食の道をゆく――SPRING HAS COME TOUR.+ | Let's Go Steady――Jポップス黄金時代 !

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Jポップスの黄金時代は80年代から始まった。

そんな時代を活写した幻の音楽雑誌『MUSIC STEADY』をネットで再現します。

福岡行きは、取材を終えると“新しい旅”の始まりでもある。前回、昨2021年11月の『高塔山ロックフェスSUNNY DAY SPECIAL』の時のように今回の穴山淳吉の里帰りツアー『SPRING HAS COME TOUR.』の時もすぐに東京へ戻らず、寄り道をしている。前回は「しまなみ海道」をレンタサイクルで走破するなど、年甲斐もなく冒険をしてしまったが、今回は無茶をせず、くたびれた身体をメンテナンスのため、佐賀の温泉に立ち寄った。同時に、かの地で美味しいものを食べることも忘れていない。福岡の旨いものを含め、美食三昧(!?)の模様も紹介しておく。食べ過ぎ感もあるので、よいこは真似をしないようにしてもらいたい。

 

 

3月17日(木)が穴山淳吉の福岡の初日。羽田を当日の午前中に発ち、福岡に午後入りする。まずは。福岡の繁華街、天神を目指す。天神のソラリアステージ専門店街のB2F(同フロアには飲食店が多く、雰囲気はアジアの屋台村。何を食べていいか、迷う!)にある「ひょうたんの回転寿司」だ。福岡は青魚が上手く、鮮度がいいから生で食べれる――“ケンミンSHOW”の受け売りだが、鯖を生で出しているという同店に飛び込む。流石、人気店、行列が出来ていたが、幸い昼過ぎだったので、20分ほどで入ることが出来た。早速、一番人気の「活さば」を食す。鮮度抜群だから、安心して食べられる。思わず、旨いと言葉が出る。房総や伊豆ならまぐろやヒラメなど、赤身、白身を中心に食べるところだが(ただし、小田原や金谷の黄金鯵は別格!)、鯖を手始めに鯵や鰯など、錆びついてきた脳を活性化するために青魚(青魚にはDHA<ドコサヘキサエン酸>やEPA<エイコサペンタエン酸>などの脂肪酸が豊富に含まれているらしい)を中心に平らげていく。食の至福が胃袋を満たす。

 

 

「ひょうたんの回転寿司」

https://tabelog.com/fukuoka/A4001/A400103/40000187/ 

 

 

天神から薬王院へ。ホテルに行き、チェックインを済ます。開場前に天神の親不孝通りにある「public bar Bassic」に入る。ライブの模様は既に報告済なので、『福岡BEAT革命』のサイトやFBページ、アメブロなどを見て欲しい。

 

終演後だから、夕食はかなり遅い時間になる。福岡は「まん延防止等重点措置」が既に解除されていたが、やっている店も限られる。実は2019年のTH eROCKERSの福岡公演に同行した際に食べに行った鳥皮を出す店へ行こうと思ったが、生憎、時間が合わず、別の店になる。今回は会場とホテルの中間地点に位置する地下鉄七隈線の「薬院大通駅」に近い「とりかわ みつます 天神店」にする。前回と違う店だが、文字通り、鳥皮を出すところ。

 

「とり皮 やきとり みつます 天神店」

https://mitsumasu-tenjin.owst.jp/

 

ぐる皮といわれる鳥皮が絶品。それ以外も一手間も二手間もかけ、様々な意匠を凝らした焼き鳥が出てくる。普通のつくねやささみ、豚バラなども簡素ながら隠れた味の細工があり、酢キャベツを胃腸薬(!?)にして、食が進んでいく。気づくと皿が山盛り、串が串入れに溢れる。鳥皮自体、歴史は浅いものの、いまや福岡の新名物といっていいだろうか。かなり深い時間にも関わらず、朝食が食べられないくらい食べてしまった(笑)。

 

 

