復活の狼煙! "HARRY" Solo Live2022 So Alone | Let's Go Steady――Jポップス黄金時代 !

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Jポップスの黄金時代は80年代から始まった。

そんな時代を活写した幻の音楽雑誌『MUSIC STEADY』をネットで再現します。

既にブログで報告しているが、8月6日(土)に名古屋「TOKUZO」で開催されたTHE MODSのギタリスト、苣木寛之のソロプロジェクト“DUDE TONE”のアコースティックライブ『DUDE TONE LIVE 2022 “Walkin’ Blues” Vol.7』を見ている。苣木は同ライブで懐かしい名前を告げ、彼の懐かしい曲をカヴァーしていた。

 

苣木は“EPIC時代のレーベルメイトで、なんの面識もないけど、尊敬するバンドです。そのバンドのヴォーカルが大病してしまった。いまは回復して、復帰が決まったらしい。彼の(バンドの)歌を歌います”と語り、THE STREET SLIDERSのアルバム『SCREW DRIVER』に収録された「かえりみちのBlue」を弾き語ったのだ。いうまでもなく、そのバンドのヴァ―カリストとはHARRYこと、村越弘明である。肺がんを患い、治療のため、暫く活動を休止していた。その彼が大病を克服し、9月11日(日)に「SHIBUYA PLESURE PLESUR」で開催した復活ライブ『Murakoshi "HARRY" Hiroaki Solo Live2022「So Alone」』。2020年12月5日に「LINE CUBE SHIBUYA」でのJOY-POPSのライブ以来、実に1年9ヶ月ぶりのステージになる。その1stステージをリアルで体験する。虫の知らせか、前述通り、思いもかけないところで、思いもかけない曲を聞いたからには、行かないわけにはいかないだろう。

 

このステージは予め、「エレキギターとアコースティックギターを駆使し、ギター1本でプレイするワンステージ60分の貴重なLive」と告知されている。通常のライブとしては、時間は短いだろう。これがいまの彼の体力の限界なのか、限界ではないのか、わからない。ただ、いまは彼がギターを弾き、歌うだけで嬉しいというもの。

 

大病を克服して、久々のステージフライトに挑む。本人のみならず、観客も緊張する。期待と不安が満員の会場を包む。

 

会場に流れていたヤードバーズもカヴァーしたソニー・ボーイ・ウィリアムソンの「Good Morning Little Schoolgirl」の音量が大きくなると、HARRYがステージに登場。開口一番、楽しんでくれよと告げ、「Tokyoシャッフル」を弾き出す。復活の宴が始まる。

 

 

エレキとアコギをとっかいひっかいして、ただ、ひたすらに“ロッキンブルース”を弾き語る。その声は掠れながらも張りがあり、揺らぐようなグルーブを奏でる。そこにはいつものHARRYがいた。不安は失せ、期待が上回る。あまりHARRYに相応しい言葉ではないが、元気で生気が漲る。その歌、演奏を目の当たりにして、彼が健在であることを実感する。漸く復活の狼煙が上がったといっていいだろう。これも彼には相応しくないが、曲間に何度も手を上げ、“THANK YOU”という言葉を会場に投げかけるHARRYの笑顔が心に残る。何か、彼自身がステージを楽しんでいるようだ。

 

告知に嘘はなく、オープニングの「Tokyoシャッフル」からエンディングの「あんたがいないよる」まで、1時間ほど。確かに時間は短く、アッと言う間だが、それは濃厚な瞬間が続き、至福の時間が積み重なる。

 

イベントのタイトルは“So Alone”である。それは単純に“孤立無援”や“寂寥感”を表したものではなく、ニューヨークドールズのジョニー・サンダースの初のソロアルバム『So Alone』を意識したものではないだろうか。同作はニューヨークのオリジナルパンクからロンドンパンクへの嚆矢でもあった(レコーディングそのものはロンドンでセックスピストルズのポール・クックやスティーヴ・ジョーンズ、シン・リジィのフィル・ライノット、元スモール・フェイセスのスティーヴ・マリオット、プリテンダーズのクリッシー・ハインドなどが参加している)。逆境を吹き飛ばす、同作に通じる気概や勢いが込められているように感じるのだ。

 

 

Fighting ManであるHARRYはステージに帰ってきた。無理せず、少しずつでいいから、いつものペースを取り戻してもらいたい。この国には心と身体を揺さぶり、浸み込む、いかしたロッキンブルースが必要である。

 

この日のライブの2ndステージは9月23日(金・祝)23:59までアーカイブ視聴可能。HARRYのREALを体験して欲しい。

 

https://www.harry-station.com/pleasure_plesure.html

 

 

 

また、HARRYと土屋公平が共作した5曲を収録しているJOY-POPSのミニアルバム スタジオ録音盤『夜更けの王国 INNER INNER SESSIONS 2』が前作に続き、アナログ化される。共作の新曲5曲に加え、さらに"JOY-POPS LIVE2022 NEXT DOOR"から厳選した5曲のライブ音源を収録したアナログだけのスペシャルなカップリング盤だという。初回完全生産限定盤である。これも必聴だろう。二人だけながら、彼らの歌とギターの絡みは、最強のグルーブを生む。JOY-POPSのステージも聞きたくなる。

 

https://www.harry-station.com/yofuke_analog.html