うちのバアサンの今一番好きなのは、食べることであるが、
どんなに美味しくても笑わない。
「美味しい。」
と言うことはできるが、顔を見ると、マズイものを辛い思いで食っているような
苦悩に満ち満ちた表情である。
バアサンのおかしな言動にいろいろ突っ込む段階は卒業した筆者であるので、
どんなに辛そうに美味しがっていても無突っ込みで来たが、
先日、久しぶりに気が向いて、レーズンサンドを美味しがって死ぬほど苦しそうに
なっているバアサンに、
「美味しい?」
と聞くと、
「美味しい!」
と言うが、顔つきは変わらぬままである。
「美味しいときって、大体の人はニヤニヤするねんけど、
なんでママはそんなに難しい顔してんの?」
と優しく聞いてみたところ、
「おいしすぎてとてもニヤニヤなんかしてられへんから。」
という驚くべき理路整然とした答えが、かなりの速さで返ってきて
筆者は内心仰天し、
「あ、そうですか。なるほど。なるほど。」
とだけ言って黙った。
賢い人を相手にするとおのずと敬語になるものだが、
この時の筆者がそうであった。
また、この状況において、筆者なら間違いなくヘラヘラしながら
言ったはずの言葉をバアサンはそれこそニコリともせず言って寄こしたので、
その点からも黙らされた気がする。
このバアサンはたまにこのように思わぬ的確な発言をするので
油断ならない。