先週は、5月18日(水)に「牧村インタビュウ」、そして21日(土)に「MUSIC IS MUSIC」と、 “牧村三昧”(!?)。「故(ふる)きを温(たず)ねて新しきを知る」、「新しきを温(たず)ねて故(ふる)きを知る」――現役最高齢のプロデューサーとして知られる牧村憲一という、一等航海士の舵取りで、素敵な音楽時間旅行を体験してきた。
六本木ビリオンで開催された「牧村インタビュウ」も今年で3年目、本年度では8回目となる。当時のことを当事者に聞く、公開インタビュー、過去には伊藤銀次や岡田徹などのアーティストから三浦光紀や長門芳郎、井出靖などのプロデューサー、山本隆士や川村恭子、輪島祐介などのエディター、ライターまで、多士済々の面々が出演。今回のゲストは川原伸司。杉真理や竹内まりやの発見者であり、大滝詠一や井上陽水、筒見京平との活動でも知られる、音楽界のレジェンドと言ってもいい音楽プロデューサーであり、作曲家でもある。
ビクター在籍時のピンク・レディーの「ペッパー警部」が“サージェント・ペパーズ”からきていることや金沢明子の「イエローサブマリン音頭」の原型が杉真理&レッドストライプス時代からあったことなど、相変わらず、その場にいたものだけが語れる“歴史秘話ヒストリア”が満載。
また、ビクター退社後、ソニーを経て、大瀧詠一、井上陽水、筒見京平との共同作業における生々しい話はいまでも火傷しそうに熱い。安易に言ったことをそのまま書くわけにはいかないので、同講座を受講されなかった方は、正式文書(単行本)の発表を待っていただくしかないだろう。
いまでこそ、川原が平井夏美であることは周知の事実だが、30数年前に「MUSIC STEADY」で、杉真理の徹底研究をしていた際、平井夏美にもコメントをとるため、取材をお願いしたところ、川原本人から“彼”は電話取材しかできないと言われ、電話で取材することになった。その取材中も初対面の体で、話していたことを思い出す。後になって、同一人物とわかったのだが、電話しているときはまったく気づかなかったし、それを億尾にも出さなかった。当時は社員という縛りが強く、平井夏美の正体を明かせなかったのだろう。いささか、間抜けな電話取材をいつも思い出す。
杉真理絡みの話は、明日、26日(木)、東京・世田谷エムズ・カンティーナで開催する杉のトーク・イベント<80's But Goodies Special MUSICIAN FILE Vol.2「杉 真理 徹底研究2016 PART2」>(完売感謝!)の参考させてもらう予定だ。
「牧村インタビュウ」、温故知新・温新知故な刺激的な2時間。過去を振り返りながらも確実に現在や明日への視座を獲得することになる。このシリーズがあと、2回しかないのが残念でならない。
そして、牧村憲一とマスヤマ・コム桝山寛をキューレーターに、通称“闇鍋ライヴ”、“ワンコインライブ”と異名を取る「MUSIC IS MUSIC」。21日(土)、東京・原宿ストロボカフェで開催された。当日まで出演者告知せずという、いわば主催者への信用貸しで、成立するイベントだが、高野寛やショコラ&アキト、坂本美雨など、いままで外れた試しなし。当然の如く、500円以上の価値ありだ。
この日はオーストラリアのメルボルンのアーティスト、クリス・レクナーが第1部に登場。本来はオーストラリアのコーネリアスと言われる(!?)Cicada(Horse)という二人組だが、この日はソロ。ステージには機材が並ぶという感じではなく、テーブルにちょっこと並べられた機械をスイッチやつまみを巧みに操り、音を奏でていく。その音色はどこか、レトロフチャーな響きで、今様テルミンのようでもある。会場の幼児の泣き声や叫び声と、コラボレートしたかのように微妙にマッチする。
そして、2部はハバナ・エキゾチカ、バッファロー・ドーターの大野由美子が登場。ハバナ時代から変わらぬ、凛としていて飄々とした佇まいのまま、独自の音世界を繰り広げる。小川美潮を見た感じに近いのだが、極めて音楽的に高度なのだろうが、難解ではなく、幼子の遊戯性にあふれる。大野の演奏に合わせた「珍しいキノコ舞踏団」の篠崎芽美のダンスとのコラボレーションやマイカ・ルブテとのピアノの連弾、1部に登場したクリス・レクナーとのピアノとギターのアンサンブルなど、曲芸っぽく、大道芸を見ている気軽さと楽しさがあった。
このイベントがなければ、おそらく出会わなかった音楽もあるだろう。私にとって未知の音楽を提供してくれる貴重な場である。未体験の新しい音楽を知ることで、その音楽の生まれた背景や経緯、過去にも思いをはせる。
“タイムマシンにおねがい”ではないが、素敵な時間旅行の場となっている。「MUSIC IS MUSIC」も「牧村インタビュウ」同様、あと、2回という。いつまでもあると思うな、親と金ではないが、終わりがあれば始まるがあるというものの、いましかない、希少価値がある。機会を作って、見にいってもらいたい。
かつては加藤和彦や大瀧詠一、大貫妙子、フリッパーズ・ギターなど、現在もスカートや優河などを見出し、送り届けてきた“素敵な選TAXI(センタクシー)の”運転手(あれ、航海士から運転手に代わってしまった。まあ、いいか)である“牧村憲一印”。どれも外れなしの当たりばかり。
ちなみに牧村憲一、優れた売り爺にして、巧みな手品師でもある。バッファロー・ドーターの物販で見せた瞬間移動(!?)の手さばきは見事。Mr.マリックもびっくりだ(笑)。
「MUSIC IS MUSIC」
http://www.musicismusic.jp/ja/about.html