THE MILLION IMAGE ORCHESTRA――井出靖が描く音の万華鏡 | Let's Go Steady――Jポップス黄金時代 !

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井出靖が描く豪華絢爛、空前絶後の“音の万華鏡”にして、“歌のTapestry(つづれおり)”。一昨日、24日(月)、東京・代官山「UNIT」で開催された THE MILLION IMAGE ORCHESTRA”の初のワンマン・コンサートは、まさにそんな言葉が相応しいだろう。

 

音楽プロデューサー、ミュージシャン、DJ、イベント・オルガナイザー、レーベル・オーナー、セレクトショップ・オーナー……と、いくつもの肩書や顔を持つ井出靖が率いる同プロジェクト。衝撃のデビューは昨2018918日(火)、同じくUNITで開催された『Grand Gallery 13th Anniversary HOME PARTY』でのこと。錚々たる顔ぶれ、煌めく音楽家達がジャンルやサウンド、年代や世代の垣根を超え、集い、“東京の夜の夢”を演出した。

 

その彼らが満を持してワンマン・コンサートを開催する。その直前、131日(木)にはMILLION IMAGE ORCHESTRA1stシングルもリリースされている。SKA FLAMESの名曲「星に願おう」のカヴァーだ。THE SKAFLAMESKODAMA & DUBSTATION BANDのメンバーを始め、WATUSI、屋敷豪太などが集結、ジャズ、ソウル、ラテン風味のレゲエ・ナンバーを聞かせてくれる。

 

1stシングルを名刺代わりにワンマン・コンサートを開催する。この日、駆け付けたのは以下の20数名のメンバー。あまりにも人数が多いので、詳しいプロフィールは検索してもらうとして、いずれもこの世界に地歩を固める実力者にして、曲者でもある。そんな彼らが井出のDJに導かれ、多士済々のメンバーが入れ替わり、立ち替わり、多彩な歌声を様々なリズム、ビート、サウンドに乗せ、千変万化する映像に合わせ、披露するのだ。

 

彼らをして“ロード・ムーヴィーを視覚、聴覚で感じる”という表現もあるようだが、私としては壮大な見世物小屋、顔を黒く塗っていないミンストレル・ショー、大人の移動遊園地が代官山に出現したという感覚。同時にその万華鏡的でTapestry的な音の鮮やかさは細野晴臣やヤン富田も出演している1988年7月に中野サンプラザで開催されたヴァン・ダイク・パークス率いるVan Dyke ParksThe Discover America Orchestraの初来日公演を思い出してもいた。井出はコンサートに際して、『BARKS』のインタビューで「ローリング・ストーンズの『ロックンロール・サーカス』みたいなイメージを持っています」と、発言している。そうであれば、ThePrivatesの延原やTH eROCKERSの穴井など、“ロック・スター”の参加も必然性があるというもの。

 

1部、2部併せて、2時間ほどのステージながら、「星に願おう」(SUKA FLAMES)や「SHERRY」(ThePrivates)など、参加するミュージシャンの楽曲から「CARAVAN」(デユーク・エリントンのロックンロール・ナンバー!)や「スローバラード」(RCサクセション)など、国内外のミュージシャンの楽曲まで、スカやダブ、ジャズ、ラテンからエレクトロニクス、ダンス・ミュージックまで、盛りだくさん。聞きどころ、見どころ、数多い。

 

詳述は避けるが、アンビエントな音に舞う内田勘太郎のボトルネック・ギターや延原達治や奇妙礼太郎の染みる歌声、SAROTapに田中知之のDJというエンタメ感いっぱいのスリリングなコラボレーション、高木完のRapに今里と荏開津広のPoetry Readingに井出のDJという化学変化、ECDや松永孝義、朝本浩文への哀悼、屋敷豪太と椎野恭一のツインドラムに穴井仁吉がベースで格闘……など、おそらく、井出靖がいなければ存在しなかったコラボレーションやサウンド、シーンが目白押し。改めて、彼の存在の大きさ、本人控えめながらも、その大立者ぶりを再確認しないわけにはいかない。かつて、私は井出のことを“東京の夜を面白くするアーティスト”と、勝手に評したが、まさにその言葉に偽りなしだ。クラブやパーティなど、胡散臭く、軽佻浮薄めき、私自身、体力も衰え、既にクラバーやパーティピープルという年齢ではないが、こんな“大人な楽しみ方”ができる場所なら大歓迎だ。居心地がすこぶるよろしい。いまやソロ活動が多く、共同作業はまれだが、以前はコラボレーションをしていたと思しきクリエーター系の方も多かった。顔はなんとなく覚えているものの、名前は出てこず、失礼極まりない(涙)。また、かつて、某雑誌で、“JAZZで踊るムーブメント”を紹介した御大との再会などもこの場ならではだろう。

 

それにしても井出靖のこだわりぶりが随所に発揮されていた。スタッフやメンバーのお洒落なオリジナルTシャツにオールドPOLOのコスチュームの艶姿、入場者へ配布される当日の出演者や演奏曲をプリントしたB5サイズのカード(デザインがかっこいい!)や開演前、開場後にエントランスで披露されたミニライブ(これまた、贅沢で小粋!)、そして、会場で供されるこだわりのフード(美味!)さらに終演後のDJパーティ(体力の限界で不参加。トホホ)など、細かいところまで、気配りや心配りが行き届いている。これが“おもてなし”というものではないだろうか。

 

夢の競演、おそらく、それはこの饗宴に立ち会ったミュージシャンやDJ、クリエーターにとっても同じではずだ。いい意味での刺激や影響があり、そこに競争や成長がある。井出の頭の中にあるMILLIONIMAGEORCHESTRATIONしたものだが、ここにいる誰一人欠けても存在しえないものだろう。井出団長が率いる“ロックンロール・サーカス”、次の“SHOW”も見逃せない。素敵なSHOWの始まりだよ――。

 

 

 

出演:内田勘太郎/延原達治(ThePrivates)/奇妙礼太郎/紫垣徹(THE SKAFLAMES)/塚本功/石井マサユキ(TICA)/AKIHIROwatusiCOLDFEET)/穴井仁吉(TH eROCKERS)/屋敷豪太/椎野恭一/外池満広/西岡ヒデロー/及川浩志/巽朗(Speak No Evil)/元晴(MORE THE MANSpeak No Evil)/石川道久(THE SKAFLAMES)/icchieYOSSY LITLLE NOISEWEAVER)/藤本一馬/冷牟田竜之(MORE THE MAN)/今里(STRUGGLE FOR PRIDE)/SAROConguero Tres Hoofers)/荏開津広/DJ YAS/田中知之(FPM)/井出靖

映像:信藤三雄/中野裕之/高橋恭司/高木康行