※「55歳からの“ハロー・フジロック!”Ⅰ」から続く。
翌日、7月25日(金)は雲一つない(かは忘れたが)、快晴。幸先の良いスタートだ。ポンチョやレインパーカーなど、雨具はできれば使いたくない。
その日、開場の前にリゾートマンションで朝食を頬張る。炎天下の野外コンサート、体力勝負である。空腹で倒れるわけにはいかない。同時に予め配布されている出演者の出演時間、会場などを記載したタイムテーブルを眺め、予定をシュミレーションする。同時進行、複数の会場、当然の如く、すべてを見ることは出来ない。それならば、効率的に見るため、同タイムテーブルにマーキングしていく。マーキングを改めて見ると、自分の趣味嗜好が偏っているのがわかるが、野外フェスはそれでいいだろう。別に全公演を“制覇”する必要はない。
宿泊先から会場へと急ぐ。受付でチケットを出し、リストバンドをもらい、手首にまくと、参加する感が増す。入口では記念撮影をする人も多い。来ただけでも記念なのだろう。
入場者は流石に20代、30代の若者が多く、男女も半々というところだろうか。家族連れや仲間とともに参加したという団体も少なくない。流石、昔と違い、ジーンズにTシャツみたいな軽装ではなく、山ガール&山ボーイのような恰好。バードウッチング用のレインブーツを履いている人もいる。若者ばかりかというと、よく見ると中高年もいる。ロック少年・少女のなごりのようなものを纏っている。年齢層は分布に粗密はあるが、幅広い。私もこの会場で浮くのではないかと心配したが、どうやら、そうでもなさそうで、一安心。
メインステージとでもいうべき<GREEN STAGE>は入口を入り、右側に巨大なセットが組まれている。通常の野外コンサート会場と同程度か。40000人を収容できるそうだ。
同ステージのオープニングはフジロックのフェスバンドであるROUTE 17 Rock’n’Roll ORCHESTRA(feat. 仲井戸”CHABO”麗市、甲本ヒロト、トータス松本、TOSHI-LOW)だ。
バンド・メンバーは池畑潤二(Dr)を筆頭に、松田文(Gt)、井上富雄(Ba)、花田裕之(Gt)、ヤマジカズヒデ(Gt)、梅津和時(A.Sax)、田中邦和(T.Sax)、タブゾンビ(Tp)、青木ケイタ(B.Sax)、細海魚(Key)、丈青(Pf,Key)、スティーヴエトウ(Per)と、フジロックに縁のアーティストたち。
トップで登場したTOSHI-LOWは、スライ&ザ・ファミリー・ストーンの「I Want To Take You Higher」で、会場を一気に盛り上げる。
続いて、15歳の時に初めてステージで歌った曲だというルースターズの「レザー・ブーツ」をカバー。ルースターズは最終日に登場する、何か、前振りのようでもあり、池畑、花田、井上というルースターズメンバーへのリスペクトのようでもある。
トータス松本は「Oh, Pretty Woman」、甲本ヒロトは「アナーキー・イン・ザ・U.K.」。そして、ヒロトは仲井戸”CHABO”麗市をステージに迎え入れ、RCサクセション・アレンジの「上を向いて歩こう」を熱唱。
CHABOがブルース・スプリングスティーンの「ハングリー・ハート」をカバー。そして、“一緒に歌ってくれ!”と演奏したのは、お馴染み、RCの名曲「雨あがりの夜空に」だ。
ラストはTOSHI-LOW、トータス松本、甲本ヒロトが再びステージに登場し、ザ・ポーグスの「FIESTA」を交互に歌って大団円を迎える。
ポーグスも最終日のラストにスペシャルゲストとして出演する。まるで、今回のフジロックの見どころを提示して、楽しんでもらいたいという予告編的な選曲である。とにかく、こうしてフジロックは始まった。勿論、各ステージも同時進行で、演奏が始まっている。
<GREEN STAGE>から<GYPSY AVALON>を目指す。辻仁成が出演する。私生活の“事件”が話題となり、イベンターからキャンセルを食らい、“自腹ツアー”を決行することになったという。勿論、フジロックも自腹での参加である。どんなステージを見せてくれるか、興味津々というところ。ある意味、旬である。私自身、エコーズは何度も見ているし、ソロになってからも見ている。だが、今回の自腹ツアーでは、果たして、どんなステージを見せてくれるのか。
