークの後、「THE WORLD IS REALLY ONE ~WE HAVE A DREAM~」が披露される。同曲は2007年にリリースしたシングル「BIG MAMA」のカップリング曲だが、コロナ禍とロシアのウクライナ侵攻という不安定で不安な状況ともリンクしていく。ある意味、『DEAD END』 や『OUR DECADE』のコンセプトやテーマとも通底している。

 

同曲の後、説明不要の国民的ヒット曲「Beautiful name」が演奏される。マスク越しで判別不明、推測だが、会場にいるものを笑顔にする。“掛け合い合戦”ができないのがご時世ゆえのことだが、タケカワは今度やる時は出来るようになると、未来に希望を込めた。

 

続いて「YOU ARE HERE」が披露される。同曲は2017年に浅野と最後にレコーディングしたナンバーだ。作詞は奈良橋陽子、作曲はタケカワユキヒデ 、編曲はミッキー吉野、歌・演奏はゴダイゴ。ある意味、ゴダイゴの原型とでもいうべき曲だ。彼らの未来の形を提示したものかもしれない。マタニティクリニックのイメージソングとして動画のみ公開されている。音源未発表ながら心に留め置くべきナンバーだろう。

 

同曲を歌い終えると、「Holy and Bright」(『西遊記II』のエンディングテーマで、いまもフジテレビのバラエティ番組『なりゆき街道旅』のテーマソングとして流れている)、「Monkey Magic」、「ガンダーラ」と、“ひとりベストテン”状態。誰もが知る『西遊記』所縁の国民的のヒット曲が怒涛の如く、披露される。会場は歓声を上げられないものの、興奮の坩堝。日本の歌謡史に残る名曲の破壊力、恐るべし。ある意味、名曲を持っているバンドの強みでもある。マスク越しの歓声と拍手の中、メンバーはステージから消える。

 

「Monkey Magic」ではお馴染み蜘蛛の糸がタケカワの手から放たれたが、いつもより蜘蛛の糸を増量し、その迫力が増しているという。新歌舞伎座(蜘蛛の糸は歌舞伎の演出で使用される)だけに演出を派手にしたのかもしれない。それにしても蜘蛛の糸を束ね、片づけるスタッフの早業にメンバーや観客も感心することしきり。板の上では驚愕の奇跡が起こるというもの。

 

そして、アンコールの拍手に促され、メンバーがステージに現れ、演奏されたのは「Take It Easy」(1984年にリリースされたライブアルバム『平和組曲』に収録)である。『西遊記』以前のコンサートの定番曲である同曲が満を持し、狙いすましたように観客に届けられる。彼らのことを『西遊記』以前から知るファンには値千金、素敵なプレゼントではないだろうか。さらに「君は恋のチェリー(CHERRIES WERE MADE FOR EATING)」が続く。1977年に公開された大林宣彦監督作品『HOUSE』の挿入歌で、同映画のサウンドトラックからシングルカットされている。同曲はBRAHMANがカヴァーしていることで知られるが、後にハイスタンダードやELLEGARDEN、ONE OK ROCKなどが英語で歌うのはゴダイゴの影響ではないかと、勝手に考えている(数年前、ゴダイゴ愛を語るTOSHI-LOWと話す機会があった)。

 

意外な2曲の後は手堅く「銀河鉄道999」で締める。国民的なヒット曲であり、アニメの主題歌をロックバンドが手掛ける先鞭ともなった。同曲はいまも朝の報道番組で、テーマソングとして週に5日、流れている。彼らは期待を裏切らない。大きな拍手の中、彼らはステージから消える。

 

時計は午後3時55分を指していた。約2時間、彼らはステージをやりきった。ミッキー吉野は“ひさしぶりのゴダイゴ・コンサート”と語っている。5月は“セレモニー”だったのだろう。しかし、それがあったからこそ、このコンサートがある。ロックバンド、ゴダイゴの面目躍如、圧巻のステージを披露してくれた。浅野孝已の意志を引き継ぎつつ、新生面も見せる。吉澤洋治は浅野孝已のフレーズを踏襲しながらも吉澤独自の筆致を描く。竹越かずゆきもこれまで以上にフィーチャーされ、前に出てくる。また、浅野によって『GODIEGO...WHAT A BEAUTIFUL NAME』や『GODIEGO THE BEST』(2016年)などにひっそりと佇む隠れた名曲の存在に気付かさせ、2006年の恒久的再始動の宣言後、オリジナル・アルバムはリリースされてないものの、彼らは“新曲”を作り続けてきたことが証明される。まさにゴダイゴの新しい章が始まろうとしている。

 

このコロナ禍の中、ミッキー吉野は古希を記念するプロジェクト「ミッキー吉野"ラッキー70祭"【KoKi】」をやり遂げ、タケカワは配信ライブを精力的にこなしつつ、「銀河鉄道999」のシネマコンサートに出演、吉澤はミッキー、タケカワと「ミッキー・タケ・ヨージの部屋 配信ライブ」に出演、スティーブやトミーはタケカワのステージにゲスト出演、リモートでのイベントなどもしている。少しずつだが、一歩を踏み出している。

 

ゴダイゴは来年、2023年2月4日(土)に東京「すみだトリフォニーホール」で新日本フィルハーモニー交響楽団と共演する。彼らの実験と冒険は続いていく。ゴダイゴの“オデュッセイア”に終わりはない。

 

なお、この日、終演後は会場から新大阪へ一直線。新幹線が止まらないうちに列車へ飛び乗る。お好み焼きもねぎ焼き、かすうどんなども食べれずじまい。おまけに赤福は売り切れ、蓬莱551は20分待ち、時間切れで買えなかった。その代わり、ゴダイゴ三昧をさせてもらった。満足である。

 

 

すみだトリフォニーホール開館25周年特別企画

GODIEGO meets 新日本フィルハーモニー交響楽団

2023年2月4日 (土) 15:00開演(14:00開場)

会場:すみだトリフォニーホール 大ホール

https://www.triphony.com/concert/detail/2022-08-005972.html