(前回までのあらすじ)
ガソリンスタンドで給油中の筆者。
遠巻きに筆者のクルマを勝手にチェックしていた
坊やが歩を進めて口火を切るのだった―。
セルフ式スタンドだというのに、またぞろ、またぞろ若けえのが店から出てきて、
ちょっと筆者の方に接近し、4mぐらいむこうからこっちを見ている。
(なんだ。なにを見てやがる。あっちへ行かないか。シッシッ!!)
と思うか思わないかのところで
「今ね、キズの修理をお安くやらしてもらってるんですよー。
こことか、ちょっとキズあるじゃないですかあ~。」
と来た。
そんなもん、気にしたこともない!
普段の筆者なら、そう言ってニベもなく撃退していたはず。
・・・しかし今は・・・!
さっき唐突にキズを直したいような考えが浮かんだばかり。
今、この、数年に一度というディフェンス弱体化中の筆者に、
それを食らわしてくるのか・・・!
「そんなもんいらん。」
を一瞬の間もおかずに出すことをしなかった異常な事実に
自分のスキの大きさを感じて戸惑う筆者。
―しかもである!
「一か所いつもやったら1万5千円なんですけど、今だけ20センチ四方を
1万円でやらしてもらってるんです。ここ20cmでいけますんで、1万円ポッキリで。」
ドドーン!
「洗車とか、(このクルマには特に)必要やと思うんですけど、補修のあと、
キッチリ洗車して、ワックスもかけて、タイヤワックスまでかけて
お返ししますんで。」
ダダーン!!
「それからね、修理中、不便じゃないですかあ。だからね、ちゃあんと
代車もお貸しします。それ全部で1万円ポッキリで、やらさしてもらいます!」
ザッパーン!!!
いかん、コレはいかん。
しっかりするんだ自分。
ここでこのハナシに乗っかっては、ブレーキオイルの勝利が水のアワだ。
わかっているのか、自分。
そそれは、そうだが、しかし。
うぬ!!ハアハア。
そして次のセリフを言った瞬間、筆者の負けが決まった:
筆者 「・・・それ、全部でいちまんえんやの・・・?」
負けである。
「それ全部で1万円ポッキリ」ってニイちゃんが言ったのを聞いていながら
おうむ返しにこんな確認をしてしまうようではもう、完敗だ。
ニイちゃん 「そうなんですよお!キズも直って全体的に小ギレイになって、
それで1万円て、めちゃめちゃええでしょ?!」
小ギレイに、と来た。ヒトのクルマを汚そうに。
それなのに、筆者のふがいない返事はどうだ:
筆者 「・・・ホンマそうや・・・ねえ・・・。・・・ッハァー・・・・。」
だってこりゃ、安いことは安い・・・・。
洗車とワックスだけでも5000円はする。
そして筆者のこのクルマ、筆者だって服が車体に当たらないように
注意しているほどの状態だ。
そろそろ、というか10か月ぐらい前から洗車は必要なのだ。
さすがの筆者もコレで年を越そうとは考えていなかった。
そこに代車までついて、いちまんえんて。
なんなんだコイツら、こないだから?
なんなんだコイツらのこの、絶妙な値段設定は?
ただでさえ勝利は敵のものに決まったというこの状況に、
まだ続きがあった。
自分でも驚愕したことに、ニイちゃんから見えていなかった反対側の
もう一つのキズのことも自発的に申告し、2か所2万円で補修するという
予約の紙にサインしてしまった。
全面降伏どころか、もう隷属状態である。
なんなのだこれは。
これではもう筆者、完全に○○石油のカモである。
奥から出てきたオッサンが、筆者の顔を見るなり、
”あー、今日の補修の客は、こないだのタイヤの客か。”
という妙な知り合い顔でニヤリとした。
ダアー!!ヤバイ!!
常連客みたいになりかかってるではないか。
いやいや、よく聞けオッサン。これで終わりだ。
この後何を言って来てもなんにもしないから覚悟しろ。
どう思っているか知らないが、このアタシはなあ、
貧乏人なんだ!!
言えば言っただけ金出すみたいに見えているのは今日で終わりだッ!!
って、オッサンに伝わるわけでもないのに
一生懸命思う筆者であった。
「もう!!ここに来たら必ずお金かかることになる!!」
悔しまぎれにやっとこれだけの文句を言う筆者に、ニイちゃんは
「それはそうですよ。ウチも仕事ですから。
ガソリンだけ売っててもゼンゼンだめなんで。」
と、蛙のツラにしょんべんといった体である。
この会話だけでも負けた気持ちにさせられる筆者であった。
だって、この会話のあるべき姿は:
「もう!!お客さん、何を言っても絶対 『うん』 と言わないんだから!!」
「ホホホ、それはそうよ。あたくしは貧乏人なんだから。
ガソリン入れるだけでセイイッパイなのよ。」
でなければならなかったのだから。
○○石油、悔しいが、アイツらはやり方を知っている。
貧乏人でも一瞬のスキを突かれればクラッと決めてしまえる程度の
ちょっとした高額を吸い取るやり方を。
このアタシの負けだよ。
ピカピカのシュイーンを運転するクタクタのアタシ。
それがこの秋のアタシなのだ。あはは。あはははははは。