スパッ:第2章 ZAP: Part 2 | zuzu's room ズーズーズルーム

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(前々回記事からの続き)


深夜の病院に着き、おばちゃんの指示通り時間外扉のところのインターホンを押す。

開けてもらうにつき、始めから説明させるんじゃないだろうな、と構えていたら、

それどころか返事もなしにいきなりロック解除の音がしたので扉を押して中へ入ると、

一部だけシャッターの開いた受付の、そのシャッターの隙間にいる、

電話に出たおっちゃんとおぼしきおっちゃんの姿にいざなわれ、そちらの方へ。



おっちゃんは、

「さっきの電話のヒトでんな?」

とも何とも確認せず、開口一番、

「ホケンショ見してください。」

と言い、保険証と入れ違いに2枚の紙にボールペンをつけてよこす。

1枚は名前とか住所を書く紙、もう一枚は問診票だ。

「書いてくだはい。」

あ、ハイハイ、えーと、あ、

書けない・・・・!



これに気づくのにだいぶんかかってしまい、

困惑する筆者の脳味噌でやっと状況の解析と

この場合にふさわしい発言の候補の選出が始まった。


 ・(芸人風に)ムリやわッ!!

 ・(猫風に)書けにゃい。

 ・(イヤミったらしく)フ、今のアタシにどうしろと?

 ・(生真面目に)それでは口述しますので筆記の方をよろしくお願いします。えー台所にて・・・

 ・(大阪のオバチャンらしく)イヤ、オッサン冗談キッツイわあ~カンニンしてえなホンマ!


いやいや、なんかピンとこない。

筆者らしくないというか、パンチが利いてないというか、

あ、これか?:


 ・オッサン、ワレ寝ぼけとったらしまいにどつきたお・・・・


そのころ、客観的には絶句している人になっている筆者に気づいたおっちゃんが、

 「書けまへんか?」

と聞いてくれたので、やっと筆者本来の常識人らしい返答が出た。

 「今は書けません。」

このぐらいのことがスッと出てこないとは、筆者、相当アホである。



しかし、それでもおっちゃんは問診票の方はひっこめず、

 「これぐらいかけまっしゃろ。チェックぐらいできまっしゃろ。」

と有無を言わさぬ口調だ。

そりゃまあチェックぐらいできるだろうと、左手で取り組む。

しかしチェックだけで済む項目は意外に少なく、

 「異常がある部分にチェックしてください」

でチェックすると、すかさず

 「それはどのような異常ですか。」

って聞いてくるし、

 「今までに薬を飲んで具合が悪くなったことはありますか?」

で 「ある」 にチェックすると、またもや無慈悲に

 「薬の名前:________ 」 

と来る始末。



イチイチ答えなくてもいいのかもしれないが、

筆者は根がキッチリしているのと、脳裏に

 「左手で字を書かざるを得ない今の状況は絶好の右脳刺激機会では!?」

という考えが浮かんだこともあり、

手短かに左手で答えを書いてゆく。

それはいいが、次の質問には若干ムッとした。

 「異常はいつごろからですか?」

筆者はケガをしてからここまでのおよそ30分の間に

受付のおっちゃんと看護師とおぼしきおばちゃんの異口同音なる

 「いつごろ切りはりましたかア~?」

に二度も答えておる。

まだ聞くか。

しかし相手は問診票なんだから怒ったって仕方ない。

 「30分前」

と書く。

左手だから、

 「って言いましたよね2回。」

とかそういういらないことは書けなかった。



さて、字などほとんど書いたことのない左手にて記入の終わった筆者の問診票は、

全体的にダイイングメッセージを彷彿とさせる

おどろおどろしい違和感に満ちた出来上がりを呈していた。

その後、指示に従い診察室前にて待つ。



筆者しかいない割に待たされるように感じたが、

そのうちに電話で話したおばちゃん(看護師)がケガの様子を見に来た。

筆者が家から巻いてきたふきんを取ってケガを見、

 「あ~~~~~。」

と感想を述べたのち、次の驚くべき質問をした。

「ケガしてどのぐらいたってますかね?」

いやはや、これはこれは。

一体何回聞けば気が済む。



なぜそのことがそんなに重要なのだろうか。

いや、そんなに重要ならなぜイッパツで返事を覚えない?

