花鳥風月――大江慎也・花田裕之・井上富雄“ルースター達の配信ライブ!” | Let's Go Steady――Jポップス黄金時代 !

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いまだ緊急事態宣言下にある。かつてのように普通に音楽を見るのは難しい状況だ。楽しみにしていたライブやイベントはことごとく、延期や中止になった。そんな中、アーティスト達は奮闘努力して、音を届けようとしている。このところ、頻繁に行われるようになった“配信ライブ”。ライブハウスやホールなどを会場に無観客、もしくは観客を限定して、開催されている。

 

 

そんな中、先月末、1月30日(土)に福岡「Bassic」で開催され、同所から配信された大江慎也の新バンド、Shinya Oe & Super Birdsと、翌31日(日)に東京・下北沢「ニュー風知空知」で開催され、同所から配信された花田裕之のライブを見る。偶然だが、2日続けてのルースターズ三昧、嬉しい限り。2020年から自動延長(!?)された“40周年”の幕開けに相応しいだろう。

 

Shinya Oe & Super Birdsは大江慎也(Vo、G)、ヤマジカズヒデ(G、Vo)、KAZI(Dr)というラインナップ。3人での活動は既に2019年から始まっているが、Shinya Oe & Super Birdsと命名してから本格的なライブは初のことだという。私自身も2019年3月に東京・渋谷「LOFT HEAVEN」で見たものの、命名後は2020年3月に東京・下北沢「Fowers LOFT」で見る予定だったが、延期、中止で、見られないままだったのだ。

 

大江慎也のもう一つのバンドであるShinya Oe And Mothers Sunshineは大江慎也(Vo、G)、高木克(G)、渡辺圭一(B)、梶浦雅弘(Dr)というラインナップ。同バンドは2019年8月に東京・下北沢「GARDEN」、同年9月に『高塔山ロックフェスティバル』でライブ、昨2020年6月と9月に福岡「Bassic」でのライブ配信を見ている。この日は大江慎也が何故、2つのバンドを使いわけているか、その必然性を改めて感じることになった。

 

楽曲などは詳述しないが、オリジナル、カヴァーを問わず、両バンドは趣きを異にする。Mothers Sunshineはアーシーでルーツ・ロックな色合があるのに比して、Super Birdsはサイケデリックでアグレッシブである。

 

3人という形態はクリームやBB&A、EL&P(例えが古典的で申し訳ないが、ハイスタやブランキ―も入れておこう!)などの例を出すまでもなく、バトルになりやすいか、どうかはわからないが、いい意味でレイドバックとは違う、火花散らすインプロビゼーションも聞きどころになる。特に長尺の掛け合いなどはないが、その密度は濃く、刺激的である。ライブ後、ヤマジが「Shinya Oe & Super Birdsはルースターズではなく、ブルースエクスプロージョンやピクシーズを聴く感覚で楽しんでもらえると嬉しい。もっと世界が広がる」と、呟いている。実は初めて彼らを見た時、その模様をブログに書き、ベースレスということもあって、ジョン・スペンサーのブルースエクスプロージョンを引き合いに出している。その指摘も的外れはなかったということか。

 

アンコールではMothers Sunshineの渡辺圭一がゲスト出演。4ピースになると、また、性急さとは違って落ち着き払う。考えてみれば、”S”も“Z”もあったルースターズ時代。そんな一味ならぬ、味変的な魅力も大江慎也にはあるのではないだろうか。エンターテインメント業界がどのように推移するか、わからないが、今年9月に“バースデイ・ライブ”があるなら一粒で二度美味しい的なライブを期待したいところ。いわゆる“ラストワルツ”的なライブとは違った意味で、大江の魅力を引き出すのではないだろうか。それまでに事態の収束、好転を期待している。

 

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1月30日(土)福岡「public bar Bassic」 Shinya Oe & Super Birds(大江慎也+ヤマジカズヒデ+KAZI)『会場観覧限定15名+有料生配信”It's crazy but want to be chic”』

 

01. Good Dreams

02. Case Of Insanity

03. Riding With The King

04. Postcard From Waterloo

05. Visions Of Duskworld

06. Girl Friend

07. Why Does The Sun

08. Get Happy

09. Rosie

10. King Bee

11. Sad song

12. She Broke My Heart’s Edge

13. Stream Of Fun

14.Go For The Party

15. I Dream

 

En.(With 渡辺圭一)

 

16. バリウムピルス

17. Venus

18. Tonight

19. 恋をしようよ

 

 

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そして、その翌日、1月31日(日)には東京・下北沢「ニュー風知空知」で開催された花田裕之の無観客・有料配信ライブ『花田裕之“流れ”オンライン 下北沢・新春編』を見る。全国津々浦々、ギターを片手に弾き語る“流れ”シリーズのオンライン版。彼の“流れ”は昨2020年6月にもオンラインで見ているが、いまだ、生で見ることは叶わず。どこか、鄙びた田舎の街で演奏する彼を見たいものだ。

 

鄙びたと書いたが、花田の歌は鄙びてはいない。滋味豊で、味わい深い。彼自身は元々、ヴォーカリストではなく、突然の“人事異動”で歌わざるを得なくなったが、ピンチはチャンスとばかり、しっかりシンガーとしての地保を固めていった。

