「コレクター」(1965)

 

懇切丁寧な変態による犯罪映画の古典をAmazonプライムビデオでひさびさに観ました。

 

 

監督はウィリアム・ワイラー。予告編はコチラ

 

フレディ(テレンス・スタンプ)が趣味の蝶採集をしている時に見つけた一軒家を購入。人里離れた場所にある地下室完備の古い屋敷。蝶狂いとバカにされていた銀行員時代にサッカーくじが当選して大金をゲット。仕事を辞めて家を買って悠々自適の生活をと思ったら、彼の目的は別のところにありました。以前からひそかに恋い焦がれていた美術大生のミランダ(サマンサ・エッガー)を監禁して住まわせるために必要な地下室を探していました。完全なヘンタイです。尾行していたミランダ路地裏に入ってきたところクロロホルムで失神させて屋敷に連れ込むフレディ。意識を取り戻して目覚めたミランダはビックリ。部屋には女性が暮らせるような家具洋服、美術関連グッズが一式揃っていました。隔離された地下室に長期で住まわせる気マンマンです。一方的な愛情を押しつけられて、丁寧にもてなすフレディに気味悪さを感じるミランダ。

 

必死に懇願するミランダに折れて、数週間の監禁期限を設定するフレディ。欲しい物は何でも買い与えるフレディに従順なフリをして、脱出する機会を狙うミランダ。盲腸の偽装工作は失敗。隣人訪問時もフレディに巧くごまかされて、存在を伝えられず、泣く泣く解放期限まで待つことに。そして、待望の期日が訪れます。最後の晩餐を用意したフレディはミランダに結婚を申し込みます。快諾するミランダに疑いを持ったため、監禁を続けることに方針変更。話が違うと暴れるミランダをクロロホルムで失神させるフレディ。回復したミランダを地下室に連れ戻そうとした夜、誘惑作戦にも失敗したミランダが間隙を突いてシャベルフレディを殴打これも失敗で、いよいよ絶望的なミランダ。治療で数日間の街の病院にいたフレディが帰宅すると、ミランダは地下室で高熱を出して息も絶え絶えになっていて・・・というのが大まかなあらすじ。

 

原題は「The Collector」。ジョン・ファウルズの同名小説が原作。オーソドックスな王道演出が特徴の巨匠ワイラーが手がけた異色作。その後、いろんな変質者映画体験を経た現在では驚きこそないものの、昔テレビで観ただけだったので、画質がキレイなことにビックリ。ミランダの黄色が映えていて、屋敷の陰鬱なビジュアルとの対比も際立ちます。誘拐事件を伝える記事が載る新聞が出るだけで、誘拐犯を捜査する側の描写は一切なく、ひたすら変質者と監禁された娘さんの生活を追った内容。マイカーオシャレなコミュ障オタクのフレディがたまたま手にした大金で良からぬことを実行。なんで愛してくれないんだと切に訴えますが、前提が異常者だと思われてることを考慮に入れてない主人公。ミランダが好きなピカソの絵や『ライ麦畑でつかまえて』の良さを全く理解できないとブチギレるくせに、自分の蝶のコレクション理解してくれないミランダにふて腐れるフレディ。どっしりと構えたカメラワークでキ●ガイの生態を凝視しています。

 

テレンス・スタンプが持つ負のオーラを漂わせた色気がフレディにピッタリ。可哀そうな被害者を演じるサマンサ・エッガーはアカデミー賞主演女優賞にもノミネート。IMDBトリビアによると、ジュリー・クリスティ、サラ・マイルズ、ナタリー・ウッド、チューズデイ・ウェルド等がミランダ役の候補だったようです。なお、クレジットには入ってませんが、異才テリー・サザーンが脚色に参加して、小説と違う結末を考案したそうです。最後にフレディとミランダの立場が逆転する案は却下されて、病院で世話になった看護師を次の標的にする場面で映画は終わります。そもそも、罪のないミランダが死んでしまって犯罪者が野放しのまま終わる展開自体が当時のハリウッド映画としては珍しかったのでは。ちなみに、フレディが当選したサッカーくじの配当は7万ポンドとセリフで言ってました。当時は1ポンドが約1,000円だったので、7,000万円相当。現在の貨幣価値だと、5倍くらいはあるみたいです。私のような犯罪に使わない人に幸運を恵んでください。