「TENET テネット【IMAXレーザーGT字幕版】」(2020)

 

グランドシネマサンシャインで、クリストファー・ノーランの最新作を観てきました。

 

 

日本では上下が切れてないちゃんとした画角で観られる2館のうちの1館ということで、ネットが繋がりづらい木曜21時の予約合戦に果敢に挑戦。運良くプレミアムクラスをゲットできました。昨日は上映トラブルがあった回もあったようですね。

 

ストーリーが難解というよりは、設定はシンプルで起こっている状況は理解できるのですが、時が逆行する映像に頭がついていけないのと逆行した世界のルールが分からないところはあります。ただ、それが映像体験として面白い点でもあります。説明セリフが多いので、かえって字幕で観る方が理解しやすいということもあるのかも。諜報部員の男が第三次世界大戦の勃発を阻止するミッションを受けて活躍するお話で、そこに時間が逆行する技術が絡んでるということだけ予備知識として持って、まっさらな状態で映画館の大画面で観ることをオススメします。ジョン・デビッド・ワシントンの身体性、ロバート・パティンソンの役どころ、エリザベス・デビッキのチラリズムは良かったです。

 

で、ここからはネタバレを含めての観た人向けの感想です。まず、科学考証面でのリアリティはないと感じました。時間が逆行する空間で酸素マスクをするぐらいでは長時間生きてられないんじゃないでしょうか。時間を逆行するアルゴリズムなる物が電脳世界のデータとしてではなく、物質として存在していて、それを奪い合う見せ方にしてるのは映画的だと思いました。また、通常の時間で生きる人間と時間を逆行する人間とが取っ組み合いをするシーンは面白かったです。音楽も逆再生してるようなサウンドになってるところは面白かったかな。ただし、中盤のカーチェイスクライマックスの軍事作戦もそうですが、途中の戦況が優勢なのか劣勢なのかが分からないので、不可思議な状況を眺めているだけになってしまいます。冒頭のコンサート会場のテロもドンパチや音楽は派手ですが、手に汗握る緊迫感とは違います。クリストファー・ノーラン映画のアクションシーンは悪い意味でいつも重く感じます。

 

また、あまりIMAXで撮影された良さはあまり感じませんでした。ジャンボジェットの爆破シーンや海辺の絶壁に立っているベトナムの別荘の景色などは壮観でしたけど。なので、IMAXレーザーGTじゃなくてもそんなに印象の変化はないかもしれません。CGじゃなくて、実際のジャンボジェットをぶっ壊して撮影してたり、実景を大画面で見せてくれるところはクリストファー・ノーランらしくて素晴らしい点だと思います。

 

あと、登場人物の誰にも共感できない点もあります。一度は死んで世界を救うために生かされた主人公(彼に指令を与えている正義側の勢力の存在が良く分からない)、彼を助ける役割のロバート・パティンソン(と彼をサポートしている多くの人たちの出自が良く分からない)、未来で大発明をした科学者(を雇っていた勢力の存在もよく分からない)、今回の悪役のケネス・ブラナー(未来の悪者が彼だけにアルゴリズムを集めるミッションを与えている理由も分からない)、悪役の妻(彼女に主人公が固執する理由もよく分からない)など、それぞれの人物に思い入れを持てないまま、いろんな出来事がどんどん起きていきます。

 

などなど、整理がつかないまま、ストーリーが進んでいき、地球を救う側の黒幕は主人公でしたと言われても、はあ、そうですかとしか思わないんですが、豪華な手作り感のある荒唐無稽なスペクタクルを堪能できましたので、大満足ではあります。何度か観直せば、いろいろ理解できるのかも。IMDBトリビアによると、マイケル・ケインは出演シーンの脚本だけ渡されて、ストーリーは教えられずに演じていたそうです。ただ、出てくれるだけで映画もスーツ姿もビシッと引き締まります。

 

【2020.10.03追記】

ロバート・パティンソン演じるニールは、実はケネス・ブラナーと妻の間にできた子供(映画内では小学生くらい)が成人した姿で、未来から父の悪事を止めて、母や主人公を助けに来た設定なのだとする説があるようです。それだと、ストーリーも少しスッキリするかな。