翌18日(金)は、夜は遅くなるため、食事するところも限られる。ならば、福岡で食べたいものを昼に食べておくことにする。福岡に何度も来ているが、水炊きは意外と食べてない。ちょっとお高いのもあるが、老舗みたいなところは、あんまり遅いとやっていない。福岡発のビートミュージックの応援サイト『福岡BEAT革命』を一緒に運営するデザイナーの方と、水炊きのフルコースを食することにする。店は彼の見つけてきた中洲川端の歌舞伎座の側にある「とり田 博多本店」。歌舞伎役者が谷町と利用するような風格のある店だが、店員は気さくで敷居は変に高くない。

 

 

「とり田」

https://toriden.com/

 

「竹コース」というのを頼んだが、出て来たのは前菜2種(とり田たまご/季節の前菜)、博多名物ごまさば(ごまさば、最高!)、手羽中の旨煮、博多水炊き、雑炊、デザートというラインナップ。鳥はぶつ切り、もも、むね、つくねなどが山盛り、野菜もねぎ、小松菜、ニンジンなど、豊富にある。雰囲気は重く感じるが、副菜もたんまりありながらも意外とぺろりと行けた。身体は老化しているが、胃はまだ若い(!?)。

 

 

グルメ情報は地元の方に聞くに限る。その日のステージが終わった後、残ったメンバーや地元のスタッフ、ファンなどと、歓談をしていたのだが、何故か、博多ラーメンの話題になる。そういえば、今回は、まだラーメンを食べていない。このところ、うどんに嵌り、ラーメンはご無沙汰していたというのもある。また、東京で博多ラーメンを食べると、必要以上のこってりさにもたれてしまう。話題になったのはその食べ方だった。会場の「public bar Bassic 」がある天神の親不孝通り裏の「博多らーめんShin-Shin 天神本店」では、まず、ちゃんぽんを頼み、ちゃんぽんの麺を食べたら、ラーメンの麺を替え玉するというのだ。それが同店の正式な食べ方か、わからないが、会場に来ていた地元の方が熱弁する。ここで、ちゃんぽんの味を知ったとまで言う。そういわれたら、その食べ方をするか、しないかに別として、「博多らーめんShin-Shin 天神本店」に行くしかない。会場からはすぐ側で、11時過ぎにも関わらず、店の前には行列が出来ていた。流石、人気店である。15分ほど、並んで、漸く入店することができた。まず、ちゃんぽんか、ラーメンかで迷ったが、基本を押さえるべきと、一番、シンプルな博多ShinShinらーめんを注文。ついでに半やきめしも頼む(!)。豚骨だけど、あっさりして、食べやすい。胃にもすこぶる優しいのだ。考えてみれば、東京で豚骨というと、こってりがデフォルトで、食べる前から胃もたれを起こしそうだが、本場の博多ラーメンは違うことを再確認する。陣内孝則も“ケンミンSHOW”で、博多ラーメンはくどくない、久留米ラーメンと混同されていると言っていた。深夜には危険な量だったが、替え玉しなかったこともあって、翌朝もたれることはなかった。

 

 

「博多らーめんShin-Shin 天神本店」

https://www.hakata-shinshin.com/

 

 

 

19日(金)は福岡から小倉へ移動し、同所のライブハウス「LiveBar『本陣』KOKURA」へ夕方までに入らなければならない。その日は朝早く福岡を発ち、JR鹿児島本線をソニックで小倉を目指す。旦過市場へ行きたかったのだ。北九州の台所と言われる市場だが、先日、4月19日(火)の未明に火災が起き、甚大な被害を被ったことも記憶に新しい。約40の店舗が被災し、ガレキの撤去が課題となっているという。復興に向けて旦過市場の約80店舗が加盟する小倉中央商業連合会によって、クラウドファンディングも始まっている。

 

旦過市場へは小倉駅から歩いてもそう遠くはないが、せっかくだからモノレールを利用した。同市場は魚、野菜、肉などの食材を中心に乾物屋、総菜屋、飲食店など、様々な店舗がある。規模は大きくないが、地元の生活を支える市場。ちょっと、アジアの街角にある市場を彷彿させる。異界感に溢れる場所だ。見るだけでも楽しい。本当は、食堂でどんぶり飯を購入し、その上に市場の食材を盛ることもできるのだが、残念ながらその食堂はやってなかった。小倉のホテルに早めにチェックインできたら惣菜などを買い込んで、部屋で食べたかった。残念。

