Zappaな夜――無機質な狂気 第11夜 頭脳警察、戸川純、汝、我が民に非ズ、赤いくらげ | Let's Go Steady――Jポップス黄金時代 !

Let's Go Steady――Jポップス黄金時代 !

Jポップスの黄金時代は80年代から始まった。

そんな時代を活写した幻の音楽雑誌『MUSIC STEADY』をネットで再現します。

あまり時間がないので、手短に書く。頭脳警察、戸川純、汝、我が民に非ズ、赤いくらげなどが一堂に会する観客数限定配信ライブ『無機質な狂気 第11夜』を見た。都合により、赤いくらげ、汝、我が民に非ズ、戸川純まではリアル視聴、その後の頭脳警察はアーカイブ視聴になった。

 

『無機質な狂気』は大手イベンターが仕切るものではなく、天国注射を学生の頃観て森田童子を生で体感して行き着いた場所が『無機質な狂気』だという渡辺コウジなる人物が主宰するシリーズイベント。それまでマリア観音、the原爆オナニーズ、THE END(遠藤ミチロウ+ナポレオン山岸+西村雄介+関根真理)、GAUZEなど、個性豊かなメンツが揃う異色のイベントだ。今回は昨2019年に企画立案し、出演者が決定したものの、このコロナ禍によって、開催が危ぶまれたが、漸く開催にこぎつける。

 

ナカムラルビイの妖艶なDJが会場を盛り上げ(想像!?)、赤いくらげが口火を切る。そのサイケで奔放な歌と演奏は神話や伝説に登場する“怪物たち”を前にひるむことなく、いい意味での競争心を持って挑む。この日が誕生日だというヴォーカルの夏生のその場にいれる事がとても嬉しさいっぱいのパフォーマンスは微笑ましい。

 

汝、我が民に非ズである。作家としての活動と並行して音楽家としての活動を続けているが、より本格的な活動へと舵を切る契機になったバンドだ。私的には杉真理などのライブでお馴染みの高橋結子がドラムスに控えるのが頼もしく感じる。同バンド、彼女に限らず、メンバーは手練れが揃う。変拍子と転調を繰り返しつつ、ソウルやファンク、ジャズの味わいもあるという難解な楽曲を苦も無く弾きこなす。町田の抑制と洒脱、諧謔のきいた歌を大いに盛り上げる。町田の軽妙な語り口は文章そのもの。出版社にSTAY HOME期間中に読むべき本の紹介を依頼され、その特集の題目が『STAY HOME WITH BOOKS』になっていて、なんで、英語で言うんねんと怒る。なんでも英語にするという世情にむかつく町田は、今回は楽団名が全部、日本語なんです。奇跡です。全部、英語名ではない。素晴らしいこと。刮目してみて欲しいと嬉しそうに語る。かのINUの「つるつるの壺」もこのメンバーならでは軽快さと迫力で聞かせる。改めてすごいバンドだ。北澤組との演奏もスリリングだったが、汝、我が民に非ズには手に汗握らせるものがある。彼の小説同様、見逃すことができない。

 

そして、戸川純である。中原信雄、ライオン・メリィ、ヤマジカズヒデなどの手練れを率い、迫力を増した歌声を聞かせてくれる。戸川がYAPOOSの「パンク蛹化の女」をヤマジの超絶ギターをバックに叫ぶ姿は鳥肌ものである。戸川純のセットだけ、アーカイブ配信がないので、目が離せないという状況だった。

 

大取は頭脳警察。この怪物たちは自分達が神話や伝説に埋没するのを拒否するかのようにその活動を加速させる。老舗だから、もう少しもったいぶってもよさそうなものだが、そんな気はさらさらないようだ。彼らにとっては晩節を汚すなどと言う言葉は無縁だろう。2008年の復活頭脳警察のナンバー「間際に放て」、期間限定の復活となった1990年にリリースされた『頭脳警察7』に収録されている「わかってたまるか」、「扇動」と畳みかける。

 

「乱破者」、「R★E★D」と、50周年頭脳警察のナンバーを軽快に演奏すると、これぞ、頭脳警察、絵に描いたような頭脳警察とでもいうべき歴史から飛びだす「銃をとれ」、「ふざけるんじゃねえよ」をナカムラルビイのサックスをフィーチャーして披露した。

 

そして一転、「廃人のロックンロール」を歌い、演奏する。聞きなれないと思ったら黒猫チェルシーのナンバーだった。PANTAは最後に老人のロックンロールと変えて歌うが、廃人でも老人でもない、成人(大人)のロックンロールになる。黒猫チェルシーとの野合も納得というもの。そして先日、8月2日のPANTA&黒い鷲の配信ライブでも披露した香港の雨傘運動で歌われ、いまも自由を求める歌として歌い継がれるBYONDの「海闊天空」を澤竜次の歌で聞かせる。この2曲は頭脳警察が歴史やイメージに絡め取られず、現在進行形であろうとする証明のようなものではないだろうか。そして、頭脳警察のドキュメンタリー映画『zk/頭脳警察50 未来への鼓動』 のエンディングでも流れた「絶景かな」で締める。

 

アンコールは全員参加で、「コミック雑誌なんか要らない」である。PANTAとTOSHI、戸川純、町田康が並ぶ姿は壮観だ(アーカイブでは見れなかったため、想像である!?)。それにしても誰かがSNSで呟いていたが、1日に「つるつるの壺」、「パンク蛹化の女」、「ふざけるんじゃねえよ」を聞けてしまう。それもカヴァーではなく、オリジナルである。あまりにも濃すぎる。

 

超絶技巧の演奏とエモーショナルで捻りある歌唱の融合と拮抗する。彼らの演奏や歌を聞いて、フランク・ザップ&ザ・マザーズやキャプテン・ビーフハートを思い出す。そういえば頭脳警察の名前の由来はザ・マザーズ・オブ・インヴェンションの「Who Are the Brain Police?」だった。こじつけだが、『無機質な狂気 第11夜』はザッパにしてやられた一夜だったのだ。

 

本日、9月8日(火)、17時までにチケットを買うと、23:59分までアーカイブ視聴可能(戸川純はアーカイブなし)である。これは絶対、見ておいた方がいい。時間はない、急げ!

 

https://t.pia.jp/pia/event/event.do?eventBundleCd=b2063864

 

 

汝、我が民に非ズ、頭脳警察 、戸川純ら出演!ライブ会場と動画配信にて開催!

 

汝、我が民に非ズ<メンバー>

Vo.町田康/Sax.浅野雅暢/Key.大古富士子/Gt.中村’JIZO’敬治/Ba.瀬戸尚幸/Dr.高橋結子

戸川純<メンバー>

Vo.戸川純/Ba.中原信雄/Key.ライオン・メリィ/Dr.矢壁アツノブ/Key.山口慎一/Gt.ヤマジカズヒデ

頭脳警察<メンバー>

PANTA/TOSHI/澤 竜次/宮田 岳/樋口素之助/おおくぼけい

 

 

赤いくらげ

汝、我が民に非ズ

戸川純

DJナカムラルビイ

頭脳警察

1  間際に放て

2  わかってたまるか

3  煽動

4  乱破者

5  R★E★D  2019

6  Quiet Riot

7  People

8  銃をとれ

9  ふざけるんじゃねえよ

10    廃人のロックンロール (黒猫チェルシー)

11    海闊天空 (澤竜次)

12    絶景かな

Enc

13    コミック雑誌なんか要らない   (全員)

※(戸川純はアーカイヴでは観られません)