 

ギターの弾き語りは騒音や轟音でごまかすことができない。裸の歌と演奏を晒すわけだから、それなりの表現力が必要となる。そういう意味では、彼の歌は不愛想ながら、花田だけに華と艶がある。聞く度に病みつきになる。“流れ”ファンはそんな魅力に嵌り、駆け付けるのだろう。

 

福山雅治がカヴァーしたことでも知られる「雨のバス」(1998年リリースのアルバム『SONG FOR YOU』収録)はリアルなセクシー度で彼を上回る。同曲に限らず、井上陽水やSONHOUSE、SIONなどのカヴァーを含め、独特の煌びやかさを纏っている。

 

 

最近、作ったという新曲「夢かまぼろしか」(仮題)には“いつかは終わるだろう あてのない旅”という歌詞があった。雨 風 夢か まぼろしか――と続く。この状況の消息を願うようにも聞こえる。おそらく、いまでなければ生まれなかった歌ではないだろうか。

 

アンコールでは「決めかねて」を歌う。思考停止、回答の先送りではなく、2005年にリリースされたアルバム『Nasty Wind』に収録されたナンバーで新曲ではないが、まさにいまの気分だろう。そして、「ゴダイゴの浅野(孝已)さんは先輩なんですけど」と告げ、ゴダイゴの「ガンダーラ」を弾き語る。意外な選曲だが、ご存知のようにルースターズはゴダイゴのレーベル「アワージョイ」からデビューしている。昨年亡くなった浅野、そして先日亡くなったジョニー野村に捧げたのだろうか。「ガンダーラ」は鎮魂や葬送の歌ではなく、桃源郷を目指す歌でもあった。

 

この日の“流れ”はいつになく、染みた。“流れ”だけでなく、早くロックンロールジプシーズの勢揃いも見たいもの。そして、花田の歌を聞きに旅をしたい。漂白の思ひやまず――か。

 

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1月31日(日) 東京・下北沢「ニュー風知空知」『花田裕之“流れ”オンライン 下北沢・新春編』

 

1.She’s so untouchable

2.あきれるぐらい

3.鉄橋の下(ROOSTERZ)

4.感謝知らずの女(1995年のソロ・カバーアルバム『RENT-A-SONG』収録)

5.Old Guitar

6.月が見ていた

7.FOOL FOR YOU(ROOSTERS)

8.雨のバス

9.One for the road

 

(休憩)

 

10.Sweet Virginia

11.なまずの唄(SONHOUSE)

 

12.SORRY BABY(SION)

13.魅惑の宵(SONHOUSE)

14.サニーアフタヌーン

15.VENUS(ROOSTERZ)

16.ONLY ONE GOOD-BYE

17.新曲 (仮タイトル「夢かまぼろしか」)

 

 

Ec.

18.決めかねて

19.ガンダーラ

 

 

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実は、大江と花田が配信ライブを行った1月30日(土)と31日(日)にもうひとりの“ルースター”である井上富雄も配信ライブに関わっていた。

 

1月30日(土)、1月31日(日)の両日、日本武道館で開催された布袋寅泰の音楽活動40周年を記念する『HOTEI 40th ANNIVERSARY Live "Message from Budokan" ~とどけ。Day 1 (Memories)~』、『HOTEI 40th ANNIVERSARY Live "Message from Budokan" ~とどけ。Day 2 (Adventures)~』に彼を支えるメンバーとして出演している。

 

緊急事態宣言発令のため、無観客ライブとなったが、Day 1(1月30日)が BOØWYとCOMPLEX時代の曲を中心とした【Memories】、Day 2(1月31日)がソロになってから今に至るまでの道のりを振り返る【Adventures】と題された両日ともに2時間30分超え、20曲超えのライブを佐野元春 and The Hobo King Bandの盟友、古田たかし(Dr)とともにその重厚でいて堅牢な音の屋台骨を核となって支えていた。自らのバンド活動ではないが、井上富雄という存在の大きさを改めて再確認することになったのだ。

 

井上は、昨2020年は大江、花田、池畑とともにルースターズとしてデビュー40周年、今年2021年7月4日には60歳、還暦になる。ダブル・アニヴァーサリーである。この3月3日には、2019年10月に発表したアルバム『After the dawn』に続くアルバム『遠ざかる我が家』をリリースする。ルースターズから40年、“我が家”から遠ざかったが、その足跡は伊達ではない。必聴の作品である。

 

 

勿論、彼らだけではなく、池畑潤二はSIONやHEAT WAVEを支え、下山淳はプライベーツの延原達治と『下山淳&延原達治「緊急事態TOUR2021」』を行い、灘友正幸は大きな病を乗り越えた……ルースター達は意気軒高である。この世界に確固たる足跡を残しつつ、いまだに歩みをやめない。彼らの存在が日本のロックを面白くしてくれる。改めて、再評価が待たれる。サブスクなどももろもろの問題を解決して、解禁して欲しいところ。同時にいまのルースター達の活動も刮目すべきだ。

 

 

 

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