 

 

 

仕方ないので、銀天街(アーケード商店街)にある回転すし屋に入る。ここも青魚が上手いという評判の店で、30分ほど待たされたが(待合室もあった)、たまたま、仕入れの関係か、お目当てのものがなかったり、鮮度が足りないものがあったり、と、思いのほか、感動が薄かった。こんな時は河岸を変えるしかない。連食になるが、宿泊予定のホテルの近くに「資さんうどん」(すけさんうどん)があった。「牧のうどん」、「ウエスト」、「資さんうどん」という“御三家”のうち、資さんうどんだけ、食べたことがなかった。同店は北九州のミュージシャンに愛され、ライブや取材などで資さんうどんの魅力を語るものも多い。これは行かないわけにはいかないだろう。肉ごぼ天うどんにぼた餅(おはぎのこと。サイドディシュの定番らしい)を食べる。絶品だった。回転すしの残念を挽回だ。

 

 

「資さんうどん」

https://www.sukesanudon.com/

 

小倉の夜は、福岡へ車で帰る穴山淳吉を見送り、小倉の街に繰り出す。実は昨2021年11月に『高塔山ロックフェスSUNNY DAY SPECIAL』の後に行った居酒屋を再訪する。小倉駅から徒歩5分ほど、モノレールの平和通り駅のすぐそばの繁華街の地下にある隠れ家的な居酒屋である。相棒のデザイナーの方が見つけた店だが、魚や鳥、野菜など、何を食べてもうまいところ。店名や場所はうろ覚えながら、なんとか辿り着く。雑居ビルの地下、かつ、入口が木の重いドアと、あまり歓迎ムードはなく、接客も素っ気ないが、味は確か。北九州だけでなく、佐賀や宮崎、山口の新鮮な食材を創意工夫できんぎょオリジナルに仕上げる手腕は確か。行きつけの店(!?)に来たような安心感もある。

 

 

「魚彩日和 きんぎょ」

https://tabelog.com/fukuoka/A4004/A400401/40018413/

 

 

翌20日(土)は相棒と別れ、単独行になる。小倉から佐賀を目指す。随分前だが、佐賀の呼子、嬉野を巡る旅行をしたが、嬉野温泉が深く印象に残っている。その泉質はいい意味で肌にまとわりつく、良質の温泉だった。今回は佐賀の名湯「武雄温泉」と、「嬉野温泉」を2泊3日で回る。前回は福岡からレンタカーだったが、今回は鉄旅である。小倉駅から特急ソニックで博多に戻り、博多から鹿児島本線 特急かもめに乗る。佐賀へは1時間30分ほどだ。車窓の景色を愛でる暇もなく着いてしまう。佐賀駅は県庁所在地とは思えない、質素な駅で、また、駅前などは開発中である。2022年9月に西九州新幹線が開業する。西九州新幹線「かもめ」は長崎と佐賀県の武雄温泉を結ぶ。武雄温泉だけでなく、嬉野温泉も新幹線が通ることになる(現在は嬉野温泉へは武雄温泉からバス利用で30分ほど)。印象は静かな城下町という感じだが、目当ては名所旧跡ではない。佐賀ラーメンを食べること。博多ラーメンを食べたら佐賀のラーメンも食べなければだ。純豚骨ラーメンを標榜する「いちげん」という店が有名だと言う。博多ラーメンのルーツではないかもしれないが、豚骨ラーメンは各県で独特の進化を遂げているのだろう。佐賀駅の観光案内所で同店について、聞き込みをする。佐賀駅からバスで30分ほどだが、1時間に1本しかないという。行っても戻るには1時間に1本のバスを待つしかない。時間節約のためにはバスだけでなく、タクシーなども利用した方がいいとアドバイスをもらう。同店からタクシーで大隈重信記念館など、バス発着の多いところまで移動し、そこからバスで駅まで行く。そのための乗り換え場所や帰り道のルートなどをいろいろ教えてくれる。これは行くしかないだろう。佐賀で30分ほど、待たされたが、佐賀駅バスセンターから佐賀市営バス(犬井道・大詫間行)で21分、バス停「西川副小学校前」で下車、徒歩3分すると、「いちげん」に着く。店の前ではたくさんの人が並んでいる、行列店だ。こんな不便な場所(もっとも地元の方は車利用がほとんどだ)にも関わらず、多くの人が集まるのはラーメンの味ゆえのことだろう。まろやかなスープに玉子の黄身と「佐賀一番摘み海苔」という海苔を合わせると、まろやかさが増すとともに海苔の旨味も際立つ。味変感覚だが、美味しさのバリエーションが広がる。海苔はオプションでつけるものだが、ほとんどの方が注文している。カウンターには海苔の食べ方も指南されている。店主のいい意味で拘りが感じられる。