辻はギターを抱え、ステージに登場する。元々、ビートニクである。ギター1本の弾き語りだが、それもありだろう。ステージに立つ彼は思いのほか、飄々としている。ヒット曲「ZOO」を弾き語りながら、自らの“騒動”を軽く笑い飛ばし、指に止まったトンボと戯れる。
何か、作家・辻仁成(ひとなり)ではなく、音楽家・辻仁成(じんせい)らしい面を垣間見たような気になる。随分前だが、下村誠などと一緒に諏訪優のワークショップへ通っていた頃を思い出す。
辻仁成の後は、<GYPSY AVALON>から<FEILD OF HEAVN>へ移動。まさかの再結成、SOOO BAAD REVUEだ。長生きはするもの、“関西ソウル、ファンク界の大御所の揃い踏み”を見れるとは思わなかった。当時の切れはないかもしれないが、その分、熟し、こなれている、いなたい(なんていう言葉を使うのは何十年ぶりか)。使用法が間違ったらすまん。丁度、直前に再結成ライブをしたばかり、見るには、いい頃合い。満足である。
SOOO BAAD REVUEを堪能した後は<ORANGE COURT>へ移動して、ジャームス・イハを見る。最新(!?)洋楽に疎い私だが、何故か、スマッシュパンプキンズの初来日公演を見ているし、彼のソロ作も聞いている。多分、アメリカの2枚組作品『Here&Now』のプロデュースの印象が良かったからだろう。以前から興味を持っていた。独特の儚げなサウンドが心地良い。そこから<木道亭>の阿部芙蓉美を見ようと同所へ向かうが、逆走は駄目で、<WHITE STAGE>まで戻り、改めて木道を歩むが大渋滞。まったく進まない。漸く辿りつくもものの、既に終わっていた(苦笑)。
思いきり疲れてしまったが、ここでめげるわけにはいかない。15時50分からの佐野元春の『VISITORS完全再現ライブ』を見るために<GREEN STAGE>へ急いで戻る。逆走はできないので、また、<FEILD OF HEAVN>まで行き、それから同所を目指す。移動慣れしてないせいか、日頃の運動不足か、思い切り体力を消耗する。これは“フジロックダイエット”もありかと、淡い期待を抱く。
急いだ甲斐があり、佐野のステージに間に合う。同パーフォーマンスについては、既に言及しているので、詳述は避けるが、改めて見たいものが見れたという満足感と、ある種、アウェイともいえる場所に果敢に挑み、自ら音楽を投げかけ、いまという時代に問いかけているように見える。その勇気、冒険心に敬意を表するとともに、彼の投じた一石が大きな波紋を生んでいく様を見て、嬉しくもなる。この日、初めて佐野を見たというキッズ達も30年前にキッズ達と同じように、何か感じ入るものがあったはずだ。観客の温かい反応がそれを物語る。
実は佐野と同時間帯で見たいアーティストがいた。ガーランド・ジェフリーズである。ストリート・ロックを愛する者なら必聴とでもいうべきだし、多分、来日公演など予想だにしなかったが、佐野の時間と被り過ぎる。残念ながら、涙を飲むしかない(涙)。
<GREEN STAGE>から再び、<FEILD OF HEAVN>に移動。鈴木慶一の新グループ、Controversial Sparkを見る。急遽、参加が決まったらしく、ドラムレスと、メンバーはむしかけだが、武川雅寛がゲストとして、華を添える。アコースティック・ユニットながら捻りの利いた音を聞かせる。考えてみると、辻仁成のソロを鈴木慶一がプロデュースをしたことがあるが、時間差で同じステージに立つのは不思議でもある。時間が合えば久しぶりの共演もあったかも。こんなところで、時間が交錯するのが面白くもある。
同バンドを一通り、見終わると、気になるバンドを摘み見。<WHITE STAGE>で、高橋幸宏 with In Phase、そして、<FEILD OF HEAVN>で、ROVO and System7を堪能。同エリアらしいアシッドな音で、流石、スティーブ・ヒレッジという感じだ。元ゴングである。
