「ポーカー・フェイス」(2023)

 

「刑事コロンボ」にインスパイアされた傑作クライムコメディをU-NEXTで観ました。

 

 

ショーランナーはノラ・ザッカーマンとリラ・ザッカーマン。メインの監督はライアン・ジョンソン。全10エピソード。予告編はコチラ

 

ネバダ州ラフリンのカジノで従業員をしているチャーリー・ケイル(ナターシャ・リオン)。どこにでもいそうなダミ声のやさぐれ女ですが、しゃべっている相手がウソをついてるかどうかを百発百中で当てられる超絶特技を持っていて、カジノでバカ勝ちしているのを経営者スターリング(ロン・パールマン)に見破られて以来、従業員としてこき使われています。ある日、カジノの現支配人になっているスターリングのバカ息子(エイドリアン・ブロディ)がチャーリーの親友である従業員を殺害したことを、ジュニアのウソで見破ります。殺されそうになったピンチを切り抜けてカジノから逃亡することに成功したものの、スターリング親子の右腕的存在のクリフ(ベンジャミン・ブラット)が、スターリングの指示を受けてチャーリーを追いかける日々がスタートするというのが最初のエピソード。

 

逃亡生活を続けるチャーリーが行く先々で遭遇する殺人事件を得意のウソ発見能力で暴いていくのが、9エピソードまでのストーリー。田舎のガソリンスタンドの従業員が宝くじに当たった男やドライバー(ホン・チャウ)を殺した事件。バーベキューレストラン経営者(リル・レル・ハウリー)の実弟殺人。ヘヴィメタバンド殺人事件。老人ホームでの元ヒッピーばあさんによる殺人事件。忘れられた人気女優(エレン・バーキン)が仕掛けた不倫殺人事件。カーレーサー殺人未遂事件。特殊効果アーティスト(ニック・ノルティ)殺害事件。保護観察中の男(ジョセフ・ゴードン=レヴィット)にチャーリーが殺されかける事件。といった各エピソードごとにゲストスターが登場。そして、最終エピソードでは、入院していたチャーリーを監視していたクリフがスターリングの元に連れ帰って始末されるのかと思ったら、別の仕事を依頼されて・・・というのが大まかなあらすじ。

 

原題は「Poker Face」。アテもなく逃げ回った土地で生活費目当てのバイトをしていると、なぜか現場で殺人事件が発生。油断した犯人がチャーリーについつい嘘をついてしまうことで、バレなかったかもしれない犯行が露見。時にはキケンな目に遭いながら事件を解決して、また次の町へと去っていく1話完結型のドラマシリーズ。ドラマの冒頭で殺人の様子が提示されて、その殺人にいたるまでの過程を振り返りながら、事件前後に現場にいたチャーリーが謎を紐解いていく構成。いわゆる『倒叙ミステリー』の形式で「刑事コロンボ」シリーズのパターンを踏襲しています。オープニングのタイトルクレジットの色使いにもリスペクト感が滲み出てたりします。全エピソードに出演するのは主役のナターシャ・リオンのみ。容疑者のウソを見抜いた瞬間、「bullshit!(んなアホな!)」と口走るのがチャーリーのクセ。

 

各エピソードのトリックはそれほど趣向を凝らしたモノではないですが、チャーリー演じるナターシャ・リオンの独自の個性が際立っていて、オフビートな空気感のまま、天然の厚かましさで犯人をゆるーく追い詰めていく展開がこのドラマシリーズの持ち味。ウソを100%見破れるので、犯人であることが最初から確定していて、後から犯行動機やアリバイを検証していくという点がミソ。個人的に面白かったのは、元ヒッピー仲良しコンビのいる老人ホームにやって来たかつての裏切者を始末するエピソード5。過去の殺人の証拠隠滅のために特殊効果アーティストを元パートナーが毒殺するエピソード8の2つでしょうか。1年以上の追跡を経てようやく彼女を捕獲したクリフがキーマンになって、老人ホームの事件で知り合ったFBI捜査官(サイモン・ヘルバーグ)も登場する最終エピソードも、次シーズンの可能性を残す終わり方で良かったです。