 

至福のラーメンを食べ終えると、丁度、佐賀駅へのバスが通過する。慌てて追いかけると、運転手の方がバス停で待っていますと合図をしてくれた。ラーメンを食べ、ほっこりし、運転手の方の優しい対応にほっこりする。幸いなことにタクシーを利用することなく、行き帰り同じ路線で帰れた。日頃の行いの良さゆえのことだろう(笑)。

 

 

 

「佐賀ラーメン いちげん」

https://sagaichigen.com/

 

佐賀駅から武雄温泉駅へはJR長崎本線で8駅、40分ほどである。同駅に着き、予約しておいた駅側のビジネスホテルにチェックインする。同ホテルにも温泉はあるが、武雄温泉と言えば元湯や殿様湯、家老湯、鷺の湯だろう。武雄駅から徒歩10分ほどのところに1300年の歴史があるという、愛媛の道後温泉のような古式ゆかしい温泉施設がある。同所の楼門は国指定重要文化財にもなっている。その設計者は日本の近代建築の礎を築いた辰野金吾(1854~1919年)。実は2013年の同門の改修工事の際に同じく辰野が手掛けた東京駅の丸の内駅舎ドームとの不思議な縁起や符牒が見つかったのだ。丸の内駅舎ドーム天井には、十二支のうち8つの干支をかたどったレリーフがある。ドームには十二支のうち卯(う)、酉(とり)、午(うま)、子(ね)の4つが欠けているという。ところが、その4つが武雄温泉楼門で見つかった。改修工事着手をきっかけに、2階天井の四隅に彫られていることが分かったという。地元紙と全国紙で報道され、辰野の故郷である佐賀(唐津市出身)と東京を結ぶ“十二支の謎”として注目を集めた。楼門にある、卯、酉、午、子がそれぞれ東西南北をあらわす干支であり、楼門天井に方角と合致して配されていた。一方、東京駅の八角形のドームにも8つの干支の方角と対応してレリーフが配してあった。晩年の辰野の遊び心かもしれないが、ちょっと『帝都物語』的な歴史ロマンである。それを改めて見てみたいと思ったが、生憎、補修工事なのか、見ることは叶わなかった。

 

温泉そのものの泉質はさまざまな成分が混じった弱アルカリ単純泉。保温性に優れ、肌になじんでしっとりすることから、美人の湯と言われている。熱湯とぬる湯があるが、どちらも熱く、熱湯風呂状態。最初、ぬる湯でならし、熱湯にチャレンジするが、跳ね返される(苦笑)。無謀な挑戦を繰り返し、何度か目で、漸く浸かることができた。それを繰り返すと、肌はすべすべ、見目麗しい美人になった(ような気がする)。

 

 

 

「武雄市観光協会 温泉」

http://www.takeo-kk.net/spa/

 

武雄温泉の宿泊を老舗温泉旅館ではなく、ビジネスホテルにしたのは経費削減もある。翌日は嬉野温泉の老舗温泉旅館で佐賀牛三昧。2日連続の贅沢では財布にやさしくない。節約させてもらった。その分、武雄温泉の日帰り温泉に浸かり、街中の旨いものを食することにする。

 