摘み聞きしながらも再び(三度!?)、<GYPSY AVALON>を目指す。大森靖子である。いま、話題の女性シンガーソングライターで、ユーチューブ視聴だけだが、イベントでの爆弾発言など、盛り上がっていた。出落ち(!?)だと思っていたので、始まる前にステージへ駆けつける。果たせるかな、いきなり女性が登場。本人かと思ったら、元Bisのコショージ。盛り上がる中、ぬいぐるみを抱えた“週末やらせるアイドル、なな”と名乗る女性が登場し、歌いだす。後でわかったが、彼女は会場で炊飯ジャーからご飯を配っていたそうだ。ギターを抱え、情念を込めて、歌う。曲名などわからないが、“脱法ハーブ(いまなら危険ドラッグか)、握手会……”と繰り返す歌が印象に残る。世相を切り取るようでいて、自虐的でもある。前向きな発言もいい意味での違和感を呼び起こす。古くは戸川純、泯比沙子、今だと椎名林檎やYukiか、女性の“生理”のようなものを歌に込める。ある種のカオスが歌の中に渦巻く。すべてが理解できるみたいなふりもできないが、今のJポップの亜種を見せられ、アイドルとは違う、奥深さみたいなものを感じた次第。ちょっと、いまに触れたかのような、フジロックの新しいものを見つけ出す嗅覚を感じさせる。30分ほどのステージだったが、ちょっとした虚脱状態になる(笑)。
大森靖子の後は<GREEN STAGE>に戻り、電気グルーブを見る。その前に<FEILD OF HEAVN>で、ちらっと見たMOE.に嵌る。オールマンズやデッドなどのジャム・バンドを今に伝えるバンドで、ダルでいてシャープなインストの応酬は、何十年も前に慣れ親しんだ音を思い出させ、身体は正直なもので、反応していく。なかなか、その場を立ち去れないでいた。ちなみに東京に戻って、早速、MOE.の新作『No Guts,No Glory』を購入してしまった。翌日、会場でお会いした鈴木慶一も絶賛していた。
後ろ髪を引かれる思いで、<GREEN STAGE>へと急ぐ。陽が落ち、通路を照らすミラーボールやオブジェが幻想的な風景を出現させる。これは映画『モテキ』で見たシーンと同じ、思わず、長澤まさみを探してしまう(笑)。
<GREEN> STAGE>では、既に電気グルーブが大観衆を前に圧倒的なステージを展開。久しぶりの電グル体験だが、その演奏の迫力、電飾(!?)を駆使したシアトリカルな演出、彼らがかようにも巨大なグループになっていたことに驚く。かつてのYMOを見たときを彷彿させる。後継者は彼らか。
電グルの圧巻のステージに感慨を抱きながら、橋を渡り、苗場食堂地帯を超え、<RED MARQUEE>へ。ザ・バースディである。比較的、新しいバンド(という表現がご無沙汰感がありすぎ)ながら、元ミッシェルガンという、ルースターズ絡みでも見たかった。シャープでスピーディーなサウンドと迫力満点のボーカルは、男胸騒ぎ系、質実剛健ながら、インテリジェンスな陰影にも富む。私の中の男ロック魂をくすぐる。かっけーと、思わず、叫ぶ。
バースデイの<RED MARQUEE>から大移動。大友良英スペシャルビッグバンド・フェスティバル FUKUSHIMA!オールスターズ大盆踊り大会の<ORANGE COURT>へ。これはかなり応える。流石、この時間である、既に足腰に来ている(苦笑)。最後の力を振り絞り、急ぐ。ぎりぎりだが、なんとか、盆踊りに間に合う。あの熱狂したあまちゃんの乗りと鎮魂が混じる。素敵なお祭り空間。この春、実際に「あまちゃん」の舞台になった北三陸へ行ったから、なおさらだ。感慨深いものがあるが、なんか、そんなものを吹っ飛ばす乗りで、嬉しくなってくる。さあ、これからと思ったが、大団円だった。一瞬でもその世界に触れたことで、良しとする。この春、車を飛ばして行ったサンテツの再開記念式典へと繋がる。この旅が縁を繋げる。
同所から再び、<GREEN STAGE>へ。本日のヘッドライナー的な存在のフレンツ・フェルナンドである。私でも知っている人気バンド、会場はそのパファーマンスに熱狂。お洒落でありつつ、ちょっと屈折している。私的にはロキシー・ミュージックなどにも通じるものを感じる。趣味的な音楽以外、最近の洋楽に疎いので、例えが古く申し訳ないが、何気に楽しめる演奏だった。なんとなく、終わり、演奏が終わる感慨より、とりあえず、1日目を乗り切ったという思いが強い。何かをやり終えたような満足感と高揚感を抱き、宿泊しているリゾート施設へ急ぐ。屋台で買い食いはしたが、ちゃんと食べていないので、キッチンで簡単に料理を作り、風呂に入って、熟睡する。朝まで起きることはなかった。流石、フジロックである。生半可ではない。もしテントや車中泊、会場から遠いところだと思ったら、ぞっとする(笑)。
※「55歳からの“ハロー・フジロック!”Ⅲ」へ続く