モロヘイヤ。
エジプト原産のこの葉物野菜は、いつの間にか
ごく普通に売っているようになったが、
筆者は買ったことがなかった。
だって芽とか茎が毒入りだというではないか。
モロヘイヤ入り飼料を食べた牛が死んだと聞いて以来
モロヘイヤを見ると毒りんごを手に姫(=無論、筆者)に手招きする
悪いバアサンを思い浮かべるようになってしまい、
買ってみようかな、どころの騒ぎではなくなっていた。
といって、すでに他人によって加工済みの食品にモロヘイヤが入っているのは
躊躇なく食し、あまつさえ「モロヘイヤっていい匂いだな。」
などという感想を持ったりとかするアンビバレンスをやすやすと
自分に許してきた筆者である。
しかし、先日ダイエーにて買い物中、どうしてか突然
ムラムラと次の考えが湧いて起こった:
何年も前に1回だけ報道された事故におびえて、
こんなにも当たり前に売っておる野菜を買わないとは、
よく考えたらあまりに情けない心根ではないか。
本来の筆者は食べ物でも他のものでも
「あれキライ」 「これニガテ」 とかいって
何かを避けながら暮らすのは大っ嫌いなのだ。
なのに、モロヘイヤにおびえて暮らしてどうする。
ナンセンスだ。
そんなのは今日を限りに克服せねばならぬ。
というわけで買い物カゴへ。
ダレも 「おおお奥さん、アブナイ!」 とか
言ってこない。
ヤハリ、はたからは当たり前な風景なのだ。
さて、聞いたところによると、クキがヤバイということだが、
買ったモロヘイヤには食べてくださいと言わんばかりに
クキがついている。
どういうことなのだ。どきどき。
いやいや。
バカではないのか、自分。
このクキだけは取り除いて食べないと死にますよ、ということを
どこにも書いていないのに、このクキを食べて死ぬワケないのでは?
バカではないのか、とまで思っておきながら、
次の文もまだ 「のでは?」 とか疑問形になってしまう
不甲斐ない筆者であった。
だって、だってである、クキが毒入りって、クキが・・・・
今思うと滑稽としか言いようがないが、
このようにしばらくいろいろ思ったのち、筆者はこう考えた:
「ええい面倒だ。死んだって構うものか。クキも食べてやる。」
モロヘイヤのクキを前に決死の覚悟である。
これは筆者、自分で思っていたより大分アホなのでは。
ほんで、モロヘイヤスープにした。
食べた。
いい匂いがして非常に美味であった。
さらに、しばらくしても死ななかった。
ヤハリな。
いや、ヤハリな、ではないだろ。
お抹茶にクリソツ。
お抹茶茶碗に入れてグリーンティーと偽って
客に出すというイタズラを思いついたが、
めんどくさいからやらない。
次は身体の弱いバアサンであるが、
筆者が食べて死ななくてもバアサンは死ぬかも・・・いやいや、
それだったらフクロにそう書いてるだろ。身体弱い場合は死ぬ的なことが。
翌日の朝ごはんで食べさせてみた。
バアサンは汁が大好きなので、
「よし」
と言われない先から食べ始めてしまう。
そんなことでいいのか。毒だったらどうする。
というわけで、バアサンのスープがだいぶん減ってしまってからの
写真撮影となった:
バアサンもまだ死んでいない。