夜中にあたふたと、パックリをかかえて

訪れているのだから、

 「今朝です。」

とかいうような事態のワケないではないか。

ならば、30分前が2時間前でもどうでもいいではないか、

と思うのは素人の浅知恵だろうか。

まあそうかもしれないが、しかしいずれにせよ1回聞けばたくさんだろ。



とはいえ、見るのもコワいパックリがむき出しになっているので

どんな質問にも素早くこたえて一刻も早く治療を開始して欲しいから

 「30分ぐらい前です。」

と素直に応じると、

おばちゃんは再び、今度はガーゼを厚く畳んだようなものを

キズの上に載せて、もうしばらく待っていろと言い残して立ち去る。



(別にふきんのままで良かったのではなかろうか。)

と考えながら待っていると、背後の階段をゆっくり降りてくる

アンニュイなスリッパ音がペッタ、ペッタ、ペッタと聞こえてきた。

医者登場だ。

 (このテンションは間違いなく、寝起き。)

と確信する筆者。

起こして悪かったなあ、と思う反面、

高い手当を払って当直させている医者を一晩中寝かせておくよりは

一人でも客が来た方が病院には喜ばしいのかもしれないとも思う。

招ぜられて診察室へ。



さっきの極厚ガーゼをはずして観察タイム。

このガーゼは筆者のキズに乗せられてわずか3分でゴミ箱へ。

ああもったいない。

こんな時でも筆者は資源と国民健康保険のムダ使いに心が痛むのだ。

さて、ここへ至るまで手首を斜めに曲げっぱなしの筆者に、

恐れていた

「手首伸ばしてみてください。」

という指示が。

コワイ・・・。

コワイが仕方ないから根性出して伸ばす。

キズはもう金輪際見ない。筆者はこういうのがダメなのだ。

手首を伸ばすとさっそく出血が再開したらしく、

医者と看護師が口々に

 「あーーーーー!」

と動揺する。

フシギだ。

筆者にとっては異常事態でも、病院で、整形外科で、

このぐらいのことが

 「あーーーーー!」

というほど珍しいということはなかろう。

それともヤッパリ、普段はキズの手当てなどせず、

腰イタのおっさんやら膝イタのおばちゃんしか診ないのだろうか。

そんなワケないと思うが、ではアイソか?

もしそうなら、なぜかちょっと報われたような気がしてうれしかったから

功を奏しているではないか。



観察と情緒的感想の発表(あーーーーー!)を終えた医師の

職業的感想は以下のようなものであった:


 1.「縫おうかなあ。」と独白、

 2.「縫いましょうかねえ?」とおばちゃんに相談、そして、

 3.「縫いましょうかねえ?」と筆者に相談。


ワシに聞くんケ?!と思ったが、筆者は常識人、

 「お任せします。」

とお答えした。

そしたら

 「じゃ、縫いましょう。」

と決心。

 「あっちに寝てください。」

の段階に移行だ。



「お任せする」と言ったのは、彼がどちらかといえば縫いたそうだったからで、

もし彼が縫いたくなさそうだったら、筆者は

 「縫ってくだせい。」

と彼のお尻を叩いていたことだろう。

こんなパックリしたものをテープなんぞで止められては

いつ何時はずれてパクパクし出すかと思うと不安で不安で生活できない。

縫ってさえもらえばコッチのもんである。



とはいえ、キズを縫ってもらうのが好きとかではない。

筆者はインフルエンザの予防注射すらコワイのだ。

麻酔とかもキモチ悪く、痛くはないがいろいろと想像の付く感覚が

伝わってくるあの感じもコワくてコワくて逃げてしまいたい。

そして穴にこもって冬眠して、春が来て目覚めたら

パックリも自然にくっついているだろう。

できればそうしたいが、そうもいかない。今もう春だし。



そして、想像通りの恐ろしい手術タイムが始まって、終わった。

3針縫った。

筆者はもうオトナだから泣いたり文句付けたりせず、

観念しておとなしく縫われていたのだが、

途中、おばちゃんに

 「気分悪いですか!?」 

と尋ねられた。

 「いえ、大丈夫です。」

と答えたが、数分後、またも

 「大丈夫ですか!?」

と聞かれた。

 「大丈夫ですよ。」

と答えたが、おばちゃんにそう聞かせてしまうものは何かと考えて

 「コワいんです。」

と説明したら

 「コワいーーーーー?!ヘヘヘヘヘーーー!!!」

と、2人に笑われてしまった。



どういうことなのだ。

他のケガ人はみな、もっと楽しそうに縫われるものなのだろうか。

筆者はもちろん眉間にしわを寄せ、目を硬くつむったり、

一生懸命天井を見たりとかしてはいたが、そのぐらい当たり前かと思っていたのだが。

しかも、シワを恐れる筆者は途中から眉間にシワが寄りっぱなしであることに気づき、

空いている方の手でシワを伸ばしたりとかして、

コワイ中にも一条の余裕を持っていたつもりなのだが。



一方もしかすると、これもアイソかもしれない。

患者の緊張を解くための、看護師と医師のお約束ルーティンなのか?

もしそうだとすると、確かにちょっと気が楽になった。

さっきから、功を奏しているぞ、あんたら。



手術終わったけど、もう一回続く。