見慣れない食物を売っていると、筆者は買う。
高かったら買わないが、筆者の住んでいる辺りには
すごく高いものはあんまり売っていないから
大体は買う。
見慣れないものを買って食べるのは
小さな冒険だ。
生活圏内で、しょっちゅう小さな冒険ができるなんて、
そんな楽しいことをやらない法はないから、やる。
冒険には成功と失敗が付きものである。
この数日で筆者は一生の友にもしたい感激の美味と
驚愕のガッカリに出逢い、ついでにウッカリを一件やった。
<驚愕のガッカリ食品の巻>
タイのインスタントあえそば。
愚を犯してしまった。
とりあえず商品説明をしたい。
紙製の箱の中に入っているのは
麺とレトルトパウチ入りソース。
紙製の箱に?!
まあそういうこともあるかもしれない。
麺のパックの切れ込みに爪をかけ、口が数ミリ開いたところで
食べ物からしてきては断じてならぬ匂いが!
完全に食べ物でないものの匂いというよりは、
元は食べ物であったものが食べ物でなくなったあとの
匂いなのである。つまり;
ギトギトなまでに麺にまぶしたナゾの黄色い油が
賞味期限内にもかかわらず徹底的に酸化して、
今やそのにほひは換気扇。
萎える筆者。
しかし、一応は完成品にしてみなければならぬ。
このおかしな決意はなんなのか、筆者も知らない。
麺とソースを箱にあける。
そこで筆者の唇から大きな独り言が。
「具ゥは?!具ゥはよ?!」
どういうつもりなのか。
いや、筆者にも責任はないことはない。
なぜなら冷静になってみれば、写真通りの緑の野菜や
大きなエビが入っているはずはないのに
漠然とそんな感じになっていることを期待していたのだから。
しかしである。
カップヌードルに見られるような小エビの干からびたのや
ネギの乾いたの程度の努力すらしないとはどうしたことだ。
いや増して沈む筆者のハート。
しかし、それにもかかわらず意外にもおいしい
という可能性が皆無とは言い切れない、
などと若干だが盛り返す筆者。
突き進め、私。
説明どおり2分間チンの術である。
チン後も見た目はまったく改善されていない。
ただ、チンの威力か、換気扇は弱まっている。
しかし、なんてマズそうなのだ。
具をあきらめるとしても、色もハコ写真とゼンゼン違うではないか。
いや、しかしこれをよくかき混ぜて食せ、とのことだ。
もしかして、よくかき混ぜたら色も変わっておいしそうに・・・
なるワケないが、混ぜる以外にどうしようがあるというのか。
かき混ぜた。
おいしくなさそう加減に陰りは見られないというか、
これはもう、死ぬほどマズそうでは?
しかし、食べずにマズさを語ることはできぬ。
すでに当初の目的 「未経験のおいしいさを楽しむ。」 は頓挫したが、
プランB: ”未知なるマズさを経験する。”
の開始である。
もちろん気は進まないが新計画に基づき、一口すする。
・・・・・
完全に激マズ、とまでは言い切れない。
タイ特有の甘辛味にナッツのコクが混じりあって、
もしかするとソースには罪はないかもしれない。
しかし。
この、絶望的なまでに殺風景な外観はどうだ。
酸化油まみれの、コシも皆無な炭水化物が片鱗の具もなくタレに和えられ、
あくまで黄土色一色に、紙の箱に入っている様子。
中年の一人暮らしのオバハンが、夕闇迫る薄暗い部屋で、
お正月の祝箸の使い古しを手に、
換気扇毒入りインスタントフードを食して意気消沈するの図。
この世にこれ以上殺伐とした、哀しい画があろうか。
筆者はマズイ食べ物はかなり平気な方だが、この食べ物は
ただマズイのではなく、肝臓に悪い感じが強くする。
1箱ぐらい食べたからって大丈夫かもしれないが、
自分の身体についての数十年分の知識から、筆者は知っている。
二口目を食べれば、あとには胃痛と後悔が待っていることを。
一口目がまだ口中にあるまま流しの三角コーナーに
赴き、まだアツアツの箱の中身をすべて捨てた。
よく考えたら口中のも吐き出した方が良かったかも知れないが、
そっちは飲んでしまった。
いやはや。
これほどのハズレには、生まれて一度もあたったことが
ないように思う。
これまでのハズレ食品第1位は、十数年前にハワイのスーパーで買って
キングカメハメハホテルの部屋で食べた
ミソ・ヌードル
であったが、今回のタイヌードルの毒な感じを体験したあとで
考えれば、あっちは比べ物にならぬおいしさであった。
えげつないほど現実から乖離したイメージ写真も
詐欺級であるが、とりあえず
箱に
Authentic Thai (本物のタイ料理)
って書くのだけは客でなくタイのためにやめたがいいだろう。
(次回はアタリとウッカリ)



