「アリゲーター」(1980)

 

巨大化したワニが人を食いまくるホラーシリーズ第一弾をU-NEXTで観ました。初見。

 

 

監督はルイス・ティーグ。予告編はコチラ。4Kレストア版公開時の予告編はコチラ

 

フロリダ旅行中に見たワニのショーで噛まれている従業員を見て、「ワニをひっくり返せば、眠るのに。」と冷静に突っ込む少女マリサ。ワニに詳しいリケジョらしく、お土産に買ってもらったワニの赤ちゃんを家で飼い始めますが、父が勝手にトイレに捨ててしまいます。それから12年後。シカゴのスレイド製薬では、実験台の仔犬にホルモン投与して成長を促進させる薬をひそかに開発していました。仔犬調達を引き受ける業者のおっさん(シドニー・ラシック)が下水道施設に用済みの仔犬を破棄しに行くと、巨大化したワニに食いちぎられます。チギレた人間の部位が下水道施設に浮かぶ事件がまた起きたというんで、地元警察のデイヴィッド刑事(ロバート・フォスター)後輩刑事下水道調査をしていると、突然ワニに襲われて後輩刑事が餌食となって死亡。かろうじて助かったデイヴィッドが体長10メートルのワニに襲われたと病院で訴えるも、誰も信用してくれません。そのやり取りを聞いた新聞記者が単独で下水道に潜入調査をすると、ワニに襲われて死亡。

 

死の直前に新聞記者が撮影していた写真を見て、デイヴィッドの言葉をようやく信じた署長(マイケル・V・ガッツォ)は、地元在住のワニの権威の協力を経て本格捜査に乗り出します。その権威とは、大学教授となっていたマリサ(ロビン・ライカー)でした。しかし、警察総動員によるワニ捕獲作戦は失敗。自身の再選にも影響すると心配した市長は動物退治のプロであるブロック大佐(ヘンリー・シルヴァ)を招聘。一方、ワニ退治には失敗したものの、女教授を口説くことには成功したデイヴィッドは、スレイド製薬の実験がワニ巨大化の原因だと突き止めます。ところが、有力な支援者である社長(ディーン・ジャガー)に脅された市長が、真相を知ったデイヴィッドをクビにします。しばらくして、地上に隠れていたワニがブロック大佐を食い殺します。その勢いで結婚パーティー開催中の製薬会社社長宅を襲って社長市長も死亡。街全体がパニックになる中で、立ち上がったデイヴィッドが決死の作戦を決行して・・・というのが大まかなあらすじ。

 

原題は「Alligator」。タランチュラが狂暴なクモ。グリズリーが狂暴なクマ。狂暴なワニといったらアリゲーターと、相場は決まっています。「ジョーズ」の二番煎じ作品群の一つで、「ピラニア」も書いたジョン・セイルズの脚本を映画化。少しチープな特撮ながら、ツボを押さえたサスペンス作劇で小気味良く事態が悪化していく面白さがあります。マリサの父が捨てたワニの赤ちゃんが巨大化して迷惑をかけるというユニークな設定。事件に関わるキーマンを狙いすましてるかのように次々と殺していくアリゲーターには知性を感じます。残念なのは、生き別れになった飼い主マリサとの再会ができぬままに、華麗にダイナマイト爆死してしまったこと。動物を飼うなんていう人間の発想の愚かさが産んだ悲劇です。アリゲーターは、デイヴィッドとの縁を結ぶ愛のキューピッドだったのかもしれません。ミニチュアも駆使した映像には愛らしさも感じました。ワニの赤ちゃん(実物)の可愛らしさもGOOD。

 

脇役陣がクセモノ揃い。偉そうに出てきてあっさり殺される軍人役にヘンリー・シルヴァ。変質者にしか見えません最初の被害者「カッコーの巣の上で」の患者役の1人。大胆な着こなしの製薬会社社長役には「死亡遊戯」のラスボス。警察署長が「ゴッドファーザーPARTII」マイケル・V・ガッツォ。TVのインタビュアー役で「ロリータ」スー・リオンなど。薄毛の自虐ネタを連発するロバート・フォスターはスタイルがシュッとしていてカッコいいです。なお、当時売れない役者だったブライアン・クランストンが特殊効果の手伝いで参加してるらしく、のちに「ブレイキング・バッド」でロバート・フォスターと共演することになります。どちらも理系人間が招いたトラブルの物語ではあります。あと、「HARRY LIME LIVES(ハリーは生きている)」という下水道の落書きがあって、「第三の男」をオマージュしている小ネタもありました。神出鬼没なワニが予想外のスピードでというか、瞬間移動してパクパクと人を食っていくアホらしさが痛快な映画でございました。