日本のロックのミッシングリンクを掘り起こせ――SKIN幻の名盤復刻! | Let's Go Steady――Jポップス黄金時代 !

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Jポップスの黄金時代は80年代から始まった。

そんな時代を活写した幻の音楽雑誌『MUSIC STEADY』をネットで再現します。

日本のロックに多少なりとも関わり、長い時間が過ぎたが、その中で、どうしてそのバンドをより多くの人達に知らしめることができなかったか、と、悔しい思いをすることがある。バンドが売れる、売れないなどは、雑誌一誌ではどうすることもできないが、少なくとも私がすべきは誰もが知るバンドの提灯記事を書くだけではなく、既存のメディアの見識を疑い、世間の風評に関わらず、これはどうしても聞いてもらいたいというものを推薦するという役目もあると考えている。戦略などではなく、自らの審美眼や美意識を問いかけることでもあるだろう。特に多少、関わりのあるバンドなら、なおさらだ。しつこいくらいに過去の作品に拘るのも“意気地”(“意固地”ではない!?)みたいなものか。

 

 

そんなバンドの中にSKINというバンドがある。彼らの1980年代の作品は名盤というに相応しいにも拘らず、長いこと、「幻の名盤」を拝受するに留まる。私も面識があるライターの方が復刻を試みたが、直前のところで、実現はしなかったという。ところが、この5月26日、シングル「満足できない」(1980年12月21日)と「ヴァージン・コンプレックス」(1981年7月5日)、7月28日にアルバム『SKINLESS』(1980年12月21日)と『ZUN-ZUN』(1981年7月5日)がアナログで復刻された。パンクやハードコアを中心に国内外のインデペンデントな作品を取り扱う高円寺のレコードショップ「BASE」の快挙である。

 

 

同店のToshio Iijimaから連絡があったのは、7月初旬のこと。復刻記念のトークイベントを進めていることと同時に、当日、会場で流したいのでSKINが出演した『ステディ・ロック・ファンクション』の音源を提供して欲しいということだった。彼とはそれまで面識がなく、いきなり連絡を貰ったが、私が同コンテストに出演していたザ・ルースターズの大江慎也に同ライブの音源をデジタル化し、渡したことをブログで読んだかららしい。実はルースターズに限らず、当日のライブはカセットだが、すべて録音している。そのテープだけは40年後に備え(笑)、実家の倉庫でもすぐわかるところに保存してあったのだ。断る理由はない、メンバーに音源提供の確認をしてもらい、彼らのライブ音源をデジタル化して彼へ送ったのだ。

 

そんな縁もあり、昨日、8月1日(日)は東京・幡ヶ谷のライブハウス「HEAVY SICK」で開催されたSKINのトークイベントをリアルで見させて貰った。マリア023(ジュネ、OTOも在籍。OTOとはデビュー前からセッションなど、交流があり、OTOは自伝でSKINに加入したかったと書いている)、サイズ(チャカのいたサイズではなく、パンクバンドのサイズ)など、「東京ロッカーズ」との交流や桑田佳祐、小西康陽などがいた「ベターデイズ」と、彼らがいた「ALS 青山ライトミュージックソサエティ」など、青山学院の音楽サークル事情、SKINが原点(実際、私が20年ほど前に佐久間へ取材した際にもSKINについて熱弁していた)だという佐久間正英のプロデュース術など、貴重な話が秘蔵音源とともに公開された。

 

この日、登壇したメンバーのTatsu(G)やJunichi(B)の気負いのない発言からは、知らぬ間にすごいことをしていたことに驚愕。また、リアルで彼らと共演して、憧れたというシェイクスの黒水厚二や伴慶充の証言も貴重。さらに青学時代を知る音楽プロデューサー、加茂啓太郎の分析も的確。グラムとパンクの合体やヤンキー臭がないこと、Tatsuの独自のギターカッティングによる革新的な音作りなどの指摘、いずれも的を射る。慧眼である。

 

今回、リイシューをした「BASE」のIijimaも発言していたが、改めて彼らの豊潤で刺激的な音楽は世界で再発見されるべきだろう。日本のロックのミッシングリンクを掘り起こす。幻の名盤の復刻を機会に是非、聞いて欲しい。40年前の音ながら、いま聞いても新鮮で、多くの示唆に富む。

 

司会を務めたMC nittaの愛ある進行、駆け付けたファンの熱い思いなど、ソーシャルディスタンスを取りながらも、狭いライブハウスにはいい空気が充満していた。3日(火)までアーカイブ視聴も可能。その場の雰囲気を体感してもらいたい。

 

 

前述通り、私も少しだけ、協力しているが、彼らが出演した1980年4月1日、原宿ラフォーレで開催された『ステディ・ロック・ファンクション』(ザ・ルースターズ、フィルムスなども出演!)のライブ音源は録音状態も良好で、デビュー前にもかかわらず、彼らの音が確立されていたことがわかるだろう。アーカイブで再確認して欲しい。実家の倉庫シリーズ(!?)が思わぬ、役に立つ。40年ぶりの恩返しができた気分だ。

 

 

なお、お土産でくれたファンジン(年表や周辺図、アーカイブ、コメントなど、実に貴重な情報が満載!)や記念バッジ、サイン入り復刻7インチジャケットなど、彼らへの愛が溢れる。幸せな復刻である。

 

 

https://heavysick.zaiko.io/_item/340830

 

 

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