武雄での夕食はまったくの飛び込みだが、武雄市役所に近いところに良さげな居酒屋というか、ちょっとお洒落なダイニングバーがあった。最近、リニューアルされたらしいが、武雄には相応しくない(失礼!)モダンな店。見せかけだけかと思えば、味も確かなものがある。刺身の4点盛りなど、まぐろやイカ、ひらめ、エビなど、普通に新鮮で美味そのもの。また、馬刺しやありた鳥のから揚げも絶品。さらに同店のオリジナルのとんぺい焼き(豚のお好み焼きみたいなもの)はあまりの大きさ(ピザのラージサイズ並み)に驚くが、旨いので完食してしまう。腹パンになりながらビジネスホテルの温泉に入り、眠りにつく。

 

 

「酒食肆 独楽W」

https://tabelog.com/saga/A4103/A410301/41006600/

 

明けて、21日(日)は朝から動き回る。昼は行くところが決まっていた。「井出ちゃんぽん」だ。実は武雄市北方町の国道34号線沿いにちゃんぽんの名店、9店舗が軒を並べる「武雄・北方ちゃんぽん街道」と言われる、食の街道がある。同店はその中核的な店である。

 

午前中は武雄図書館や武雄神社(御船山の東麓に位置し、武雄市内でも最古の由緒ある神社。縁結びスポットの夫婦檜や大楠でも知られる)を観光。武雄市図書館はTSUTAYA絡みで毀誉褒貶もあるが、居心地のいい空間ではあった。昼前に武雄温泉駅を発ち、バスで「井出ちゃんぽん」の最寄りのバス停「ホームセンターユートク前」へは1時間30分ほど、少し長旅になるが、車窓の田園風景を愛でながら進んでいく。

 

「井出ちゃんぽん」に着くと、ここも行列が出来ている。流石、ちゃんぽんの名店だけある。15分ほど並んで入店、カウンターに着くまで少し待たされたが、当然、ちゃんぽんを注文する。ちゃんぽんと並ぶ、人気のかつ丼も美味しそうだったが、他のテーブルを見ると、量が半端ないので、夜の佐賀牛三昧に備え、ちゃんぽんだけにする。当初は普通のちゃんぽんにしようと思ったが、もやし、キャベツ、豚肉、ネギ、玉ねぎ、かまぼこ、さつま揚げなどの具材に特製ちゃんぽんはキクラゲと生卵が加わると言うので、特製ちゃんぽんにする。味はいたってオーソドックス。これぞ、ちゃんぽんという味である。変に捻りを加えてないところが好感を抱く。再訪することがあれば、ちゃんぽんとかつ丼を連食したいと思った。

 

 

「武雄・北方ちゃんぽん街道!! | 光武 英樹のススメ」

http://www.takeo-kk.net/recommended/mitsutake/001780.php

 

 

「井出ちゃんぽん」

https://tabelog.com/saga/A4103/A410301/41000004/

 

 

武雄温泉駅へ戻り、同駅からバスで嬉野温泉を目指す。30分ほどだが、山奥に入っていく感じだ。前回は車で来てしまったので、電車やバスを利用することで、その遠さを改めて実感する。

 

嬉野温泉、以前は鄙びた温泉地という感じだったが、湯布院や黒川のようにレトロな風情をかもしつつもところどころモダンになってきている。遊歩道や足湯施設など、昔はちゃんと整備されていなかった。コロナ禍が落ち着き、新幹線が通れば、同所を訪れる観光客は急増するのではないだろうか。

 

今回、予約した旅館は詳述しないが、老舗旅館が和モダンに生まれ変わる途中という感じだ。リノベーションをしているが、ところどころ、ボロが見えてくる。あと、数年したらいい雰囲気になるだろう。

 

しかし、温泉は流石、嬉野温泉。心地よいとろみが身体を包み、しっとりとした肌に仕上げる。身体の蓄積疲労も解される感じだ。そして、夕食は佐賀牛三昧。5段の重に季節の野菜、前菜盛り合わせ、タンとランプ、ロース、三角バラとサーロインがいっぱいに詰まっている。それを陶板で焼いて食べる。旅行情報サイトにも量が足りないということはない、と書かれていたが、その通り。むしろ、多過ぎで、最後の重のサーロンは、本来は油を味わうところだが、油身を取って、食べてしまった。

 

