「オッペンハイマー」(2023)

 

原爆の父を描いたアカデミー賞受賞作をグランドシネマサンシャイン池袋のIMAXレーザーGT版で観てきました。

 

 

監督はクリストファー・ノーラン。予告編はコチラ

 

原爆製造を指揮した科学者として大賞賛されながら、お前はアカ(ソ連のスパイ)だろということで、非公開の聴聞会キビシイ追及を受けて失墜していくオッペンハイマー博士(キリアン・マーフィー)。彼が原爆製造計画に関わったことによる顛末と、戦後に彼を憎んで弾劾しようとしたストローズ(ロバート・ダウニー・Jr)の公聴会を同時進行で描いていきます。ハーバード大卒業後、英国ケンブリッジ大独国ゲッティンゲン大の留学を経て、カリフォルニア大学バークレー校で理論物理学を研究しながら、教鞭を取っているオッペンハイマー。彼の研究分野において、核分裂を応用するととんでもない爆発が起きることは理論上の可能性で分かっていました。第二次大戦中、欧州で侵攻を続けるナチス・ドイツが同じ理論を基に核分裂を利用した原爆を開発しているという情報が入ってきます。


ナチスに原爆を作られてしまうなら、自分たちで先に作ってしまえということで、米国は原爆開発の極秘プロジェクト『マンハッタン計画』を起ち上げて、オッペンハイマーをチームリーダーに抜擢。ニューメキシコ州ロスアラモスに各国から優秀な科学者をかき集めて、何もない場所家族全員が住める街まで作って、原爆の研究開発製造に着手します。開発が終盤に差しかかった頃、ナチス・ドイツが降伏すると、標的をなくした米国は原爆投下先を日本に切り替えます。20億ドルの予算を費やした研究は結実して、人類史上初の核実験を成功。でもって、ヒロシマとナガサキに原爆を投下。日本が無条件降伏して第二次世界大戦は終結。原爆が完成間近になってから、ようやく自分がしでかしたことの大きさに気づいて、その後ずっと苦悩していくオッペンハイマー。まあ、自業自得なのでは・・・というのが大まかなあらすじ。

 

原題は「Oppenheimer」。核の恐怖を訴える科学者の意見は耳に入らず、多くの人命を奪ってしまう現実の恐怖よりも科学的探究心を優先させてしまった男のお話。ノリノリだったのが、一転してショボーンとなっていくオッペンハイマー。彼のドアップ以外はIMAXならではの迫力ある映像があまりなかったかも。大仰で不穏なBGMで煽ったオッペンハイマーの心象風景は核爆発で表現したりしています。化学反応ばかりをイメージしていて、被曝した人間酷さに後で気づくのがよろしくありません。原爆がもたらした現実に加えて、水爆を作りたい科学者原子力開発を推進した俗物の私怨によって憔悴していく人物を演じるキリアン・マーフィーが元来の暗いキャラにマッチ。貪欲なのは学問方面だけじゃなくて、出会ったいい女をことごとくゲットする熱心さもあり。カウントダウンでじっくり見せる核実験爆発シーン以外では、やっちまった感がピークになるスピーチのシーンが良かったです。

 

事前にキャスト情報を全く入れてなかったので、脇役陣の豪華さに超大作らしさがありました。芸達者なロバート・ダウニー・Jr芯の強さを見せるエミリー・ブラント、そこそこの映画に何でも出てくる印象があるマット・デイモン、アインシュタイン役のトム・コンティ、トルーマン大統領役のゲイリー・オールドマン、物理学の権威役のケネス・ブラナー、眼光鋭い軍人役のケイシー・アフレックなどなど。その中でも、オッペンハイマーをフッた元カノで、精神に異常をきたして自殺してしまうフローレンス・ピューに目を奪われました。フローレンス・ピューピュー何度も映るので、エロ要素の破壊力も核兵器級のインパクトあり。キリアン・マーフィーのボディ目当ての人にも必見の映画です。日本に原爆を投下したことはある程度やむを得ないとして・・・といった前提で核兵器開発の激化を危惧してる感じが、日本人としては胸クソ悪くなるところもある映画でございました。