そして翌22日(月)の朝食が絶品。朝から佐賀牛料理と嬉野名物温泉湯豆腐である。とりわけ、温泉豆腐が旨いと同時に身体にも良い(という感じがする)。昨夜の暴飲暴食がリセットされる(笑)。

 

 

あとは、博多へ戻り、福岡空港から羽田空港へと帰るだけだが、そのまま帰るのはつまらない。“ちゃんぽん街道”の先を目指すことにする。長崎でちゃんぽんを食べる。それも長崎ではなく、佐世保でだ。これも随分前だが、佐世保駅側のちゃんぽんが旨かった。丁度、牡蠣のシーズンで、具材と出汁にふんだんに使われていた。店名は忘れたが、佐世保駅へ行けばなんとか、なるだろうだ。

 

ただ、電車では面白くない。嬉野温泉のバスセンターから佐世保駅へのバスが出ている。それに乗ることにする。1時間ほどの行程ながら山間の街を抜けていく。冒険心も満たす。西肥バス [N4] 佐世保市総合医療センター入口行へ乗り込む。

 

山間の道を行くと、途中、波佐見という町を通る。波佐見焼と言われるやきものの里で、道沿いには石窯が目に付き、窯元ややきもの公園、陶芸の館、伝習館、交流館などがある。波佐見は佐賀県ではなく、長崎県だが、波佐見焼も以前は佐賀のやきものの里、有田の有田焼と一緒くたに紹介されていた。近年、産地偽装(!?)の問題があり、波佐見焼として、ちゃんと紹介されるようになった。陶器などに明るくないが、有田焼や伊万里焼きなどと比べると、伝統的というより、モダンなデザインが施されているように感じる。後で調べたら我が家にも波佐見の小皿や茶わんがあった。

 

波佐見にはしゃれたカフェやレストランなどもあり、次、佐賀や長崎に来る機会はあれば、車上からの観光(!?)ではなく、ちゃんと立ち寄りたいところになった。バス旅ならではの意外な出会いではないだろうか。バスは大村湾に沿って進むが、海というにはあまりにも狭く、川に沿って進んでいるようにしか、見えない。佐世保市内に近づくと、ジャパネットたかだの社屋などが見えてくる。佐世保に来た感が増す。佐世保駅に着くと、記憶通り、ちゃんぽんの名店が2軒、仲良く真ん前に並んでいた。“佐世保ちゃんぽんの2強”と言われる「香蘭」と「大善」だ。紅蘭は定休日だったので、大善へ入る。行列はなかったが、中に入ると、満員状態。大勢の客を3人でこなすため、注文したものが出てくるまで、時間がかかったが、味は納得のもの。今回は大振りの牡蠣が存在を主張する。ちゃんぽん街道の先まで来たと言うところか。実はちゃんぽんもそうだが、隣の客が食べていたかつ丼(井出ちゃんぽんは卵とじのかつ丼だったが、大善はソースかつ丼)がやはり気になってしまう。余力のある時に連食するか。

 

 

「香蘭」

https://tabelog.com/nagasaki/A4202/A420201/42001533/

 

「大善」

https://tabelog.com/nagasaki/A4202/A420201/42000192/

 

 

これで思い残すことはない、博多へ戻るところだが、最後の食い意地、佐世保なら佐世保バーガーだろうと、駅から徒歩5分ほどの佐世保四ヶ町商店街入口にある「サセボ シー&ビー バーガーズ」へ駆け込み、CBバーガーを頬張る。バンズに比べて、パテが小さく、拍子抜けしたが、とりあえずは佐世保バーガーも食べれたところで満足。本来であれば、1泊して、トルコライスやレモンステーキ、くじらなども食べておきたかった(無念!)。

 

 

「サセボ シー&ビー バーガーズ」

https://tabelog.com/nagasaki/A4202/A420201/42009638/dtlrvwlst/B433432027/

 

 

佐世保駅から博多駅へと、JR佐世保線のみどり20号に乗り込む。博多駅から福岡空港へ。あとは2時間ほどの空の旅である。勿論、福岡空港の売店で稚加栄の明太子、ウエストのうどんを買うことも忘れなかった――。